第4話 肉、相棒を得る

 朝。


【解析完了。

生き残るためには、村人の死体に魔法をかけ外部デバイス化することが必要です】


 うん、知ってた。

 もー、ポンコツだなあ。賢者先生はー。

 このドジっ子め。

 部屋の隅っこで遭難したロボット掃除機思い出すわ。

 かわいいやつめー!


【心外です】


 どわあああああああッ! 返事した!

 しかも女の子の声!

 特に理由もなく緊張するやろが!


【レベルが上がりました!】


 ああん?

 レベルが上がったってなによ?

 ステータスオープン!



 名前:なし

 種族:魔人

 LV:3

 HP:7000/9413 MP:10000/10070

 力:31 体力:999 知力:666 魔力:999 器用さ:690 素早さ:5 EXP 13/65535


 スキル


 魔法 LV:999 苦痛耐性 LV:666 精神耐性 LV:666 低栄養耐性 LV:90 物理耐性 LV:666 寒耐性 LV:90

 賢者 LV:2019 スキル割り振り LV:2 毒:LV1


 スキルポイント:8060


 称号:邪神の寵愛、ダークメサイア、死を乗り越えしもの、賢者の主人



 ねえね、賢者ちゃん。勝手にポイント使ったよね?

 おいちゃん怒らないから正直に言いなさい。


【使いました。えっへん!】


 このポンコツがああああああああああッ!


【ご主人様。お腹減った。ポイントください】


 まるで反省してない!

 ……あー、いいよ。使えば。

 ただし俺が生き残れるように手伝ってね。


【はーい!】


 返事のいい子は好きよ。

 はいスキルオープン。



 名前:なし

 種族:魔人

 LV:3

 HP:5000/9413 MP:10000/10070

 力:31 体力:999 知力:1024 魔力:999 器用さ:690 素早さ:5 EXP 13/65535


 スキル


 魔法 LV:999 苦痛耐性 LV:666 精神耐性 LV:666 低栄養耐性 LV:90 物理耐性 LV:666 寒耐性 LV:90

 賢者 LV:2579 スキル割り振り LV:2 毒:L V 1


 スキルポイント:7500


 称号:邪神の寵愛、ダークメサイア、死を乗り越えしもの、賢者の主人


 ふぁ? 毒?

 いつ獲得した?

 ……ネズミか。


【ポイントおいしいです】


 ……賢者ちゃん。

 食べたポイントでどうグレードアップしたのかな?

 具体的にどうぞ。


【いつもの献立ベスト600に高速アクセスできるようになりました!】


 いらねえ!!!

 料理できねえっての! こちらはかわいい赤ちゃんだぞ! 肉塊だけど!

 三歳くらいになってから使うわ!


【それと人体改造手術のガイドができるようになりました!】


 それだ!

 よっしゃー! でかした!

 いまから手術するぞ! 今日は手術デーだ!


【ご主人様。お困りのことはありますか?】


「栄養! 血から栄養補給しなくていいやつ! 倫理的に許されるやつ!」


【森羅万象検索中……賢者は光合成を提案します】


 まじか! 強化人間じゃん!

 ハードなSFアニメみたいになってきたぜ!

 テンション上がるだろが!

 どうすればいい?


【植物を取り込んで光合成します】


 ……どうしよう。

 自分の改造にときめいてる自分がいる。

 やるか? やっちゃう?


 やろう!


【では植物を取り込んでください】


 おうよ!

 俺は繭で外に出る。

 ズルズルと体を引きずる。

 今回は液体に包まれているおかげで乗り物酔いせずにすんだ。

 音波センサーもノイズがなくすっきり。

 外はすっかり吹雪がやんで日が出ていた。

 見えないけど。


【体温低下】


 やはり低温には弱いか!

 日が出ててもだめか!

 俺は家の周りに生えている草を取り込む。

 ついでに部屋を漁って出てきた干し肉もむしゃむしゃ。


【スキル:光合成を獲得しました】


 ほいほい。ステータスオープン!


