進化キャンセルはB連打にゃ!
「医学部出身にゃら白衣くらい着て欲しいにゃ」
「嫌だヨォ〜白衣は前職で散々着たからもう良いのォ」
「というか働けにゃ。アール先輩に迷惑にゃ」
「それも嫌だヨォ〜俺は大人しくココにいるだけで良いのォ」
左手でゼニの形を作ってニヤつくヒサメを無性に殴りたくにゃる。
ついさっき衝撃の事実を知らされたニャアは、ただひたすら先生にダル絡みをしていた。
だって、納得いかにゃいんだもん!
たしかに言われてみれば、本当に馬鹿だったら養護教諭にすらにゃれにゃいよ?
でもさ! こんにゃ何もしにゃい奴が、実はめちゃくちゃ優秀で天才? 何そのちょっと美味しい設定っ!!
サボってるくせにクビににゃらにゃいのは天才だからか!?
世の中不公平にゃ! あと理系にゃのがにゃんかむかつくにゃ。
「えぇッ、ソコォ!?」
だってほらあるじゃん! にゃんか文系のイメージとか、理系のイメージとか。
ヒサメは和風だから文系のイメージにゃんだよね。雅とか追求しちゃって、古文とか読んだりさ。
……って、あれ!? 勝手にニャアのモノローグに入ってこにゃいでよ!!
ぷんすことニャアが怒って見せると、ヒサメはへらへらと手を振ってきた。多分「ゴメンネ☆」って意味にゃんだと思う。
そんにゃ軽薄にゃ態度すらムカつくんだけど──
「ところでマオさん、保健室に何か用事があっていらしたのでは?」
「にゃっ、そうだった!」
ヒサメの衝撃ニュースで本題を忘れるところだった!
「ねぇねぇアール先輩。この中で一番、学歴が高くて頭が良い素敵な大人ってだーれ?」
某教育番組の自称五歳を意識しにゃがら言ってみる。しかし、アール先輩はネタを知らにゃかったみたいで、戸惑いにゃがらも「ヒサメ先生ですね」と答えてくれた。
「じゃあヒサメん〜親切って単語があるでしょ? 親を切ると書いて『kind』の意味。にゃんで、親を切るのが親切にゃの?」
「親切ゥ?」
まさにここでエフェクト! って感じにゃリアクションをヒサメがしてくれた。
話を聞いていたアール先輩も、「そう言われてみれば確かに不思議ですね」と考え込む。
ロラン先輩から発祥した親切の謎だけど、やっぱり皆不思議に思うものだよにゃ! 親を切るにゃんて怖すぎるに。
にゃふふ、これで自称T大☆ヒサメの鼻を明かせ──
「まァ、語源はなんとなく分かるけどネェ」
「……にゃんだって?」
聞き捨てにゃらにゃいことを言われた気がするにゃ。
え、にゃんとにゃく分かる? またまた〜ヒサメんってば、冗談がお好きにゃんだから〜
「嘘じゃあないヨォ? まおサンの聞き方が悪いだけでェ、語源なんて考えれば分かる事でショ……アッ、分からないから聞いてるんだっけェ? あははッ〜ごめんネェ」
コイツ……煽りよる!!
今までにこんにゃ腹立たしい事はあっただろうか。いや、にゃい。心の中で反語を決めつつ、右手で軽く拳を握った。
視界の端ではアール先輩が笑顔のまま固まっている。
「親切って言うのはネェ〜」
ニャアたちの反応を愉しそうに眺めていたヒサメが、唐突に解説を始めた。
「身近に寄り添い、行き届くようにするコト。
親という字は、『おや』だけじゃなくてェ、『しん』って読むでショ? それってェ、
切は差し迫るとかァ、身近に接するとかァそういう物理的に近い いめぇーじ の意味があるからサ、物理的にも精神的にも近くで良くするってトコから来てるんじゃあないかなァ?」
にゃ、にゃるほど。
字面に囚われて騙されたけど、確かに『親』と言う字は『おや』以外にも意味があるんだにゃ!
盲点、だった……
「あははッ、まァ俺が今言ったコトは本当とは限らないけどネェ」
「はあ!?」
「だってェ、俺は気まぐれだし?」
そう言って、ヒサメは特徴的な笑い声を上げた。「それっぽいコトを言うのは簡単だからネェ」にゃんて、ニャアの反応を楽しむ構えにゃ!
くっそ〜これだからヒサメんは性格が悪い!
「マオさん、大丈夫ですよ。今の解説は恐らく本当です」
「……なんでそう思うのかなァ? あーるサン」
「だって、ヒサメ先生が嘘をつく理由がないじゃないですか」
「えッ」
アール先輩の純粋な眼差しを受けたヒサメがたじろんだ。
心が汚れた大人に綺麗にゃ目は、効果が抜群にゃようだ……
ニャア的にヒサメはどちらかと言えば、にゃんの理由もにゃしに嘘をついてきそうにゃタイプだと思うけど──
「アール先輩がそう言うのでしたら、ニャアは信じますにゃ!」
「えェー此処はァ、俺を信じるかどうか選択肢がでる場所じゃなあい?」
「ヒサメ先生は攻略対象じゃにゃいから」
「アレ、そうだっけェ!?」
「ニャアに攻略されたかったら、好感度を上げてから出直してきてくれます?」
「あははははッ! される側にもそんなァ しすてむ があるんだネェ」
そりゃあね、ニャアにだって選ぶ権利はあるわけだし。
そんにゃ思いで放った言葉だけど、思った以上にヒサメのツボにハマってしまったようにゃ。ずっとゲラゲラと笑い転げてとってもうるさい。
「だいたいヒサメんはさ、女の子に興味にゃんてにゃいでしょ?」
「そうだネェ〜妹がいるから他の女に浮気とかしないヨォ〜俺」
それただのヤバイ奴☆と、心の中でツッコミを入れつつ口では「ほら〜」って返した。
仕舞いには「正直女性の顔の見分けすらつかないんだよネェ、興味がなさすぎて」とか言い出すもんだから、思わず天を仰いじゃったにゃ。
こいつはやべぇー。ダメにゃ奴だ、マジで。
「……へくちっ」
ヒサメの暴言に絶望していた最中、可愛らしいくしゃみの音が保健室に響いた。
それと同時に──
パンッ!
