第7話危険の再認識

 朝、目覚めた俺はまだ寝ているアデルの尻尾をいじり始めた。


「まだ寝ている女の子を弄り回すこの状況。やばいドキドキする。

 あれ、櫛が通らねえ」


 そして自作の櫛を取り出し毛並みを整えようとしたが断念させられてしまった。


 うーむ、と言いながらも何も考えず尻尾に顔をうずめてみた。 


「臭うな、べとべとしてるし……あれだ。

 例えるならば懐いた野生の犬を触ってみたらって感じ?」


 毛に埋めていた顔を上げるとアデルが泣いていた……無表情で。

 ヤバイ、口に出すんじゃ無かった。この事態どう切り抜けようか……

 アデルは従順すぎる感じだし、誤っても余計に気にする結果になりそうだな。

 取り合えず逆切れして事態の収拾を狙ってみよう。

 埋め合わせは後回しにする方向で。かなり、こんな傲慢でいいのだろうかとも思うが他に思いつかないのでしょうがないという事にしよう。


「おい、アデルっ! この尻尾の状態はどういう事だ!

 女の子はな、まずお花の香になる所から始めるもんなんだぞ!?」


 お。なんか名言っぽいな。……ってそんな訳あるかっ!

 何を口走っている俺、何故かアデル相手だとおかしくなるな

 自重できないというか何と言うか……


「ぐすっ……ごめんなさい。知りませんでした」


 それはそうだろう。俺も知らなかった。と言うか適当言っただけだし。

 だが、それも仕方ないのだ。アデルにはいい匂いに成って貰いたい。

 なのでビルさんに馬車を止めて貰い、火を起こし、お湯を作り、母さん愛用の石鹸を取り出した。


 アデルはすんすんと鼻を鳴らしながらも、泣き止み始めていた。

 そんな彼女に俺は優しく声を掛けた。


「アデルこっちに来て横になって、僕にお尻を突き出して」


 あれ、今俺さらっと凄い事言った気がする。違うよ? 洗うだけだよ『尻尾』を。

 と、頭の中で動揺していると猫が伸びをしている様な体制でアデルは俺にお尻を……もとい、尻尾を差し出してきた。


「僕が良いって言うまで、動いちゃダメだからね」

「は……はい」


 用意していたお湯を適温に調整してアデルの尻尾にお湯を掛け、石鹸を泡立て、優しく揉み洗いをした。


「ひゃん!? フェ、フェル様っ? じ……自分でやります。

 やりますからぁ! ひゃっ、ダメですっ! そこはっ!!」

「今日は僕に任せてよ。僕の見立てじゃ絶対アデルの尻尾は良い物だと思うんだ。

 それを僕自身の手で証明したい」 


 絶対に止めないと意思表示をした頃には洗う作業は終わって居てタオルで水分をふき取っていた。


「あのフェル様。

 今更私がこんな事をしてもしょうがないと思うのですが……

 私こんな身なりですし……」

「それを言うのは事が終わってからにしろ。俺が気持ちよくしてやる!

 お前を、そして俺を……はぁい、ここに座ってぇ~」


 と馬車の出入り口に台を置き、アデルを椅子に座らせビルに馬車を発進させる。


「次の作業までにはまだ時間がある。

 待っている間暇だし、これから通る狩場のどこに行くかを決めようか」

「はい、分かりました。取り乱してしまって申し訳ございません」


 あれ、この状況でなお謝るんだ……ちょっとくらいむくれたりとかしてくれても良いんだよ?

 いや、それはアデルの為というより俺の願望になるか……まあいいや。


「次に通る適正狩場はどこかな?」

「ええと、ですね40レベル以下となりますと……ここ辺りでしょうか」


 地図上では森か平原かは分からないが、割と近さそうな場所にある様だ。

 だが何故40以下なのだろうか?

 前回と同様の計算なら60以下まではイケると思うんだけどと、思考した所で思い出す。

 現在のレベルをアデルにまだ報告していなかった事を。


「えっと、昨日で35レベルまで上がったから、少なくとも55レベルくらいまでは行けるんじゃないかな?」

「ええ? たった一日で19レベルも上がったのですか……?

