第30話 暁ばかり 憂きものはなし

『先生、おはようございます。』

『あぁ…おはよう。』

『それにしても、もう、10月ですねぇ?』

『そうかぁ…10月になったのかぁ…あまりに忙しくて、すっかり、10月になった事を忘れていたなぁ…。』

『あぁ…そう言えば、大学の秋のスクーリングでしたねぇ?』

『そうだよぉ。いよいよ、来週から始まると思うと憂鬱でなぁ。スクーリングの前のレポートに追われているし、小説の原稿の締め切りに追われているから…しんどいって。』

『なら、やめたらスッキリしますねぇ?』

『おい、冗談でも言わないでくれ。幸せになりたいからなぁ。』

『すいません。そうですよねぇ?つい、口がすべりました。』

『いやぁ、こちらこそ、ごめんねぇ。稲村さんに愚痴を溢すとはなぁ…。すっかり、弱気になってるなぁ。』

『はい、ルイボスティーとチキンサラダとパクチー大量のサラダとハムとチーズのサンドイッチっと。』

『おぉ!テンション上がるなぁ…。ありがとう。ありがとう。』

『良かった。なら、来週、秋期のスークリングにお邪魔しますからねぇ?』

『えぇ!本当に!うれしいなぁ…。一緒に勉強出来るって最高だなぁ…。』

『えぇ…前はダメだよぉ…って言ってませんでした?』

『そんな事言ってたかなぁ?それに、大学のスークリングの件は伝えていたかなぁ?それに、通信大学で勉強している事は話をしたかなぁ?』

『えぇ!もしかして、その記憶はないんですか?確か、私の母校の藤ヶ丘大学ですよねぇ?通信過程で社会福祉を勉強しているんですよねぇ?』

『そうだけど…』

『ガリガリ君のミートソース味を食べて上手いなぁ…って、言ってたでしょ?』

『えぇ!そんな事あったかなぁ…』

『たらいに足を着けていた時にガリガリ君のソーダ味を食べていたでしょ?覚えていない?』

『そんな事したかもなぁ…あぁ…ところで、お父さんとは話をしたかい?』

『もちろんですよぉ。あの後、久しぶりに実家に帰って、お父さんとお母さんに『すれ違いの奇跡の話』をしたんですよぉ。』

『どうだった?』

『そしたら、父親が泣き出してねぇ?土下座して私と母親に謝ったですよぉ。それに、久しぶりに夜の営みをしたみたい…』

『えぇ!そんな事があったんだぁ。』

『それに、お互い浮気をしていた訳ではなくて、父親は母親を見返す為にジムに通って汗を流していたり、調理士の学校に通っていて、調理士を取って夜に居酒屋のバイトをしていたのぉ。母親は父親の収入が悪いから昼間は事務の仕事をして、夕方から朝まで警備員のバイトをして、数時間だけ家に戻って仮眠していたみたい。たまに、疲れがたまってネットカフェで寝ていたみたい。私を殴った件は私が『父親を軽蔑していたらしくて悔しかったみたい。常に、『馬鹿だからねぇ?』と捨て台詞を言ってたみたい。私も忘れていたから申し訳なくて…それから、生きる自信をなくしてお酒やギャンブルに逃げ道を探してはまってしまったみたい。母親も『馬鹿な父親は疲れる』って言っていたらしくて…母親も側にいて気付いていなかったみたい。まさか、挽回する為に調理士を取っていて居酒屋でバイトしてるとは思わなかったみたい。』

『そうだったんだぁ。それからは?』

『父親はお酒は止めて、障害者自立支援施設で生活支援として調理士として障害者に調理を教えているし、母親も事務の仕事に戻って、土日は一緒になってジョギングをしたり、仲良く手をつないでデートしてるのぉ!ここまで、変わるとは思わなかったからビックリしてますよぉ。』

『良かったねぇ?』

『本当にありがとうございました。家族と向き合って良かったですよぉ。あぁ…ところで、以前、好きな映画は聞きましたけど…他に好きな舞台とかはあるんですか?』

『えぇ…好きな映画は伝えていたかなぁ…』

『もう、その記憶もないんですか?確かに『シティ オブ エンジェル』『スタンド・バイ・ミー』などなどですよねぇ?』

『そうだよぉ。すごいなぁ!他には『劇団四季のミュージカル!最高なんだよぉ。』キャッツ・ライオンキングは見たけど何度でも行きたくなるよぉ…『オペラ座の怪人』『リトルマーメイド』『アラジン』が見たいんだぁ!』