 名前:なし

 種族:魔人

 LV:3

 HP:5000/9413 MP:10000/10070

 力:31 体力:999 知力:1024 魔力:999 器用さ:690 素早さ:5 EXP 50000/65535


 スキル


 魔法 LV:999 苦痛耐性 LV:666 精神耐性 LV:666 低栄養耐性 LV:90 物理耐性 LV:666 寒耐性 LV:90

 賢者 LV:2579 スキル割り振り LV:2 毒:LV1 光合成:LV1


 スキルポイント:7500


 称号:邪神の寵愛、ダークメサイア、死を乗り越えしもの、賢者の主人、キメラ



 うむ。

 賢者ちゃん、光合成にポイント振るわ。

 体の維持に必要なポイントいくつ?


【コアユニット(赤ちゃん)の維持には10。外部ユニット(繭)の維持には100必要です。

ただし晴天時のスペックです】


 太陽光発電と同じで安定しないのか。

 とりあえず100ポイント振るわ。

 はい確認。



 名前:なし

 種族:魔人

 LV:3

 HP:8000/9413 MP:10000/10070

 力:31 体力:999 知力:1024 魔力:999 器用さ:690 素早さ:5 EXP 13/65535


 スキル


 魔法 LV:999 苦痛耐性 LV:666 精神耐性 LV:666 低栄養耐性 LV:90 物理耐性 LV:666 寒耐性 LV:90

 賢者 LV:2579 スキル割り振り LV:2 毒:LV1 光合成:LV100 アミノ酸合成:LV1


 スキルポイント:7500


 称号:邪神の寵愛、ダークメサイア、死を乗り越えしもの、賢者の主人、キメラ



 なんか違うの出てきた!

 アミノ酸合成ってなによ!


【草食動物の腸内細菌を獲得しました。草を食べるとアミノ酸を合成できます】


 オーケーオーケー。

 要するに草食動物扱いか。……なんで?


【先程、うさぎの干し肉を食べました】


 なるほど……。

 つまり肉食獣を食べればビタミンが合成できるんだな?


【理論上は】


 なんだか奥歯にものが挟まった言い方だな。

 確実に獲得できるわけじゃないのか。

 まあいいや。早速体力が回復してきた。

 なんとなくわかってきたけど、栄養補給ができれば繭は自動再生するようだ。


 賢者ちゃん、筋力と機動性を上げる方法わかる?


【森羅万象検索中……現在でも可能ですが動物の肉が必要です。

動物の特性を得て体を変化させることが可能です】


 へえ……なるほど。

 でもさ、この体じゃあ狩りは難しくないかな?

 触手は移動には向いてない。


【死体でも可です】


 次は死体漁りか……。

 難易度高いな。

 まずは魔力センサーと。

 近くに生きた生物はいない。


【獣の加工品はありませんか?】


 それだ!

 俺は家に戻る。

 家に戻ると衣料品を漁る。

 ……あった!

 毛皮を見つけた。

 なんの毛かわからないけど。

 俺は毛皮を取り込む。


【トナカイの毛皮の特性を獲得しました。毛を発生させることが可能です】


 よし。もふもふ生やすぞ!

 ぶあああっと毛が生える。


【寒耐性が寒耐性・極になりました】


 もふもふは正義。

 これで俺もファンシーゆるキャラの第一歩を踏み出したわけだ。

 肉塊ランドを作るしかないな。

 ……というのは冗談として、繭の寒さへの耐性が上がるのは喜ばしい。

 本当ならトナカイは夏の間に脂肪を溜め込んで冬を越す。

 脂肪が必要なわけである。

 光合成じゃ溜め込むほどのエネルギーは作れないだろうなあ。

 つまり狩りが必要と。

 狩りの能力と熊との戦いに必要な能力はイコール。

 試しに賢者先生に聞いてみるか。


 なあ賢者先生。俺はあの熊に勝てるか?


