第13話出会い、そして出立


「おや、また来てくださったのですね。っておいメルディ何してやがる。

 失礼だろうが。もう飯食わせてやんねーぞ」


「ふっふっふ、ジャス爺、見たまえ。

 このフェル君の困ったなぁ……でも嬉しいなぁ……という顔を。

 ジャス爺の前でも隠せないほどのこのデレデレ具合を」


 メルは俺の顔に手を向け『どうぞ見て下さい』と言わんばかりだ。

 俺はとても冷たい顔をしていた様だ、ジャスタスさんは無言でメルを小突き引き離した。


「すいません。

 こいつはまだ来たばかりで色々と聞き分けが無い所がございまして……」

「いえ、元々同行を許したのは私ですし。って、メルは奴隷なのですか?」

「いえ、そう言う訳でもないんですが、こいつとは少し縁がありましてね。

 最初は仕方なく飯を食わせてやってたのですが、今では自分で稼いで支援までして貰ってる始末でして。いやはや情けない限りです」

「ってジャス爺、何でフェル君は大人扱いで、私は子供扱いなのよ」

「たりめーだ、礼節をわきまえてねーお前を大人扱いするつもりはねー。

 それにこの方はな、良識もしっかり持ち合わせてちゃんと気を使ってくださるんだ。

 二度も救ってくれた英雄なのにな」

「いえ、そんなに持ち上げられましても。私は臆病なだけですよ」

「フェル君、臆病な人は二千の魔物に突撃したり出来ないよ。

 私とそんなにレベルも変わらないのに……どうして?」

「メルは気が付かなかったのか?

 突撃前に俺は気を付けても声がふるえてしまう程、恐怖に震えていた事に」

「すみません。私等が不甲斐ないばかりに……

 今度エイブラムの奴を小突いておきましょう。

 こんな危機にあいつが出来た事は貴方に声を掛けるだけだなんてギルドマスターとして自覚が足りません」

「ジャス爺、それがあったから私、無事に帰ってこれたんだけど」

「分かっておるが、未曾有の危機に外に助けを乞うだけでは足りないと言っているんだ。

 なにより気に入らんのは私に相談をしなかった事だ」

「結局そこなんじゃん」

「ええと、私としましてはもう5年も居るのですからそろそろ町の人間として見てくれてもいいんじゃないかな、と思うのですが……

 と、言っても……今日はお別れの挨拶に来たのですけど……」

「そだ。そんな事言ってたねぇ」


「ああ、これは失礼を致しました。ですがお別れとは……

 やはりご負担を掛け過ぎてしまいましたか?」

「ジャス爺、負担掛け過ぎってフェル君に何したのさ」

「いえいえ、今回の件で王都から報酬でもでるのでしょうか。

 呼び出しをされまして、旅立たなくてはいけないんですよ」

「それに私もついて行くんだ」

「おお、もしや叙勲なさるのですか? だとするならば私もとても嬉しく思います」

「…………ねーえっ」

「行ってみない事にはどうなるかはわかりませんが。

 悪い話では無い様なので気楽に行ってこようと思っています」

「無視すんなよゴラァ」

「いだ、痛たたた、ちょ、おまっ、何で噛むの? それとなんで俺?

 主にシカトしてたのジャスタスさんだよね?」

「だって美味しくなさそうだし」


 と、メルが言うとジャスタスさんは『あちゃー』と、手を額に当てて空を仰いだ。


「それでジャスタスさん、奴隷を買うか否かと言う話なのですが」

「はい、歳が近く、顔立ちの良い者に色々と教え込んでありますが、如何なさいますか?」

「買います」


 あ、反射的に答えてしまった。

 だが歳が近く昔から一緒に居る幼馴染の女の子と言う物に憧れていたのだ。

 これで毎朝起こしに来る幼馴染というテンプレで鉄板な……

 いや使い古され過ぎたが、俺はやりたい、是非に……

 もう十歳だがぎりぎり間に合うはずだ。


「何人程、ご用立て致しましょうか?」


 ん~ハーレム物なら5人か? と考えているとメルが悲しそうに口を開く。


「そっか、買うんだ? お金で、人を……」


 と、言われた瞬間、俺は自己嫌悪、罪悪感、焦燥感、そんな感情に襲われた。

 この世界では割と珍しい物言いだが、前世では当たり前の感覚だっただけにものすごく悪い事をしていると言う感情に襲われた。

 そこでジャスタスさんが口を開く。


「じゃあメルディ、お前はあいつらに奴隷をやるくらいなら死ねって言うのか?

