Ⅷ 悪魔化

「……くん、……じんくん、新人くん!!!」


「うわっ!?」


「もう~、ボーッとしちゃって!悪魔デビル化したから行くよ~!」


 悪魔デビル化。

 最近、この国で流行っているものだ。

 人間が悪魔の様な醜い、黒い翼が生え、暴走するのだ。

 それに処置をするのが魔法騎士団ナイツの仕事でもある。


 僕は【処置】という言葉は嫌いだ。


 人間を物の様に扱う。


 それが、嫌なんだ。



「今日も俺等の管理してる場所だとよ。一番に早く抑えた奴はメシ倍にしてやる!」


「おぉーー!!!!!」


 途端に歓声が上がる。

 クロ団長の御褒美目当てで、みんな素早く、自分専用の箒にまたがり、目的地へと向かう。

 僕は一足遅れて、そこへ着いた。



 悪魔デビル化とは、その名の通り、人間が悪魔に変化する出来事で、いつ、何処で、どんな人がなるかどうかなど、全てが謎の現象。

 5年ほど前から始まり、悪魔デビル化が起きるにつれて、魔法騎士団ナイツが対応しているという仕組みになっている。


 速く現場に着いた先輩達は、悪魔デビル化している人物を見て、自らの目を疑っていた。


「おい…まさか……だよな?」


「その、まさかが、アレなの」


木靴ウッドの団長だぞ!?下手したらこっちがやられちまうよ!?」


 木靴ウッド…?嘘だろ……。



 宙には、黒い翼が生えた人間悪魔がもがき苦しんでいる。

 右手に、木製の操り人形マリオネットを持って。

 その姿は、全身は黒い“妖気”のようなモノに纏われ、澄んでいた瞳の色は紅黒く染まりきっている。

 頭を掻き毟り、断末魔に似たような低い声が、度々耳に届く。


「良いんだよなァ…本気でやっちゃってよォ??」


 常に本気のシル・ガート先輩。

 既に鉄鋼魔法で武器を生成し、毒を塗ったナイフを回して待っている。


「いやいや、ここは瞬時に終わらせた方がいいでしょ」


 ガート先輩の双子の兄、シル・ガーロ先輩。

 ガーロ先輩は鉄鋼属性だけど、毒物を生成することが趣味で、オリジナルの毒を大鎌に塗っている。


「どーでも良いから、早く終わらせちゃいましょう?帰ってゴハン食べたいし~?」


 チェニ先輩が仮面マスクを軽く爪で叩く。


「そんじゃあ、お先にィ!!」


「あっ、ちょっと、ズルいって!!」


 ガート先輩とガーロ先輩が、木靴ウッドの団長:アキサ・シェルスに飛び掛かり、一発で仕留めるーーーーハズだった。


 先輩方は宙に浮かび上がり、身体の自由を奪われてしまっていた。

 そして、僕等の方へ刃を向ける。

 だけど、意識は持っていて、抗おうと試みても、その魔法は破れないらしい。


「コレどうすれば良いんだよ!?」


「そんな事自分で考えてよ!!」


「ともかく、木靴ウッドの団長を止めないと…。アズ!!」


「何だよ!?」


で団長を固定出来るか!?」


「んなこと簡単だ!!!」


 アズの糸の強度を見縊みくびるなよ…!



 アズの魔法属性は蜘蛛の糸。

 そう容易くは斬れないはずだ…。



 魔導書グリモワールを開かなくても、銀の糸を放出させる。

 それは見事に巻き付き、アキサ団長の動きを封じ、更にもう一本追加。


「よっしゃ、固定完了!」


「最初からそうすれば良かったのに…」


「じゃあ、私がやらせて貰うわ」


 レオラ先輩が前に出て、標的を定め、構えた。

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