 そんな話し、聞いた事が……

 フェル様と話をしていると、自分の常識が壊されて行く様に感じてしまいます」


 確かに……普通なら倒せもしない格上を、寄生プレイという超ハイペースで8時間ぶっ続けた訳だからなぁ。まずあり得ない事なのだろう。


「異常なのは僕だろうね。なんかごめんね」

「いいえ、とんでもないです。主が優秀なのは配下としてとても幸せな事なんです。

 すぐ私が要らなくなってしまいそうで不安ですが」


 それは無いが、言いたいことは分かる。


「確かに、性格の悪い無能な主とかに仕える事になったら最悪そうだな」

「はい。ですがそれは割と普通な事なのです。だから私は幸せです」


 そう……なのか? 人族なら分かるけど……

 ん? 俺は考え違いをしているのか?

 地球と同じと考えると良い奴も嫌な奴もいるのは当たり前だし、割合で考えたら断然良い奴の方が少ないだろう。

 人族だけがダメだと考えていると足元をすくわれそうだな。

 それに嫌な奴と根性が腐った奴は別物か。


「そっか、じゃあ俺も愛想を尽かされない様頑張るとして……

 どうかな? 適正値が上がっても狩場の変動はなさそう?」

「そ……そんな事は……あっ、狩場の事ですね。

 ええとそれならば生息レベルがもう少し高いこの辺りはどうでしょうか。

 平均が50で最大が75程だと聞いています。

 先ほどの場所より近く、このまま行けば今日また狩りが出来ると思いますが」


 アデルは少し焦った様に狩場の話しにシフトして地図を指でなぞっていく。

 レベルも丁度良さそうだし、今日行けるって所が更によしだ。


「うん、いいね。そこにしようか。

 それはそうと、ちょっと気になったんだけど最大レベルっていうのはどの程度信頼出来るものなの?」

「ええと、最初の敵が情報通りならまず問題ないと思われます。

 魔物同士でももレベル差が激しいのを嫌がるそうなので、異常に高い魔物が縄張りに入ってくると、なりを潜めたり移住する事すらあるそうです」

「あ~なるほどね、それならあまり警戒する必要はないかな」

「あっ、それはダメです。例外もありますから……

 例えば強敵が入って来たばかりだったり、弱い魔物が群れをなして強敵に対抗できる状態だったり、他にも例外はあるそうなので、警戒レベルが若干下がる程度に考えてくださればよいと思います」


「りょ……了解。そんなに甘くは無かったか。

 なら逃げ方の打ち合わせとかもして置かないといけないんじゃない?」

「それは簡単です。

 私が足止めをしている間に逃げて頂ければ大抵の場合は逃げ切れると思います。

 今の私を瞬殺できる魔物は、この辺りでは目撃された事すらありませんから」


「また出たよこの子。えっとこういう時はなんだっけ……

 この、自己犠牲野郎! ん~野郎はしっくりこないな……女の子だし。

 あ、これだ! 俺を置いて死ぬ気かっ、この不忠者っ」


 おっとまた思考が口に出てた。


「そう申されましても、想定するのが相手に出来ない程の格上の場合、言葉通り本当に一つも相手にならないのです。

 大抵の場合、早さも相手が上です。逃げ切れなければどちらも死んでしまいます」

「だからさ……今それをどうやって回避するかの打ち合わせをしよう、と言ってるんじゃないか。

 ちゃんとした下準備があれば出来ない事って思ったより割と少ないんだぜ」

「すみません、私には分かりません。ご期待に添えそうに無いです」


 と、アデルは諦め顔で俯いてしまう。だがこのままでは困る。

 貴方だけでも逃げて下さいという残念な状況には陥りたく無いのだ。

 なので俺は、自分の中にある考えをそのまま相談してみる事にした。


「案その一、相手の視界を防ぐ方法を考えてみる。

 乾燥してる所なら砂埃とか? これは色々厳しいか。そんな時間があれば逃げ切れそうだ。いや、目潰しになるものを持ち歩けばあるいは……

 案その二、相手が移動出来ない場所に移動出来る準備をしておく、絶壁の高台とかにジャンプ台プラスロープとか準備しておけばあるいは……

 他にもまだあるぞ使えそうな案があれば拾ってくれ」


 ぐぬ、しょぼい案しか出てこねー……

 もうちょっと有効なの無いの、と俺が言いたい。


「確かに魔物はロープを掴んで登ったり出来ないものが大半を占めますが、そんなに都合のいい場所に出会った時に居られるわけがありません」


 ですよねー。登れない絶壁が無いってだけでもう使えない……


「ならそんな場所を発見し次第そこを拠点に索敵して引いたらどうかな?」


 まあ、最初は拙くていいんだ。考えて行動してれば上達するだろ。

 と自分に言い聞かせていると「あ、それなら……」と割と好感触な答えが返って来た、が逆に疑問に思ってしまう。


「というか、こんな稚拙な程度の生きる知恵なら試した奴は居るだろ?

