人は見かけによらにゃいって言うけどこれは……

 ふぅ〜

 お茶を飲んで一息つく。

 冷房を効かせて涼しい保健室で飲む熱々の日本茶は絶品だにゃ。


「それで、先輩はテスト前にゃのに保健委員の仕事ですかにゃ? ヒサメんにこき使われているんですにゃ?」

「人聞きの悪いコト言わないでヨォ」

「にゃんだいたんだ」


 声のした方を見ると、背後のカーテンが開いてベッドからヒサメが起き上がって来た。そこって具合が悪くにゃった生徒とかが利用する場所じゃにゃかったっけ?


「あははッ! これでも定時まではァ、ちゃあんといるんだヨォ?」


 心外だなァ〜とでも言いたそうにゃ顔しているけど、定時って17時だったはずだから、もう30分もしにゃい内に帰るんだに?

 いてもいにゃくても誤差の範囲だにゃ。

 にゃんて、ヒサメに用があって来たはずにゃのにこんにゃ事を考えてしまうニャアであった。


「アール先輩も、こんにゃぐうたら無理して構う必要にゃいんですにゃ?」


 ニャアが心配して声をかけると、「ありがとうございます」って先輩が笑ってくれた!

 やっぱりアール先輩の笑顔はいつ見ても素敵にゃ、可愛いにゃ〜! むふふ。


「この時期はクラブ活動も委員会活動もありませんので、滅多に人は来ませんよ。皆さん勉強に専念されていますから」

「それにゃら尚更先輩も勉強した方が良いですにゃ!」


 こんにゃ奴より先輩の成績の方が大事ですから!

 ニャアは責めるようにゃ目でヒサメを見る。だけどそのヒサメは、我関せずとベッドにゴロゴロしにゃがらスマホを弄っていた。


 ……うん、こんにゃ奴よりアール先輩の成績の方が大事ですにゃ?


「ふふふ、そんな顔しないでください」


 ヒサメのあまりにもあまりにゃ姿に、思わずチベスナ顔ににゃったニャアを見て、先輩はおかしそうに笑った。


「ワタシはヒサメ先生に場所をお借りして、勉強させていただいているのです」

「ええっ!? わざわざこんにゃところで!?」


 言われてみれば、確かにテーブルの端に教科書やノートが綺麗に積まれているのが見えた。

 訪問したニャアにお茶を出すため、退けておいたんだろうにゃ……

 勉強の邪魔をしてしまったのは申し訳にゃいと思うけど、


「お家とか……せめて図書室の方が集中できると思いますにゃ?」

「そちらももちろん利用しますけど、保健室にはここならではの良さもあるのです」

「ここならではの……?」

「ええ。分からない事がありましたら、ヒサメ先生に聞けて便利なんですよ。常に暇を持て余していらっしゃいますから、お時間頂戴しても罪悪感がありません」


 ふ〜ん、あのヒサメにねぇ?


 にゃんか背後から、「今さらっと失礼なコト言ってなあい!?」にゃんて声が聞こえた気がするけど無視にゃ無視。

 そんにゃことよりも、正直とてもじゃにゃいけど想像できにゃいのだ。このぐうたらダメ人間が、優秀にゃアール先輩に何か教える光景が!


「えっと……保健体育の勉強か何かですにゃ?」

「だ、そうですよヒサメ先生。良い加減日頃の態度を見直されてはいかがでしょう」

「えェー別に良いヨォ。気にならないし」


 二人が何やら意味深にゃ会話をしている……

 何? 何? 何にゃのー!? ニャアだけ除け者は嫌にゃ!


「実はですね、ヒサメ先生はこう見えてもT大の理IIIを首席で卒業された凄い方なんですよ」

「にゃにゃにゃ、にゃんだってぇぇえええーーーー!?」


 唐突に投下された爆弾発言に、ニャアの絶叫が響き渡った。


 いや、だって仕方にゃいにゃ? だって、だって、T大と言えば日本で一二を競う難関大学にゃ上に、理IIIはつまり医学部! もうそれだけでもヤバイのにそこを更に首席って、マジで天才にしか成し得ない技だにゃ!?

 それを、この、おサボり養護教諭がぁ? うっそだぁ〜!! いや、嘘だと言って欲しいにゃ!?


「ダメだヨォ、あーるサン。まおサンがしょっくで固まっちゃったじゃあないかァ。人にはネェ、知らない方が幸せなものがあるんだヨォ?」

「そうでしたか……それは悪いことをしてしまいましたね」


 二人の呑気にゃ会話が聞こえる。


「マオさん、すみません。今のは嘘ですので、どうか忘れてください」

「いや、その嘘が雑すぎますにゃっ!?」


 この嘘がアール先輩の優しさだと気づいていても、つっこまずにはいられにゃい。


 でも二人のこの態度が、逆に今の話の信憑性を上げた……というか、真実にゃんだって分からされてしまった。


「ヒ、ヒ、ヒサメんの馬鹿野郎ぉおぉおおぉおおお!! バカ仲間だって! 信じていたのにぃっ!!」


 保健室に、二度目の絶叫が響き渡った。

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