【97%の確率で2分間生存。3%の確率で相打ちが可能です】


 一ラウンドもたない……のな。

 ためしに聞くけど3%ってどんなシミュレーション?


【現在キャスト可能な魔法がたまたま当たった場合になります。

その場合も先制攻撃は不可能。熊の攻撃でコアユニットが破損。死亡します】


 なるほど。機動性が問題か。

 熊って速いもんな。

 触手パンチもだめか……。


【外部ユニットの根本設計を見直すべきです】


 どうすればいい?


【動物を取り込み特性を獲得します。速い足、強靭な体、相手を攻撃する爪と牙。それらが必要です】


 なるほど、では狩りをするか。


【急いでください。高確率で熊が戻ってきます】


 村を離れて生き残る確率は?


【ゼロです。光合成が生み出す熱量では吹雪に耐えられません。

寒耐性・極も成人が防寒用具を身に着けた状態でなら極地での活動可能という能力です。

最大70%のカット効果というところでしょうか】


 ソーラーパネルほどは万能じゃないわけか。

 毛皮も万能じゃないみたいだ。

 そういや鹿って冬にバンバン死ぬもんね……。

 人間の肉じゃ体温低そうだし。

 触手つきの肉に毛皮生やしても無駄か。

 じゃあ狩りか。

 賢者ちゃん。現在の狩りの成功率は?


【0%です】


 ですよねー。

 遅いもん。

 これは「死ね」って意味じゃない。

 工夫しなきゃならんということである。

 はーい、触手増やすよー。


【推奨は人間型ですがよろしいのですか?】


 人間型は却下。

 人間は徹底的に武器を使うように設計されてる。

 そういうデザインだ。

 武器が作れない状態では弱すぎる。

 まずは栄養分以外の余剰肉を集めなくては。

 俺は村人の死体を漁る。

 すまぬ。でも生きるのに必要なのだ。

 さすがに過剰に人間の肉を使うのは嫌だったし吐きそうになった。

 まだ人間の肉を加工するのはなれない。

 普段のテンションでやるには心理的ストレスがきつい。

 この体で嘔吐は死につながる。

 だからいくつかを取り込んでほかは後日。

 慣れるまでが地獄だ。


 ある程度肉を取り込むと俺は細くて長い触手をいくつも生やす。

 そして家の外に出して伸ばしていく。

 細く、細く、細く。

 木のように次から次へと枝を分けていき、家の周囲の地面を網目状に触手で覆う。

 さらに遠く、遠く、遠く。

 細く長く周囲を覆う。

 そのまましばらく待つ。

 センサーは使わない。

 ただ触覚を頼りに待つ。

 自然の一部になって、植物のように待つのだ。


 小さな感触が伝わる。

 オラァッ!

 網状の肉が何者かを捕らえ、そのままズブズブと肉に飲み込む。

 鳥だ。

 鳥は暴れるが肉に飲み込まれていく。

 これで小鳥の特性を得た。

 そしてもう一丁!

 死体含めた食料をかじりに来たネズミども!

 まとめてぱくり。

 四足歩行の獣を大量にげっちゅ!


【完全に絵面がホラー映画のモンスターですね】


 賢者ちゃんおだまり!

 ……って待てや。

 今、ホラー映画って言ったな?

 なぜ賢者ちゃんが知っている?


【脳と魂の記憶をのぞきました】


 きしゃああああああああああああッ!

 貴様……エロに……エロに触っていないだろうな!?


【たぶんデータベースに取り込みました。確認します。……猫耳メイドさん?

これなんですか? なんでパンツ見せてるんですか?】


 や、やめろ!

 男の子のシークレットデータに触るな!

 個人情報にアクセスするのはやめろー!

 泣くぞ! 泣くからな!

 ふぎゃああああああああああああッ!

 と賢者ちゃんと漫才を繰り広げていると空気が変わる。

 魔力センサーに大きな反応が映る。


【危険生物接近! 四足歩行の肉食獣です。危険度高】


 村に放置された死体の匂いを嗅ぎつけてきやがったか。

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