第27話 幼馴染の将棋
「じゃーん、見てこれ」
流季が何か持ってきた。
どうやら物置の奥から将棋盤を引っ張り出してきたらしい。
将棋か……。
俺のじいちゃんとか近所のおじさんとかがやってたイメージだな。
昔教えてもらったけれど、あんまりハマらなかった。
じいちゃん、しょんぼりしてたなぁ。
……ただ言い訳をさせてもらうと、俺はその時5歳くらいだった。
流石に5歳に本来の将棋は難しかったのだ。
最終的には将棋の駒を積み木みたいにして重ねたり、ドミノとか将棋崩しとか簡単な遊びをやってたし。
で、それ以来触ってなかった将棋がここにある。
「ルール分かる?」
「いや、覚えてないな」
「スマホで調べながらだね」
久方ぶりの将棋は、俺と流季の対局だ。
※
だいぶルールも分かってきた。
もうどちらもスマホを置いて、今は盤面だけを見つめている。
「「……」」
パチリと音がする。
それ以外の音はない。
パチリ、パチリと交互に。
少し間が空いてまたパチリ。
そしてこれが最後。
「王手」
「なんの、王手返し!」
「……ほい」
「あ、王とられた!」
ルールが分かってたのは俺だけだったらしい。
王手って言ったのに、無視して返すんじゃない。
「もっかい、もっかいやろ」
「はいはい」
その前に、もう一回ルール調べておこうな。
※
「王手!」
「……」
「王手!」
「……」
「ほらほら、なんて言うのかな?」
「……負けました」
あれ?強いな?
もう5回くらいやってるけど、俺の全敗だ。
最初の勝利はまぐれだったのか。
それとも流季の隠れた才能を開花させてしまったのか。
未だにスマホ片手に駒の動かし方見ながらやってるのに。
……スマホ?
「るぅ、ちょっとスマホ貸してくれないか?」
「やっ。乙女の検索履歴覗くなんてダメだよ」
頑なにスマホを後ろに隠す流季。
絶対やってんなぁ。
「あはははは!はひ、ひひいぃ!」
めっちゃくすぐった。
ぽろっと落ちたスマホには、探すまでもなく、そのページが映し出されている。
ルール的な駒の動かし方ではなく、戦術的な駒の動かし方が。
「おい、イカサマしてんじゃねぇか」
「えーん、ひどいよお、むぅが無理やりぃ」
流季はうつ伏せになって棒演技を繰り出した。
誤魔化す気だな。
はぁ……、才能とかじゃなくて先人の教えだったか。
「まあまあ。もうルール分かったから、スマホなしでも大丈夫だよ!」
今度こそ真っ向勝負をするようだ。
※
結局、俺たちは実力的にどっこいどこっこいだった。
初心者だからそんなもんだろうけど、流季は将棋を気に入ったらしく、本格的に勉強すると意気込んでいた。
俺も相手が務まるくらいになっておかないとな。
重いからと流季が残していった将棋盤を眺めながら、俺はスマホを手に取った。
さて。俺も少しばかり、先人に教えを乞うことにしようか。
「……あ、もしもし?じいちゃん?さっき、久しぶりに将棋してさー」
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