第20話開戦


 俺達は準備を終え、これから獣人の国に飛ぼうとしていた。


「それにしても……ものすっごい目立つわね。それ」

「フェル様、とても似合っております。記録に残したい位です」


 ちょっとアデルさん? 何処の記録に残そうっての? 止めて!

 今から皆にとっては海外旅行に行く様な気持ちなのだろうか。なにやらそわそわして嬉しそうにしている。


「凄く、黒い、強そう」

「兄さん、後で触らして貰ってもいいでしょうか?」

「ルディ、お兄ちゃんのあれ金貨1万枚以上の価値があるみたいだよ?」

「……やっぱりいいです」

「兄さま……素敵」


 まあ、確かに派手だ。

 ただ黒いと言うだけではない。

 術式が所狭しと組み込んであるが為に凹凸が激しいのだ。

 だが、綺麗に伸びた溝だったり風を切る様に尖っていたり、その上でバランスも良くデザインすらちゃんと考えられている。

 術式を組み込むのですら大変なのに、恐ろしい程に芸術品だ。


「ああ。だがまあ王子の帰還だし。いいんじゃないか?

 って自分で言うのもなんだけど……皆好きだろ? こういう趣向」

「まあね。良く、似合ってるわよ」

「最初からそう言えばいいのです。まったく面倒な」

「馬鹿ね。自分で見れないんだから状況を正確に伝えてあげる事は必要よ」

「では、悪い事はお任せします。良い事は私の役割と言う事で」

「「……」」


 まあ、ある程度折り合いは付け始めた様だが、きっとこのままだろうな。

 いつか仲良くなってくれるといいんだけど……でももう俺は慣れちゃったけど。


「じゃあ、行くよ」


 と、俺は全員をテレポートさせた。

 俺達は一瞬で獣人国の王都、王宮前まで来ていた。


「いやー、便利過ぎよねこれ」

「ああ、まったくだな。もっと早く取るべきだった」

「でも、状況、聞く限りじゃ魔法の勉強をしたから少ない経験値で取れたんでしょ?