 そこからそういう事を専門にしたサポートとかに派生していそうなものだけど」

「私は聞いた事はありませんね。

 ギルドでは気配を感じたら逃げろ、見つけたら逃げろ、見つかっても逃げろ、そして幸運を祈れと教わりました」


 ええ~雑過ぎんだろ!? もうちょっとなんかあるだろ!!

 それともそれほど圧倒的で一瞬ですべてが終わってしまうほどの差があって無意味なのかな?


 と思いながらも話を進めたようとしたが、取り合えずこの辺りでは心配の必要はまずないとの事で、思いついた時に少しずつ戦える魔物相手で使えそうなものを模索していこうと言う事になった。


 その模索が多少なりとも形になればピンチになった時、問答無用で一人で逃げろと言われる事にはならないだろう。


「そろそろいい塩梅になったんじゃないか?」


 とちょいちょいと手招きをしてアデルを近くに呼び寄せて櫛を使ってブラッシングを開始した。

 アデルは心地よさそうに目を細め諦めた様に身を委ねた。

 ゆったりとした時間が過ぎていき、日差しが強くなってきた辺りで馬車が止まった。


「指定された地域に入りましたが今日はどうしますか?」とビルが指示を仰ぐ。

 

「うーん。

 また近場に安全地帯があるなら前回と一緒でお願いしたいんですけど、どうでしょうか?」

「この場所からだと1時間半ほどで町がありますね」

「それくらいなら徒歩でも移動できるかな。ねえアデル?」

「はい、荷物も無しで短距離なら余裕かと。

 フェル様の今の能力なら普通に向っても二時間ほどで行けるでしょう」


 まあ、馬車のスピードってそんなに速くないしね。


「では、お代は出すのでビルさんは先に向かって宿を取って休んでて下さい。

 僕らは狩りが終わり次第向かいます」

「分かりました。では宿が決まり次第門番に言伝をしておきますので」


 とビルさんは足りなかった俺の頭を補足してくれながらも軽く頭を下げ、馬車を走らせた。


「さて、今日は流石に移動狩りかな。

 町に近づきながら狩りをしてある程度、遭遇率が高い所で固定狩りに切り替える。

 魔物が減ってきたらその都度移動でどうかな?」


 前回はアデルの広範囲索敵によりほぼ動かなかったが、それでも途中で二度移動したのだ。

 ならば、最初から移動仮を想定しておかないと、アデルがまた申し訳なさそうに移動の提案をする事になる。


「はい、分かりました。」とアデルはさらさらふわふわの尻尾がお気に召した様子で触ってぶんぶんと振り回し嬉しそうだ。

 だが、地面に放り出した槍をそろそろ持って欲しい。移動するのだから。

 俺は微笑みながらも『行くよ』と声を掛けて移動を促した。


 


 狩りを初めて3時間ほどが経った時、俺達は全力疾走で森の中を走っていた。


「フェル様、どうやら巻けそうにありません。私が数を減らせて来ます」


 そう俺達は追われていた。確認済みなだけでも17匹。

 敵レベルは60前後とこの狩場ではかなり高めである。


 いくらアデルと言えど単騎で十以上に囲まれてしまっては、18レベル差程度では不利過ぎる。だが俺まで接敵してしまうと護衛が無しの状況になってしまう。

 その状況を看過出来ずアデルは撤退の指示を出してきた。

 

