選ばれたのは、日本語でした!

 キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪ 


 定番の始業チャイムが鳴り響く。

 今日の一限は、ニャアも大好きソルディオ先生の日本語だにゃ! 

 まさか先生の授業を忘れるにゃんて、不覚の極み……

 しかも今日から衣替えってことは、先生もワンチャンクールビズしてたりするんじゃにゃいか!? 

 スーツの上からでも分かる、ガッチリしたあの体。絶対良い筋肉が隠れているに違いにゃい。


 わっくわくと、先生を待つ。

 既にチャイムは鳴っているけど、先生がやってくる気配はにゃい。まあ、これはいつものこと。

 チャイムと同時に授業が始まったりしにゃいのが、ソルディオ先生スタイルにゃ。

 そのまま五分くらいが過ぎたころ、何事もにゃく先生が普通にやってきた。


「……授業を始めるぞ。お前ら席につけ」


 はーい、と元気にゃ返事と供に皆もわらわらと席に戻る。

 やって来た先生は、昨日までと変わらずぴっちりとしたスーツを着ていた。


「正直ショックを隠し切れにゃいにゃ」


 此の学校の先生たちにクールビズは存在しにゃいと言うのか……にゃんてブラックにゃんだ、訴えてやる! 


「安心しろマオ。見た目は同じだが、これは通気性抜群の夏用スーツだ……これぞ作画コスト削減だな」

「メタァ!!」


 ちょっと、ソルディオ先生!! 

 そういうメタ発言はニャアの専売特許にゃ? 


「さて、今日は第五章の手紙の書き方からだ」


 だけど、先生はもうニャアの抗議に反応はしてくれず、淡々と授業を始めてしまった。

 パラパラと皆が教科書をめくっていると、廊下から生徒が一人駆け込んでくる。


「先生ごめーん、遅れたー!」

「……分かったから座れ」

「はーい」


 遅刻程度じゃお互い何も騒がにゃい。

 それがよく訓練されたソルディオ生クオリティ。


「とりあえず例文を読み上げるから適当に復唱しろ……『お元気ですか』」

『Ohゲンキデスカ⤴︎』

『私は元気です』

『ワタCハゲンキDeath』


 んっぶふ、うぉ……! 


 大げさすぎるくらいにゃ発音で復唱するクラスの皆。

 この時間は、ニャアにとって腹筋が試される時にゃのだ……! 


 数話前にも話したけれど、ニャアたちが普段話しているのは英語にゃのだ。

 日本にある学校とは言え、世界中から生徒が集まっているここで、日本語にゃんてマイニャー言語が話せる人はむしろ少数派。

 だから日本語の授業は、生徒たちのレベルによってクラス分けがされている。


 そんにゃ中で、ソルディオ先生が担当するクラスは日本語上級。ニャアも含めて一定水準以上日本語ができる人たちのクラスだけど……


『今度遊びに行きませんか』

『Can do assembly in key magenta』

「にゃふぉっ!!」

「……マオ、授業中だぞ」

「いにゃいにゃ、今のは流石に酷いですにゃ!?」


 日本語ですらにゃいし! 

 ニャアの腹筋が崩壊する前に、抗議するにゃ。


 これがさ、皆一生懸命発音しての結果にゃら文句はにゃい。勿論にゃ! 

 でも、この外国人風日本語発音は皆わざと出しているだけにゃのだ。


 ほわんほわんほわんほわん〜と、ニャアは回想に入る。

 そう、あれは誰が言い出したのか……


「ソルディオ先生ってさ、吹き出したりするのかにゃ?」


 そんにゃ好奇心による一言が、全ての始まりだった。

 先生は完璧にゃイケメンだけど、あまり表情が変わらにゃいお人。笑ってしまうところが見てみたい! 

 その時、クラスの思いは一つににゃった。


 突然変顔をしてみたり、文章を作る時に最高のジョークを考えてみたり。

 どれも面白かったけど、「定番だが普通だな……」と先生の反応はイマイチ。皆の心は折れそうだった。

 そんにゃ時、復唱を大袈裟に言った人がいた。


「……ふむ、愛嬌があって良いんじゃないか? オレらが流暢な日本語で話したら、日本の人も驚いてしまうしな」


 何故か好評だった。

 それ以来、皆は面白おかしく復唱して先生を笑わせようとしているのである。


 回想おわりっ! 



「笑ってしまう人がいるからな……大げさ過ぎるのは控えて復唱しろ」


「は──い」と、元気な返事をして、何事もなく授業が再開される。


『最近リベル様が怖いです』

『最近リベル様が、コワイです』


 その例文を真顔で言うソルディオ先生が、一番怖いです。



 ………………

 …………

 ……



 今日から本気を出すと言ったにゃ? あれは嘘だっ!! 

 いや、嘘じゃにゃいんだけど……本気を出す準備をしていにゃかったから、昨夜普通に夜更かししたんだった。


 ニャアは今、必死に襲い来る眠気にあらがっている。


 大好きなソルディオ先生の授業だけど、正直内容は上級クラスでも簡単過ぎる。実は日本のアニメや漫画が好きにゃニャアは、日本語にかにゃり自信があるのだ! 


「手紙の基本構成は、前文、主文、末文、後付けの四ブロックからなり……」


 それに、それに! ソルディオ先生の声が心地良すぎて、ニャアを眠りに誘うんだに……

 例えるにゃら、悪の大幹部とかにいそうにゃ……低くて、邪悪にゃ……声……むにゃむにゃ。


「チョォオオオオクッにゃ!!」


 耐えきれず、ニャアの瞼が完全に落ちちゃったその時! 

 鋭い痛みがニャアの脳天を突き抜け、目の前に白い粉が舞った……


「にゃ、にゃにするんですか先生! 変にゃ声が出たに!」

「……マオ。簡単過ぎるのは分かるが、テスト前くらいは聞いた方が良いと思ってな……起こしてやったぞ」

「そ、そうにゃんですけど! チョーク投げはっ……!!」


 カラン、と机に落ちたチョークを見つめてニャアは叫んだ。

 今時チョーク投げたりしたら、体罰的にゃ何かで即訴えられるにゃ! 良くにゃいにゃ! 


「これはギャグ漫画的表現であって、暴力行為や体罰を肯定・推進するものではない」

「……ですからメタ発言は!」

「お前の専売特許……だったな?」


 ニヤリ、とニャアのセリフを奪った先生は悪戯っ子のようにゃ笑顔を見せた。


「ぴゃっ……」


 これが、初めて見た先生の笑顔である。

 ニャアだけじゃにゃく、クラスの皆も黙って先生をガン見した。


「では寝ぼけているだろうマオに、問題を出してやろう」


 にゃんたる公開処刑……! 

 もう少し先生の顔を楽しみたかったのに、もういつもの無表情に戻ってしまった。


「……この四字熟語を答えろ」


 カツカツと先生が黒板に書いた字は『○肉○食』


 あっはは〜にゃんたる定番問題。


「これは簡単ですにゃ! 答えは……」



①ここは定番の『焼肉定食』

②ちょっとひねって『贅肉過食』

③正答が安定だにゃ!『弱肉強食』



──────────────


前回の選択肢の結果。

①数学         33%

②第二外国語(日本語) 44%

③体育         22%


で、選ばれたのは日本語でした。




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