 結果オーライなんじゃない?」

「そうだな。そう考えた方が幸せになれそうだ」


 と、メルと会話しながら門番に近づいて行き。


「ここから先は王宮である! 許可の無いものは……っとアデルさんでしたか。

 失礼しました」

「ご苦労様です」


 と、空いた門をくぐろうとすれ違う門番を務める兵に労いの言葉を掛ける。

 だが、兵士はアデル以外を誰何もせずに通す訳には行かない。


「アデルさん……こちらも仕事ですので、一応説明をして頂かないと」

「はぁ、分からないのですか。すみません。お願いします」


 兵士は俺を見つめ目を見開き『ま……まさか』と一歩引いた。


「私は第七王子、フェルディナンド・アルフ・ミルフォード、帰って参りました。

 通して頂けますか?」


「はっ! お帰りお待ちしておりました。

 ご立派になられ過ぎて気が付きませんでした。申し訳ございません。

 どうぞお通り下さい」


 兵士は地に手を付き半泣きしていた。とても嬉しそうに……

 アデルは『これが正しき反応です』と訳が分からない事を言っていた。

 もしかして、こうする様に教育でもしたのだろうか……と思ってしまう。


「兄さん……かっこいいです」

「うん、私のお兄ちゃんは王子様っ」

「兄さまは……いつもカッコいい」


 三人が俺の身分に引いて無い様で俺は安心した。

 そして、しばらく歩いて、今度は城門の門番の誰何を受ける。

 と、思ったのだが……おや、門番は昔と変わっていない様だ。


「これは……フェルディナンド様、とうとうお帰りになられたのですね。

 あの日から7年、ご立派になられまして。とても嬉しく思います」


 この人は覚えている俺が五歳の時に初めて父さんと会った時に少し会話した人だ。


「ええ、この国をより良い物にと言うご期待には答えられるかわかりませんが、何としてでも守る為に鍛え上げて来ました」

「まさか、覚えておられるので?」

「はい。まさか、変わらずここにいらっしゃるとは思いませんでしたが」

「感激であります。お引止めし申し訳ありません。国王様は謁見の間においでです。

 今は外からの来客もまだございませんのでどうぞごゆるりと」


 俺は城に入り謁見の間の前まで来て待ちきれず自分から名乗る。


「フェルディナンド・アルフ・ミルフォード、只今帰還した。通してほしい」


「はっ!」と、門が開く。


 王座の前に寝そべっていた王が慌てて身を起こした。


「お、おい、何で何も言わずに開けるんだ……よ……フェルか?」

「お久しぶりです! 父さん、只今帰りました!」


 ああ、この雑な感じ、変わらないなぁ。


「おおっ! 良く帰って来た! と、言いたい所だが何で帰ってきた。

 国境で状況は聞いていないのか?」


 ……何の話だ?


「え? それは、どう言う……」

「って事は、オルセンの爺さんにも会わずに出て来たのか?」

「いえ、3カ月ほど前にそろそろ出立すると言う言葉を伝えましたが」


 何が起こっているんだ?

 まさか……とうとう始まったのか?


「そうか、じゃあ、仕方ないか」

「まさか……開戦したのですか?」

「ああ、五日前にな。

 オルセンの爺にはお前が国を出そうなら引き止めてくれって頼んでおいたんだ。

 道理で歯切れが悪かった訳だ」


「父さん、俺にとっては好都合ですよ。俺は何の為に国を出たのですか?

 平和ならある程度いいですが、戦争が起こったのを隠されては流石に怒りますよ」


 まったく、俺がこの7年あほみたいにレベリングして来たのは何の為だと思っているんだ、この人は……

 父さんから見れば、親の心子知らずって奴なんだろうが。

 まぁ偶然でも間に合ったんだ。よしとしておこう。


「分かった。そうだな。お前のレベルは大体聞いている。

 並大抵の事では無かっただろう。だが、まだまだ前線に出すには足りないんだ。

 敵は、人族はやばい。150レベルの兵士たち500名が軽く蹂躙された。

 一人も倒せずに、だ」

「まあ、300レベルクラスを前に出せばそうなるでしょうね」


 そんなのは分かっていた事だ。今更慌ててどうする。

 その為に対策を取っていた訳じゃ無いのか?


「今敵は南からここに向かって進軍中だ。

 お前は北から回ってから魔法の国を目指せ。お前の姉たちも向かっている」


 そんな事はどうでもいい。何故引き返さなきゃならない。だが……


「母さんも、ですか?」


 今、母さんの名前が出なかった……まさかとは思うが……


「カトリーナは……向かっていない。今、部隊を引き連れて応戦している頃だろう」


 ……それで俺に逃げろと?


「分かりました。では、失礼します」

「取り合えず北だ、大きな町がある、その町の魔法の国行きの馬車に乗れ。

 なんとしてでもそこまでは持たせる」


「ああ、一つ言い忘れてました。俺は母さんを助けます。

 その間この三人をお願いします。では、お前たち行くぞ」

「はい。どこまでもフェル様と共に」

「ようやくね。待っていたわ」

「うん、絶対に殺す」


 アデルはいつもの通り平然としていて、メルとアルファは殺気を放ち始めた。


「悪いな。今回は多分すごく危険だと思う。

 もしかしたら誰か死なせてしまうかも知れない。それでもいいか?」

「戦争とはそういうものです。私はその戦争に付いていきます」

「最近私、フェルの所為で欲張りなの。

 死ぬ気は無いし目的も果たすつもりよ。だけど、最悪は覚悟してる」

「私はあいつが殺せればそれでいい。

 ダメだとしてもこの中の誰かがいつかやってくれそう。だからいい」


 と、三人の決意が聞いた所で父さんが口を開く。


「気持ちは分かるが、行かせる訳には行かない。

 お前が守りたいと思う以上に俺達はお前を守りたいんだ。だから分かってくれ」


「ならば、もっと兵を鍛えておくべきでしたね。魔法の国との連携も遅すぎです。

 それに、相手のレベルが分かっているのに150レベルの者達を500人も出すなんて、不用意が過ぎませんか?

 っと話をしている場合じゃ無いな。では、失礼します」

「お前の言う通りだが、行かせる訳が無いだろう」

「テレポート」


 ……懐かしいな。この屋敷に帰ってくるのも7年振りだしな。

 だが感傷は後回し、取り合えず俺は屋敷に入り声を上げた。


「ケアリー母さん、いますか?」


 するとバタバタとものすごい勢いで走って来た。


「フェル様、ああ、ご立派になられました」

「一つ訪ねたいのですが、母さんが向かった戦場ってこの地図だとどのあたりですか?

 逃がすにしてもまず情報が無いと動き出す事も出来ませんので」


「奥様は今、おそらくラード砦に立て籠もって居らっしゃるでしょう。

 あそこなら城壁に術式が組み込まれていて早々には落ちませんから」

「そうですか。ありがとうございます。では、ちょっと行ってきます」


 と、言葉を交わしケアリーさんは深く、深く、お辞儀をした。

 その後、俺は彼女たちを屋敷で待たせた。


 テレポートでは行った事の無い場所には飛べないのだ。

 だから俺は全力で走った。ひたすら全力で。

 

 4時間で着いた。砦は見た感じで2000人近い兵士に囲まれていた。

 本当に、こんな場所まで攻め込まれてしまっているのか。立った五日で。

 と、思いながらも足を止めずに気配を消し、砦に取り巻く人族の兵士達を切り殺した。

 まだ、砦は落ちていない。だから母さんは大丈夫、大丈夫。


 俺は叫びあがりたい気持ちを必死に抑え、気配を消したまま、不意打ちで殺し続けた。

 10人程、殺った所で敵意がこちらに向きその瞬間俺は一つだけ取っていた地属性の最上級範囲魔法を放った。


「メテオインパクト」 


 俺は初めて使う魔法なので即座にステータスをだし、消費MPを確認した。

 3000程減っていた。

 なので固まっている場所を指定してあと2回程メテオインパクトを振り撒いた。

 降り注ぐまで少し間がある魔法だが威力は絶大だ。

 範囲内に居たものは生き残りは居なそうだ。

 わりと高密度で固まっていたので500名近く削れたのでは無いだろうか?


 あり得ないほどの莫大な量の経験値が入り即座に闇属性の魔法を一個取り

 レベルを40上げて上級MPポーションを飲んだ。回復量は3000、もう

 ポーションでの回復は出来ない。

 今のMP残量は9000、フルヒーリング分を考えるとこれ以上は使えない。

 

