第3話

 トーキ地方に朝は早い。

 山から太陽の光が覗き込むころにはみんな、学校やら仕事やらで大忙しいの時間だ。


「遅刻するわよっ!!」


 母の掛け声に目を覚ます。

 どうやらあれから寝てしまったようだ。


 布団の上に寝静まるかのようにシグマが眠っていた。

 夢じゃない。そう確信し、ベッドからシグマを起こさないように降りた。


 さっそく私服に着替え、今日から始まる学校生活へと順応するため、急いで身支度を済ませる。

 その間にシグマが目覚めたらしく大きな欠伸をし、ぼくに近づいてきた。


「学校、一緒に行くかい?」


 シグマは大はしゃぎするかのように華麗なジャンプをした。

 ぼくは嬉しくなり、妄想が実態となったシグマを見せたくて一階へ降りていった。


「ママぁー!! パパぁー!!」


 廊下からダイニングルームにつながる扉を開けると、そこには二体の生物が両親の傍らにいた。


 ヤギのような蕾の姿をした生物は母のそばにおり、父のそばにはペンを握るペンギンの姿があった。


「ママ!? パパ!?」


 呆然としていると両親は互いを見てからぼくに向かって言った。


「早く飯にしよう」

「そうね、今日からね」


 なにが起きているのかさっぱりだったが、父いわく、【モンスターゲット】による恩恵から今日から、架空生物とともに生活するというプロジェクトが開始したのだという。


 それに選ばれたぼくを含めた両親はトーキ地方に引っ越ししたのだという。トーキ地方ではいま、同じ生物を相棒(パートナー)とした人たちが中心に集まっている。


 リュカも元気になれたらと思い、父と母からのプレゼントだった。


 その日を境に、ぼくたちは相棒(モンスター)と共に日々を過ごすようになった。

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モンスターアプリ にぃつな @Mdrac_Crou

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