 このまま売れなければ、放り出すか、他の商人に流してやる位しかねーんだ。

 この方に買って頂ければ、幸せになる可能性を高く秘めているっていうのに」

「ううん。そうじゃないの。否定も肯定もしない。ただ悲しかっただけ」


 と、何故か言葉が足りないのに、とても良く、理解が出来てしまう。

 言葉により、俺はどうしていいのか分からなくなり、言葉に詰まってしまう。


「ごめんフェル君、変な事言っちゃって。買ってあげて。

 私もあの子たちが何ににも成れずにただ死ぬ所は見たくない」

「無茶言うな、奴隷商人の俺でもそんな事言われたら戸惑うぞ。

 メルディが困らせてしまって申し訳ありません。

 この話はまた落ち着いてからに致しましょう」

「ああ、いえ、買います。

 彼女が言いたい事は理解した上でやっぱり俺は買うべきだと思いました。

 それと、言っておきます。皆さんが言ってくれる様な、善良な人間では無いと。

 俺は俺の目的の為に奴隷を買います。

 女の子二人と、男の子一人、計三人ほど、お願いしてもいいでしょうか?」


 これで男女の数がそろう、と言うか女の子だけと言うのもそれはそれで大変じゃないかな、と言う気がするんだ。

 決してアデルへの言い訳の為では無い、決して。


「分かりました。お値段の方も出来るだけお安くさせて頂きます」

「いいえ、これ以上は今は買えませんので、これを機に取り合えず私から稼いでもらって当分は放り出す様な事にはならない様にしてください。

 そんな事になっては私が連れて行く子が悲しむでしょうから」

「何で……何で、奴隷に気を遣うの? 何一つ特に何てならない事じゃない」

「俺はさ、奴隷だろうが何だろうが、身近にいる人が悲しそうな顔をしていると嫌な気分になるんだよ。

 俺が嫌な気分になりたくないからそのための対応をしようとしただけだ。

 気を使った訳じゃ無い」

「そう、私を連れて行ってくれるって言ったら悲しそうな顔じゃ無くなるわよ」


 と、メルは晴れ晴れとしたような顔に変わり連れて行けと強請る。


「いや、お前もう悲しそうな顔してないし、置いて行けば顔見なくて済むし」


 俺はそんな彼女をことごとく突き放し、付いて来るなと言外に告げる。

 だが、彼女はあきらめる気は無い様だ、どうすればいいのだろうか?

 ここはセクハラでもして嫌われるか。


「お前、もし、ついて来るって言うなら無理やりにでも抱かれる事を覚悟しろよ。

 ふっ、まあその時は優しくしてやるさ」

「えー別にいいよ? 優しくしてくれるんでしょ。じゃあ決まりね」

「…………」

「これは災難ですな。

 ですがメルディはそこまで悪い奴では無いので、良くしてやって下さい」


 ジャスタスさんは苦笑いしつつ嬉しそうに彼女の事を頼んでくる。


「まてまてまてまて? メル? なんでそこで了承出来ちゃうの?」

「え、何でそんな事聞くの? もう良いって言ったからね」


 いや、正直に申しますと別に付いて来てもいいんです。

 そこじゃないんです。分かりませんか? 分かってませんね。もういいです。


「じゃあお前3人の子供の教育係な。任せたぞ」


 こいつは高レベルだし、ここの子と面識もありそうだし。

 色々と都合がいい面が多いのだ。あと、やらせてくれるそうだし。

 そう、こいつはあれだ、都合のいい女……最低だな。


 まあそこら辺は置いておこうあの称号とおさらば出来るかも知れないし、相手が嫌がってなければ俺は別に気にしないし……

 いや、ダメだな。

 44年も我慢してゴールが見えてきたんだ。

 最初くらいお互い望んだ関係でそういうことしたい。


「え? 買って早々人任せ? 私、そんな経験無いよ?」

「ふっ誰でも初めてはある物さ、恥じる事は無い」


 そう、だから俺は童貞を恥じない。恥じて何てやらないんだからっ!