 なので俺は、一度テレポートで戻り、アデル達を連れ再度テレポートして戦場へと連れてきた。


「あんた返り血でぐちゃぐちゃじゃない。フライングしたわね」

「ああ、がっつり500人は削っておいた。だがあと1500は居る」

「一人で500ですか……」

「凄く……混乱してる……何したの?」

「最上級魔法の範囲を三連続で固まってる所にぶつけてやった」 

「はは、良くやったわフェル。ざまーないわね」

「うん、爽快!」

「それより、ここから1500どうやって攻めるおつもりですか?」


 そうだ、このまま突っ込む訳にも行かない。

 魔物とは違うのだちゃんと連携してきっちり後衛を狙ってくるだろう。


「取り合えずメル、アルファ、悪いお前たち攻撃不参加な」

「な……戦える。私、必要ない?」

「そうね。必要ないと言われてるようなものね。どうして連れて来たの?」

「早まるな。さっき取ったMP吸収魔法を使う。

 悪いがそれで最上級魔法を使わせてもらう。そこからまたテレポートで屋敷に戻す」

「確かに有効だわ。不服だけど、効果が恐ろしく高そうね」

「なら、しょうがない。あいつ以外ならそれでもいい」

「私は何を?」

「俺を守れ。魔法のあと無茶をする。俺に付いて来い」


「はいっ」っとアデルは、いつになく、いい笑顔で了承した。


 そして俺達は気が付かれない様、移動しながら有効的に魔法を使える場所まで移動した。

 ここなら先ほどと同じくらいは人数を削れるだろう。


 と、俺はまずアルファからMP吸収魔法を使った。

 どうやらこの魔法は直接触れないとダメな様だ。

 まあもとより離れた所から吸えるとは考えて居なかったが。

 効果の程は、消費200で、MPが1000吸い取った。


 続けて使い、アルファのMPが残り僅かになった所で止めると、MPが5600回復した。

 これで14000だ。


 メルにも同様に掛けると6400回復し、先ほどのレベルアップで20970まで上がっていた限界値の近く、20400まで回復していた。


 これで4回位は打てると速攻で使った。


「メテオインパクト」


 と、四回唱え、効果の程を二人に確認させる前にテレポートで飛ばした。

 アデルと共に範囲魔法外にいてなおかつ孤立した80名位の兵士たちの所に即座に突撃する為だ。

 俺達は突撃し俺は敵からのMP吸収をし、アデルは俺の背中に付き背後の敵を槍で貫いていた。


 だがこのMP吸収作戦は余りよろしくない様だ。

 相手が抵抗しようとしてると消費との差分で100程度しか増えていかない。

 相手のMPが底を突いた瞬間はMPが逆に減る。

 なので一人取れても500程度。

 だが、このまま囲まれて永遠となぶられるよりは、少しでも回復をして一発でも多く打つべきだろうか?


 と迷っていると俺はひらめいた。

 もう大分敵は減った。1000は切っている。

 だとすると砦は1時間程度なら取り合えず持つんじゃないだろうか?