という、何かの破裂音。
「えっ、にゃににゃに?」
ビックリして音の出た──アール先輩の方を見ると、お茶を飲もうとした姿勢のまま固まる先輩と、その手から木っ端微塵に砕けたカップの破片がパラパラこぼれ落ちる光景があった。
「……わーお、にゃんだふる」
こんにゃ砂みたいに細かい陶器って初めて見たにゃ……
落とした訳でもにゃいのに。
思わずニャアは呟いた。
ちょっと自然の摂理とか物理法則とかを超えた何かの超常現象としか思えにゃい。
「ああぁあぁぁ……すみません、
カアァっと赤く頬を染めたアール先輩が、慌ててカップだった物を片付け始める。
うんうん、可愛い可愛い…………
「あーるサン、怪我の方は大丈夫かなァ?」
「大丈夫です。申し訳ありません、床を汚してしまって……」
比較的大きな破片を手で拾い集めた先輩が、今度は飛び散ったお茶を拭こうと布巾を探す。
「はいはい落ち着いてネェ、あーるサン。破片は手で触っちゃ駄目だヨォ。残りは俺が掃いとくからサ」
手慣れた様子で箒とちりとりを持ち出したヒサメは濡れた地面にティッシュを被せ、先輩から破片を受け取ってゴミ箱に捨てる。
「あの……アール先輩……」
「あっ、マオさん! ごめんなさい、驚かせてしまいましたよね」
恐る恐る声を掛けたニャアを見て、アール先輩は眉を下げた。
「ワタシの家系はどうも生まれつき馬鹿力を授かるようで……」
「あーるサンはァ、握り潰しちゃう たいぷ の缶を開けられない男子だよネェ」
「ヒサメ先生!」
缶を開けられにゃいって、非力の代名詞みたいにゃもの。それを……え、潰れる? アレって潰れるの……?
えぇ……
ひ、引いてにゃい! ニャアは引いてにゃいんだぞっ!
「今は力の入れ方を学びましたので開けられますからね?」
アール先輩が何やら弁明をしているけど、違うにゃ。そうじゃにゃいにゃ。
缶ジュースを握り潰すのがもう普通じゃにゃいし、その容量で陶器のカップが砂微塵になるのがヤバ過ぎるだけにゃ。
「普段制限してる力がくしゃみの勢いでネェ? カップの一点に一気に解放されてェ、それが衝撃波としてカップに瞬時に伝わる事で木っ端微塵になるんだよネェ?」
バトルものファンタジーかにゃ?
謎の解説ありがとう。ちょっと意味が分からにゃいですね。
でもそっかぁ……馬鹿力かぁ……
「アール先輩って既にそんにゃ力があるのに、にゃんで筋トレとかするんですにゃ?」
「それはもっと筋肉をつけたいからでして……」
「次は何を粉砕するのですかにゃ?」
「違いますよっ!? 見た目の問題です」
どこかションボリした様子でそう言うアール先輩。
どうやら、見た目が華奢にゃのを気にしているらしい。
そこが良いのに、ってニャアは思うけどね。
「ワタシは鍛え抜いて筋骨隆々になりたいですね! それで、ボディビルダーの大会に出てみたいです!」
「……パードゥン!?」
この保健室に来てから驚きっぱなしだけど、今の発言が一番衝撃だったかもしれにゃい。
「え、あの肩に小ちゃい重機乗せちゃう奴にゃ?」
「ボディビルダーの掛け声をよくご存知ですね」
「ジャパニーズアニメーションの知識ですにゃ」
……って、ままま、待つにゃ! 待って欲しいんだにゃ!?
これはもう死角からパンチを貰った気分だにゃ!!
「アール先輩がボディビルダーに? 逆三角形にゃ?」
「ええ、とっても男らしくて素敵ですよね」
え、やだやだやだ普通に嫌だにゃ。
それは違う、断じて違うと思いますにゃ!?
こ、こんにゃ可愛いアール先輩が逆三角形ににゃっちゃったら、全国の先輩ファンが泣いてしまうにゃ?
これは例えるにゃら、ジャヌィーズ入りできそうにゃ美少年が将来の夢はお相撲さん! って言い出された母親の気分にゃ。
そう、つまり絶望。ニャアは今、きっと宇宙猫の顔をしているにゃ。
しかしそんにゃニャアに、先輩は追い討ちをかけてくる。
「マオさん……応援、してくださいますか?」
おっふ……
応援したいわけにゃいじゃにゃいですか! やめてぇ!
そ、そんにゃ期待するようにゃ目で見にゃいでぇ……
ここはにゃんて答えたら……
①断固拒否にゃ!!
②言葉を濁しちゃうにゃ。
③ヒサメに助けを求める……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます