Ⅸ 木靴団

「ちょっと待った!」


 声の発生源の方を向くと、10人の魔法騎士団ナイツが仁王立ちしていた。

 ローブのデザインから見ると、木靴と木の葉の刺繍が施され、自然を思わせるような黄緑色を纏っているため、木靴ウッドの団員だろうか。


 そのうちの筋肉質な男団員が、前に出て宣言した。


「私は木靴ウッド副団長、エムル・アントラだ。団長を、アキサ団長を此方に渡してもらおう。

 此処が黑兎ラビットの管轄とは承知の上で、だ」


 そこで、クロ団長が、生意気に反論する。


「あのねえ、今、俺らがこうやって暴走止めてんだから、そんなペコペコやってる場合じゃねえの。お前らも手伝え」


「えッ、しかし……」


「お願いします! 俺の糸も限界があります!」


 アズが一声上げると、仕方なく決心したように、魔導書グリモワールを取り出した。


=====================================


「滑稽だな。仲間を殺さずに救う? 笑わせるなよ。これだから、悪魔デビル化は辞められないんだよな……」


 宙に人が浮いていることは、この世界では珍しくない。

 しかし、大抵は箒に乗っていて、魔導書グリモワールを開かずに静止している事例は多くない。


 彼は、その中の特別な事例である。

 何故なら、悪魔デビルでもあり、死神レイパーでもある、異界の住人なのだから。


「それにしても、あの自然魔法の使い手の小僧、なんか違和感あんだよな……」


=====================================


「……ん?なんか視線が……」


「おい! 何ぼさっとしてんだよ! リウィルス! 押さえ込んでくれ!」


「あっ、はい! 自然魔法ROOM空気圧! 鉄鋼のすべ!」


半径100m内に、空気圧を掛ける。何Paだろうか。

しかし、結構な力であることは間違いない。


そして、味方に攻撃が通らないように、鉄製の鎧を装備させる。

とは言っても、無色透明で、動くのには差し支えない。


「くっ……」


ヤバい、魔力が……。


Red jasper精神力強化! 青年、大丈夫か!?」


「ランス先輩……ありがとうございます!」


「ねえ、団長はまだ!? 抑えるのにも限界がある!」


「テメエら、まだ未熟なのか? いい加減、俺無しでも戦え」


「クロ団長…!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「明日、死ぬかもしれない。」 朝陽うさぎ @NAKAHARATYUYA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