 俺も強く成ったものだな、とうとうここまで来たか、これをネタに出来る程に。


「いや、別に良いんだけどさ。んでいつ行くの?」


 こいつホント動じないな、逞しすぎるだろ。

 ちょっとくらい弱い方が女はもてるんだぞ?


「何もなければ、今日中には出ようかと思っているけど」

「そ、そうなのですか。

 では、隷属魔法の登録を致しますのでこちらにいらして頂けますか?」


 と、ジャスタスさんが言って来た。

 やはり魔法で縛る物なのかと知ってはいた物の少し、また気後れをしてしまった。


 と、思いながらもついて行くと、俺の奴隷になるであろう子たちを紹介される。


「ええと、取り合えずおすすめの子を紹介させて頂きます。

 私のお勧めはこちらの双子の姉妹、歳は10歳です。

 要望通り歳が近く、教育の方も一通り終わっております。

 次に紹介させてもらいますのが、同じく10歳の男子。

 こちらも一般的に奴隷に必要とされる教育は済んでおります」

「では、この子達をお願いします、おいくらでしょうか?」

「よろしいのですか?見て選ぶ事も出来ますが?」


 文句なしである。少し不器用そうだが真面目そうな男の子。

 整った顔立ちでよく似ている可愛い女の子。

 取り合えず中身が分からない以上何もいう事は無しである。

 

「無いですね。お願いします。それと名前は何と言うのですか?」

「奴隷の名前は主人が付ける事が多いので、ありません。

 不便ですので適当な愛称みたいなものはありますが、出来ればつけてやって下さい」

「そうですか。分かりました」

「金額の方ですが、先ほどのお言葉を加味させて頂きまして、合計で金貨25枚となります。よろしいでしょうか?」


 やすっ。多分女の子が10枚で男の子が5枚なんだろうな……

「はい、問題ありません」と金貨25枚を渡す。


「では、こちらの魔法陣に魔力を送り発動させて頂き、奴隷紋を付ける場所を決めたらこの子達に触れて下さい。奴隷紋は目立たない場所をお勧めします」


 そして言われた通りにして奴隷紋の場所は足の裏にした。


「これの解除をする方法も教えて置いて欲しいのですが」

「それは簡単です。

 奴隷紋に触れて隷属を解こうと思いながら魔力を抜き取ればいいのです。

 それと主人が死んだ時も隷属は自然と解けます」

「そうですか」

「初めてですので、注意事項がございます。

 隷属を解く際にはどれだけ信頼関係にあっても拘束してから行ってください。

 解除時には隷属中に募った感情が押し寄せ制御不能になりますから。

 大半の者は復讐者となり元主人を付け狙うようになります。

 これだけは忘れないで下さい」

「では、一生隷属するしか無いと言う事ですか?」

「それをお勧めします」

「そうですか……分かりました」


 この隷属魔法と言う物は相手の心を縛る物らしい。

 自分の名前と相手の名前、そして命令と言う言葉を付け加える事で発動すると聞いた。

 他にも色々説明をして貰い話が終わり、ジャスタスさんと別れた俺は、メルと奴隷たちを連れて、色々買い物をした後、王都に送ってくれる馬車を探しにいった。

 馬車はすぐに見つかり貸し切りで契約をして、俺達を乗せた馬車は出発した。


「よし、まずは名前を決めよう」と俺はそこで初めて真面に隷属した子供たちに話しかける。

 まあ今は同い年だが子供たちは一応頷くだけで恐怖で縮こまっている。

「まあ、怖いよな。

 よし、まず第一にこれは命令じゃないが、こっちおいで。

 俺の隣に座るんだ。まずはお話からしよう」


 彼等は恐る恐るではあるけれど隣に座り無言でこっちを見上げる。


「よしよし、偉いぞ。んじゃ、まずはお前たちの好きな物を教えてくれ。

 何でもいいぞ。食べ物や遊び、寝る事なんてのもありだ。

 お前たちはどんな事が好きなんだ?」

「……僕は体を動かすのが好きです」

「そうか、んじゃ無理しない程度に色々やろうな」

「えっと、私、お布団が好きです」

「ああ、俺も好きだ。住む場所が決まったら

 全員に買ってやるからな。楽しみにしてろよ」

「私……ご飯食べるのが好きです」

「そうか、俺達はこれから家族だ。

 飯もある程度良い物を食べさせてやれるからな。期待していいぞ」

「私、エッチな事が好きです」


 と、メルが割り込んで来た。


「お前もう帰れよ。何しに来たんだよ。台無しだよ」

「なんでよーフェル君に合わせて上げたんでしょー」

「いやー! やめてー! メルのけーわいー」

「フェル君て凄そうに見せて変人だよね。何言ってるか分かんない」


 お前に言われたく無いわっ!

 こいつめどうしてくれよう。

 いっそ好きだと言うエッチな事をしてやろうか……

 あれっ? なんか冷静になって来た。

 どうやら俺はこいつとはしたく無いらしい。


「メル、今は俺の家族になるこの子達の名前を決めるのと、仲良くなる為にお互いの事を知ろうとしているんだ。

 部外者のメルはちょっと黙っててくれないか?」

「な……なんで私だけいつも……いづも……仲間ハズレにするのよぉ……ぐすっ……ばかぁ……」


 あれ、泣いちゃった。これはどっちだ? ポーズか? ガチか?

 まあどっちでも返す言葉は変わらないか。


「メルは俺の奴隷じゃ無いし、家族とは言えないからな。

 だけど、俺はもうメルは仲間だと思い始めているよ。

 それじゃダメか?」

「ううん。いい、だけど私も話にちゃんといれてよ。ぐすっ」

「ああ……

 今、お前が仲間外れにされたのは空気を読まずに下ネタぶち込んで来たからだからな?

 そこは理解してくれよ?」

「わかったわよぉ。だから私にもちゃんと聞いて」

「ああ、メルが好きな事は何なんだ?」

「えっと、ちょっと違うかもだけど、心を許せる人が欲しい」

「その第一候補が俺な訳か」

「うん。いや?」

「んなわけあるか。メルが俺にとって嫌な奴じゃない限り、嬉しいに決まってる」

「じゃあ、私良い奴になる」

「おう。それで続きだが。お前たちの名前は俺が付けてもいいか?

 愛称をそのまま読んで欲しいとかあれば言ってくれ」


 少年少女たちは、つけて欲しいと口をそろえて言った。

 なので俺は少し考えたあと、順に名前を付けて行った。


「じゃあ君がシャノン、そして君がフィービー、最後に男の子の君はルディだ。

 今日からそれがお前たちの名前だ。忘れない様にしろよ」


「「「はいっ」」」


 と、三人は声をそろえて返事をした。そして俺は次に彼らのステータスを確認した。

 レベルは12~16、ルディは体を動かすのが好きだからだろうか? 一番高かった。


 だがあまりに低すぎるレベルだったので、このままではいけないと思い低レベル、一桁の魔物が居る場所は無いかと御者に聞くと流石に一桁は無いと言われた。

 なのでこの近くで一番低い所で止めて貰い、強制的にレベル上げをする事にした。


 この一帯の平均レベルは50だ。

 

 買い物の時に買って置いた武器を彼らに渡し俺は索敵に出た。

 だがこのまま連れて行っても戦える訳がないので俺はアイアンクローで敵の視界と動きを封じ二匹の敵を連れて行った。


「よし、まずはルディ、男の子だしお前からだ。このまま抑えてるから

 魔物の首に剣を突き刺せ。出来るか?」


「はい、出来ます」とルディは剣を両手で持ち近くに来てから『やぁっ』っと掛け声をかけ見事魔物の首を突き刺した。

 絶命はしたようだが少ししか刺さらなかった。


「はい、もう一度。こっちも同じように刺せ」


「はい、やぁっ」と先ほどと同じように刺し魔物を倒す。


 俺はこの作業を何度も繰り返し、全員30レベルまで上げさせた。

 御者をあまり待たせるのも悪いので馬の休憩程度の時間で済ませた。

 王都に着くまで繰り返し行い48レベルまで上がっていた。


 そして俺達は五日後の朝方に王都に到着し一先ず宿を取り、そこからその足で

 ギルドまで向かった。周辺の魔物のレベル帯を調べる為と彼等の経験の為に。

 そしてギルドに入ると今まで起こらなかったテンプレが遅れて発動した。


「おいおい、いくらガキが徒党を組んだってここにはお前らのこなせる仕事なんてねーぞ。お前らは冒険者を舐めてるんだろうから俺が教育してやらねーとな。ちっと面かせや」

「はぁ、めんどくさっ。フェル~、レベル見せちゃっていいかな?」

「まあいいけど、穏便に行けよ。俺がここに来た理由分ってるだろ?」

「なっ!? 何でこんなガキがこんなに高レベルなんだよ。っち勘弁してやらっ」


 ほう、随分と素直に引き下がるもんだ。

 俺の知り合いの○○さんがだな、とか始まるかと思ったのに。

 楽でいいんだけど、拍子抜けだな。


 そしてカウンターの端にある大量に数字が書き込んである地図を、購入した。

 これは生息している魔物の平均レベルが書いてある地図だ。

 大銀貨三枚と割と高かった。お手製なのだろう。


 次に俺はルディ達に、ギルド登録を一人でやらせてみた。

 言っていた通り教育は済んでいた様ですんなりと登録は終わり、俺達は適当に飯処に入り飯を済ませ宿へと戻っていった。 

 そして、宿に着いた俺は今後の事をどうして行こうかと思ったままに声を出してみた。


「んーこれからどうすっかなぁ」

「決めてないの? 私と狩りにでも行く?」

「ああ、それいいなぁ。だけどもう少しお預けかな。

 あの子等が取り合えずお金を渡して置けば生活が出来るくらいにはしないと」


 ちょっとメルのレベルが足りないけど、魔法で援護してもらう戦いも経験したい。

 まあ、初めて一人になったのだからあほみたいに永遠と狩るのもいいんだけど。


「そうね。じゃあ取り合えず……王都を散策でもして色々回ってみる?」

「だな。

 あ~でも面倒な事は先に済ませたいからメル、今日この子達任せていいか?

 俺は王宮に出向いて、取り合えず着いたと報告してくる」

「あ~そっか。その為に来たんだもんね。いいわよ、任せて」


 んじゃ、とメル達に金貨3枚ずつ渡し、好きに使って来いと告げる。


「一日だけなのに多過ぎない? そんな使い方してたらもたないわよ」

「最初だからな主人として見栄を張ってみたんだ。教育上よろしくないかな?」


 言われてみると、金遣いが荒くなってしまうかも知れない。

 そうなると自立した生活なんて出来ないだろう。

 レベル帯が完全に違う以上はある程度三人には自立した行動をとって貰わなければならないのだが。


「まあ、全部使う必要は無いし、ちょっとくらいは贅沢を知るのもいいかな。

 自分で稼いで贅沢をしたいって頑張る子も出てくるかもだし」


 と、部屋の中で縮こまっている三人に目を向けると『どうしようこれ、金貨でいいんだよね。落としたらどうしよう……』と若干手が震えていた。


 そんな三人に近づき、頭をなでながら緊張をほぐそうと俺は言う


「大丈夫だ。これはお前たちの物で好きに使っていいんだ。

 別に落としたからって怒ったりしないから今日は楽しんで来い」


 皆、『はい、ありがとうございます』と、言いながらも反応は様々だ。

 ルディはやはり怖いらしいが、シャノンは目を輝かせた。

 フィービーはどうしていいのか分からないのだろう。シャノンとルディを交互に見てる。

 そんな彼等を微笑ましく思いながら『んじゃ、ちょっと行ってくる』と、宿を後にした。


 そして俺は王宮の門の前までたどり着く。

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