Ⅶ 秘密

「こんな場所で、どうしたんですか?」


「こっちのほうが城の近道なの!それに、貴方の事、少し気になってね。」


 僕は一瞬、ドキッとした。しかし、気を取り直して、「僕のことで、何か?」

「貴方、人間にしては面白い魔力パシフを持っているのね。それに、自然属性なんて、珍しいじゃない!」


 ん?‟人間‟?


「もしかして、貴方は…エリアさんは人間ではないと言うのですか?」


「うん、そう。私、人造人間ホムンクルスなの。」


人造ホムン人間クルス……。」


「生まれはホワイト王国でね、国王に作ってもらったの。でも、見捨てられちゃってさ。そしたら、お兄さん、つまりクロックス・グローバーね。お兄さんが引き取ってくれたの。それはもういい人で…。」


「それで、エリアさんは僕に何を伝えたいんですか?」


「急かさないでよ。それはね、貴方を信じたから。」


「信じた?」


「それに、こんな世界を貴方なら変えられると思ったの。」


 身分の差別。偏見。

 絶えない無意味の暴力、争い。

 僕はそれらを見て、これまで生きてきた。

 僕はこれまで、まだマシな方だと思っていた。

 ホワイト王国は争いが絶えない国。常に戦争が起こりそうな状態。

 ホワイト王国の隣のラプラ王国は、ホワイト王国とまではならないけど、謎が多い。

 危険な国が多い。

 彼女は、こんな理不尽な世界を変えてほしいんだ。

 人造人間ホムンクルスとして。


「それに私、貴方に恋しちゃった」


「恋って」


 急に、彼女に唇を封じられた。

 甘い香りがして、柔らかくて、人造人間ホムンクルスにしては、人間本物とそっくりそのままだったような気がした。

 僕は、夢の中へ溶け込もうとしていった…。

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