 だが魔物の形が犬系だからだろうか、早くて巻けそうに無いのだ。

 走って逃げている間に追加で数匹増えている。


「了解。今回は俺が援護に回るから掃討頼むね」

「そう、ですね。離れるのは逆に危険でしょう。

 後ろに回ってしまった敵だけお願いします」

「ああ、分った。

 それと俺もう45になったから三体くらいなら引き付けても問題ない。

 安心して対応してくれ」


 と言うのは嘘である。

 連続した戦闘が続いていて経験値の割り振りをまだしていない。

 本当は40レベルのままなのだ。

 だが、引き付けられる敵の数は嘘をついてはいない。

 落ち着いた方が実力が発揮できるだろう、と言ってみたのだ。


「助かります。お任せしました」


 と彼女は踵を返し反転して走り出し、俺もその背後に続いた。

 だが魔物の対応能力は高く、5匹が後方まで回り込んだのを待ってから攻撃を開始した。これが群れをなす魔物か。

 魔物も動物も変わらないんだな……っとアデルが俺の名を叫んでる。


「大丈夫だ。殲滅は遅れるけどさばける。自分の事に集中しろ!」


 お互い見合う事は出来ない状況だがおそらく彼女は涙目だろう。

 そしてきっと俺の言葉は信じていない。

 彼女は少しでも俺が危ないと思えば、只それだけの為に命を差し出すだろう。

 だから無理をしなくては……

 

「俺は元とは言え神の使途だ。

 お前らなんぞにやられるほどぬるい存在ではない。

 身をもって知るがいい無知なる獣よ」


 アデルが下手に飛び込んでこない様にと、堂々と大き目な声で恥ずかしげもなく、きりっとした顔で言ってみた。

 だがこの顔の紅潮は隠せているだろうか? こちらを見ていない事を切に願う。


 そんな心境で俺はゆっくりと魔物を急激に刺激しない様に近づいた。

 焦れて動き出した最初の魔物をターゲッティングして全速力で近づき、思考加速を限界まで行使して牙を向けるため口を開けた瞬間を見切り剣を口内に突き入れた。


 喉の奥を貫き、その魔物は一撃で絶命した。


 だが残り4匹の魔物は獲物である俺がアデルから大きく離れた事で単独になった今こそ好機、と言わんばかりに突撃して来た。

 流石に4匹同時だと避けるので精一杯で攻撃までなかなか手が回らない。

 だがあの子の不安の煽る訳には行かない。

 

「ふはは、どうした。そんなものか?

 レベルも数も上なのだぞ、もう少し意地を見せたらどうだ? ふんっ!」


 おおう、完全に頭おかしい人です。本当にありがとうございました。

 とその時、俺の挑発(笑)が通用したのか一匹の魔物が連携を捨て突っ込んできた。

 その好機を見逃さず、今度はすれ違い様に首を跳ねた。


 もう怖い物は無いと敵にすり寄り倒して行った。

 そして回り込んだ分を片付け振り返るとアデルの腕が血だらけになっていて変な方向に曲がっていた。


「ア……アデルっ!お前その腕……」

「ああ、フェル様ご無事で何よりです。

 このまま敵は引き付けますので申し訳ありませんが少しずつ倒して貰えませんか?

 私は片手で槍を振るう事になれておりませんので……」


 脂汗を流しながらもこちらをちらりと見てまだ戦うと言ってきた。


 残りの数は7匹。


 片方が手負いの状況で出て来ないのだからこれで全部と見ていいだろう。

 早期に片を付けるにはアデルの言う通りにするべきだ。

 だがその前に聞かなければいけない事がある。


「アデル、何故回復のポーションを飲まないんだ?」


 数が減ったからか周りをうろうろと攻める機会を伺っている魔物とにらみ合いながらアデルに問う。


「申し訳、ありません。私は回復ポーションを持っておりませんので……

 任務はぎりぎりまで説明されず、危険な事にならないと聞いていたもので、と言うのはいい訳ですね。すみません」

「何を……言っているんだ?

 ポーションは二個づつ全種持ち歩いているだろうがっこの馬鹿!

 いいから早く飲め。飲まないと言うのなら一人でこのまま魔物に突っ込んで終わらせて無理やりにでも飲ませるぞ」


 アデルは俺の本気を感じ取ったのか速やかに回復薬を服用し、腕が正常な形に戻り血まみれの手で槍を握りしめた。


「ありがとうございます。後で必ずお返しします」

「うっさいこの馬鹿、お前後で説教な」

「はい……」


 と話が付いたのを待っていてくれたかの様に魔物が動き出した。

 だが完全回復したアデルに無傷の俺、七匹程度なら持ってこいなくらいの数だ。

 さっと片付け俺はアデルに声を掛ける。


「おい、さっさと街道に出るぞ。さっきみたいな群れが来たらまずい。

 再使用時間まで大分あるんだ。急ぐぞ」


 そう、ポーションは連続服用をしても一切効力を発揮しないそうだ。

 アデルはこのポーションは3時間程度は意味をなさないと言っていた。

 この3時間以内にまたアデルが大怪我をしてしまったらまずいのだ。


「いえ、大丈夫です。

 私の事はお気になさらず、フェル様の予定通り進めて下さい。

 次はあんなへまは致しません」

「いいから言う事を聞け、これは命令だ」


 と俺は返答を待たずに全速力で走りだす。


「はい、分かりました」


 こいつは分かっていない、俺が今どんな思いかを。

 あれだ。反省はしている。だが後悔はしていないっキリッって言われた気分だ……

 言われたこっちは怒り心頭である。


 そして移動中、魔物が追ってきているのを把握して足を止める。

 数は多くなさそうだ。ならば下手に引き連れては数を増やすだけだ。

 危険を減らすにはきっちり相手をして、殲滅しながら移動した方がいい。


「おい、今回の魔物は俺が一人で相手をするからな。

 絶対に手出しするなよ。これは命令だ」

「どうしてですか?

 それに二人とも戦える状態なんですから二人で相手をするべきです」

「これはお前への罰だ。黙って見てろ。

 仲間が傷を負うのは、嫌だけどしょうがない。戦っているのだから。

 だけどお前は、回復薬を渡しているのにも関わらず飲まなかった。

 それは俺がパートナーよりも回復薬代のが大事だと思っている。と言っているようなものだからな」

「わ、分かりました。ですが自分の物ではない物を勝手に飲むわけには……」


 え? ああ! そう言われてみればそうかもしれない。

 まだ出会って数日だ。

 高価な物を勝手に服用しろと言うのはアデルみたいな子には厳しいだろう。


 と魔物がお出ましの様だ。

 少し遅かった気がするが空気を読んでくれたのだろうかと考えていたが、どうやら違ったらしい。気配を感じた以上に数が居る。

 おそらく合流したのだろう。

 まさか、連携の打ち合わせでもしていたのか?

 って流石にそこまでの知性は無いか。


 ん? あれれ? 俺ひとりでやるんだっけ。

 不味くないか? 7匹もいるぞ、これは一人じゃ無理だろ?

 5匹でも避けるのが精一杯だったのだけれども……

 アデルをちらりと見ると首をゆっくり横に振りながらダメだと意思表示し、もうすでに少し泣きそうな顔をしているが、槍を構えずじっとしている。

  

 流石にこれは助けを求めた方がいいよなぁ。カッコ悪過ぎるけど……


「なあ、アデル、7匹は多すぎるよな?

 これじゃ俺、死んじゃうかもしれないからさ……」

「分かってます……手は出しません。

 だからお願いですからせめて命だけでも無事でいて下さい」


 いや、虐めるために恐怖を煽った訳じゃ無いからね?

 

「やっぱり無理なんで助けて下さい、ちょっと調子に乗ってました」

「はっ?」


 ぐはっ……止めて、ちょっと……そんな目で見ないで。

 そんな『えっと、この人何言ってるんですかね?』的な目で……


「え? あの、私も戦っていいんですか?」

「アッハイ、お願いします」

「ありがとうございます、フェル様大好きです」


 え? な、なんですとー!?

 ここは好感度が下がるべき所ですよね?

 と動揺している内に魔物の攻撃が目の前に迫っていて、もろに食らってしまった。

 肩から爪で引き裂くように魔物の前足が振り下ろされ吹き飛ばされた。

 何メートルか転がり、痛みに呻きのたうち回っていれば、鬼神の如く怒ったアデルが、敵を殲滅し回復薬を飲ませてくれた。


 そしてポーションの再使用時間待ちをする為、二人で急いで街道に向かう。


 そして今日は狩りをする事を止め、真っすぐ町へ向かう事にした。

 割と都合よく移動狩りをしたのか一時間程度で到着し、打ち合わせ通り門番に宿の場所を教えてもらいビルと合流した。


 本日の討伐数35匹


 獲得経験値 19428 

 現在の46Lv

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る