 ならば吸収させてくれる人の元にテレポートで飛べばと。


 そう考えていると、何を血迷ったのか砦から兵士たちが出て来て突撃をし始めた。

 俺は吸収を止め即座に殺しまわりながらアデルと共に砦の出入り口を目指した。


「あいつら何を血迷ってんだ」

「砦には通信魔道具があります。おそらくそれでフェル様だと気が付いたのでしょう」

「ああ、そういう事か……取り合えず母さんを探すぞ」

「あそこにおられます」


 アデルの指差す方向を見つめれば、確かに兵達と共に出てきて陣を作っていた。


「よし、向かうぞ」

「はいっ」


 俺達は真っすぐ向かった。

 進行方向の敵をアデルの高速の槍で貫き、捌き切れない敵は俺が首を落とし、何とか母の前にたどり着いた。 


「どうして来ちゃったのよ。この馬鹿」

「どうして俺を残して死のうとするんだよ。この大馬鹿」


「「……」」


「話は後だ」

「そうね」


 と、俺と母さんは敵と接敵してアデルの援護により囲まれる事は無くなり、問題無く敵を圧倒出来ている、かに思われた。


 何かが高速で飛んできた。一瞬何が飛んできたのかが分からなかった。

 だが全開まで思考能力を引き上げている俺には、近くに来た時にぎりぎり気が付けた。


 それは槍だった。

 その槍は母さんの心臓を目掛け飛んできていた。

 俺はどうやっても間に合わない事に気が付きながらも、必死にその槍を叩き落そうと剣を伸ばす。だが全然届きそうにない。まだ五メートル以上離れていた。


 その槍は母さんの胸を貫き、突き抜けた。

 俺は瞬間的にフルヒーリングを使い、母さんは一命をとりとめたが。

 MPが5000持っていかれた。

 残り4000ちょっと。

 次にもう一度、同じ攻撃が来たら母さんは絶対に死んでしまう。


 なので俺は自国の兵士を見捨てた。アデルを連れ、テレポートをしたのだ。

 屋敷に一瞬で着いた。

 俺は絶望し、アデルは悔しそうに、母はいつもの硬直つまりは思考放棄状態に陥っていた。


「……負けたのね」


 と、メルが口を開く。


「ああ、俺の対応不可能な事態が起きて、俺は自国の兵士を見捨てて逃げ帰って来た。

 まだ、戦えるのにも関わらずだ」


「そう、また行くならMP吸いなさい。MPポーション飲んでおいたから」


 ああ、俺はそんな思考まで出来なくなっていたのか……そうだ、今すぐ戻ればいい。


「私も、飲んで、おいた」

「アデル、もう一度いいか?」


 と、語り掛けながらも二人のMPを吸収させてもらう。


「いけませんよフェル様。あれはダメです。あれに勝つにはまだ私達では……」


 MPを吸われたメルはふらふらしながらも話を見据える。


「確かにな。俺も何が飛んできたのか途中まで分からなかったよ。

 だからさ、ちょっと人を頼ろうと思う」

「あれに勝てる者なんて……フェル様クラスの者に心当たりでもあるんですか?」

「無いよ。だが俺がMP全快だったらどうだ?」

「ですが、それはどうにも……」

「ちょっと貰いに行ってくるから」

「この国の者にそれほどMPを持った者など……」


 と、アデルの言葉を待たずに俺はテレポートをした。

 まずは最初の町のギルドマスターの所に行った。


「すいませんエイブラムさん、ピンチなのでMPを吸わせてくれませんか?」

「これは、テレポートですか? ええ、もちろん構いませんよ」

「ありがとうございます。事が終わったらお礼に来ますね」

「必要ありませんよ。これくらいで良いのならいくらでも」


 エイブラムさんに微笑みかけギルドの広間に降りて人を探す。

 討伐隊で一緒に居た者がいれば、と、思い見渡した。

 三人もいた様だ。運がいいと声を掛ける。


「お久しぶりです。

 また軍勢と戦わなくてはいけない状態に追い込まれてまして、MP吸わせてもらえませんか?」


 あの時のリーダー格の二人と何故かボッチ青年。


「お、隊長じゃねーか。

 なんだよその恰好、魔物の血でドロドロじゃねーか。

 まあ、俺はMPなんて使わねーからいいぜ。持ってきな」


 人の血だが……言わぬが花だろう。


「あ~私は、今度酒をご馳走してくれるならいいよ?」

「えっと、僕も構いませんよ、お世話になりましたし」


『ありがとうございます』と、告げ俺は吸わせてもらった。


 そこから飛んだのは魔法国の謁見の間だ。客人はいない様だ。


「テレポートかの。

 そんな恰好で直接飛んでくるとは、緊急の様じゃな。何があった?」


「ええと、2000の人族の軍勢と戦って居まして、やっと800まで減らしたところでMP尽きちゃったんですよ。