『えぇ!本当に!私も『ライオンキング』は見た事がありますけど…私も好きですよぉ。』

『本当に!是非とも、今度一緒に行きたいなぁ…。』

『もちろんですよぉ!あぁ…ところで、来週からスークリングだけど…結構、大学は不便な場所にあるねぇ?』

『そうですねぇ…確かに不便な場所にありますねぇ。駅からバスで10分ですからねぇ?あぁ…たいていは、バスの時間があてにならないから歩いた方が早く着きますよぉ。それに、かなり遠回りで大学に着きますから、歩いても10分だから…』

『そうなんだぁ。ありがとう。』

『あぁ…それと、大学の学食のロコモコは美味しいので…良かったら一緒に食べましょうねぇ?』

『えぇ!本当に!楽しみにしてますねぇ。あぁ…、原稿が出来ているので持っていってねぇ?では、又、連絡しますねぇ。』

『はい。』


『あぁ…それにしても、家族と向き合って本当に良かったなぁ…。まさか、あれほどの効果があるとはなぁ…『すれ違いの奇跡』って魔法の言葉だなぁ…。先生には今度、『サプライズ』でもしようかなぁ ?『オペラ座の怪人』『アラジン』『リトルマーメイド』っと…楽しみ。』


『それにしても、来週からのスークリングに稲村さんが来てくれるとはテンション上がるなぁ…。それに、まさかの劇団四季が好きなのは最高だな。よし!早速、仕事!仕事するぞぉ!』

今日の百人一首は…

『壬生 忠岑〜有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし』


20××年

『先生、最近、そっけないですよねぇ?』

『えぇ…そんな事ないけどなぁ…』

『そんな事ないですよぉ…『オペラ座の怪人』を見に行ってから、すぐに帰ろう…って?』

『あぁ…そうだったねぇ?ごめんねぇ。』

『謝る必要はないけど…『何でかなぁ…どうしたのかなぁ?私が嫌いになったのかなぁ…?』って心配になりました。』

『いや、ちょっと、忙しくてねぇ…』

『先生?知ってますよぉ。この女性は誰ですか?何故、正直に言ってくれないのですか?』

『えぇ!なぜ、この女性を知っているんだい?』

『そりゃ知ってますよぉ!この女性とはSNSで仲の良い女性ですから…』

『えぇ!知っていたのかぁ。知らなかったなぁ…。』

『そりゃ、この女性は末期の癌で余命がわずかなのは知っていますよぉ。私もこの女性とは連絡を取って知っているし、先生とは連絡を取っている事や『リトルマーメイド』を見た後に東京観光をしていた事も知ってますよぉ。』

『えぇ!そうだったんだぁ。ただ、一緒にいたくなってしまって…』

『先生、優しすぎるんですよぉ。ずっと、悩んで苦労していましたねぇ?もう、本当に辛かったねぇ?辛い恋を選んで、苦労しましたねぇ…大丈夫ですよぉ。これからは一緒に乗り越えていきましょう?』

『いやぁ、もうダメなんだよぉ。』

『知ってますよぉ。彼女から素っ気なくされている事や有明の月を見ると憂鬱になって涙を流しているぐらい切なくなっている事も…えぇ…どうしてですか?余命が後、僅かでしょ?』

『好きになってしまったんだよぉ。これから、1人には出来ないんだぁ。有明の月を見ると憂鬱ではがなくて、1人には出来ないんだぁ。解ってくれ…』

『ちょっと、待って、待ってよぉ!』

『バタン…』


『暁ばかり 憂きものはなし』


『えぇ!なんだぁ。なんだぁ。こんな事が起きるのかぁ…。えぇ…いったい、どこで知り合うのかぁ。そう言えば、最近、フェイスブックとツィターを始めたばかりだけど共通する友人の中にいるって事だよなぁ。今度、逢った時に聞かなければなぁ…』







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