 吸わせてもらえませんか? 出来ればここに居るレベル高い人全員」


「ふはははは、なるほどの。あい分かった。構わぬぞ。

 そこの5人から貰っていけ。割と高レベルじゃからの」

「ありがとうございます、後で父に頭を下げさせますので」


 と、伝えると『絶対じゃぞ! 忘れるなよ?』と念を押された。

 近衛兵からMPを貰い全快した俺はアデルを迎えに行かずにそのまま戦場に飛んだ。


 MPを分けて貰っている最中に考えたのだ。アデルはあの攻撃に対応出来ない。

 と言う事は、俺を守ろうとするアデルは高確率で死んでしまうだろうと。

 だったら後で怒られた方がマシだ。それがどこまで本気の怒りだったとしても。


 戦場に着いた俺は唖然とした、残っている兵士はもう80名程しかいなかった。

 兵士たちは砦の門を少しだけ開けた状態で固定してた。

 魔法を防ぎ数を入れない為だろう、だが流石に力で優っていると言ってもそれは厳しいだろう。


 だが俺には好都合だった。見方は防壁に守られていて敵兵は入り口に固まって

 居たのだ。おそらくもうメテオインパクトは打てないと踏んでいるのだろう。


 俺は少しでも効果範囲を広げる為に前回の効果範囲をめちゃくちゃになっている

 大地を見て計り、少しでも多く当たる様に座標指定して4発同時に放った。

 大地に隕石が大量に降り注いだ。


 ステータス画面を出して、俺は火魔法の最上級単体魔法を速攻で取り

 残りをレベルにすべてつぎ込んだ。来る前まで184だったのがもう260レベル

 まで上がっている。だが、一つ解せない事が起こった。


 効果範囲に入ってる者二人が生きていた。敵の兵士はもう200人くらいしか残っていないのにも関わらず悪寒がした。

 そんな悪寒を感じて立ち止まればその二人が高速で駆け寄ってきた。


「さっきからあれ打ってるのお前か? 随分と若いな」と大柄なミスリルであろうフルプレートメイルを付けている男が聞いて来た。

「……俺もこれで終わりか。せめて最後にレベルだけでも教えてくれないか?」


 もう、ここまで詰め寄られたら近接対応するしかない。

 だから俺は身構えながら情報をくれと言ってみた。


「あはは、往生際がいいねぇ。だけど私そういうの大っ嫌い」と小柄な兵士だと思っていたがどうやら女性らしい兵が言葉を投げかける。


 ああ、俺もあまり好きじゃ無いな。

 だが初対面の者をすぐ信じるなって親切な人に教わらなかったか?

 ああ、蹴落とし合っているんだったな国中で。


「こいつの装備全部オリハルコンじゃねーか。

 おい、こいつ俺に譲れ。経験はお前に譲ってやるからよ」

「はっ? 何言ってんの? まずあんたを殺そうか? ドゥーガル」

「面白い事を言うな。じゃあそれにしようぜ、コートニー」


 お、もしかしてガチでこいつらやりあうのかな?

 瀕死になったら横取りしてみようか。経験値旨そうだ。

 と、俺はこいつらと大して変わらない思考をしてしまいながら、見物人を決め込んだ。


 待っていると、睨みあった二人は本気の殺し合いを始めた。

 めちゃくちゃ早い。これはさっきまでの俺じゃマジで死んでた。

 だけど、マジでやばい。こいつら馬鹿すぎる。俺を侮っているのは分かるが、敵の兵士と向かい合ってるんだぞ?

 手の内を敵に晒すだけでなく、味方と殺し合うなんて……


「さてと、どうする? コートニーちゃんよぉ」


 どうやら決着がついたようだ。コートニーは片腕を落とされ瀕死

 ドゥーガルは軽傷だ、コートニーを踏みつけて煽っている。


「まって、分かったから経験も鎧も譲るから」

「そんなに殊勝に言われちゃしょうがねーなぁ、じゃあ楽に殺してやるよ」


 と、彼がとどめを刺そうとした瞬間に俺はぼそぼそっとつぶやいた。


「ホワイトフレア」


 先ほど取った火の最上級単体魔法だ。無詠唱で放てるとは思っていまい。

 ドゥーガルと呼ばれていた彼は一瞬で溶けた。溶けた彼を食らった彼女は醜い悲鳴を上げてのた打ち回る。


 殺意の籠もった目で睨む彼女に「ああ、俺もお前らが大っ嫌いだよ」と告げ首を落とした。


 それから俺はテレポートでアデルを連れて来て、俺はサポートに回りアデルに大半をやらせた。

 アデルはこれからも戦場に無理にでも来ようとするだろう。

 なのでやばいのが居なくなった今、彼女には経験値を稼がせたかったのだ。


 アデルは何か言いたそうだったが従ってくれた。


 そして取り合えずの第一陣は殲滅する事に成功した。 

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