すまん、犯人捕まったみたいなんだが

代に着せられた濡れ衣を代わりに被り、自宅謹慎になって今日で1週間が経過した。

この1週間、俺は耐えに耐え抜いて代という天使に再び会える日を待ち望んでいた。

そう、耐えて・・・・・・られる訳が無かった。


「んもぉぉぉぉ!!!じろ~~~っ!!」


自室のベッドの上、枕に顔を埋めて声を漏らさないように親友の名前を叫ぶ・・・。

耐えようと試みたが初日で断念。

今では毎日の日課と化している。


「どうじてだ~!!なぜぎてくれないんだ~~!!」


俺は代の事だから、きっと謹慎している俺の家に様子を見に来てくれるんだろうとばかり思っていた。

だが1週間経った今でも、代が訪ねてくる気配が無い・・・。

まさかとは思ったが、


「もしや、本当に俺が更衣室を荒らした犯人だと思って・・・」


そんな事を考え出すと、どうしようもない不安と代に嫌われたのではないかという恐怖が同時に襲ってくる。


「あばばばばばばっっ!!!」


傍から見たらなんとも気色の悪い光景だろうか。

高校1年にもなる青春真っ盛りの男子がベッドの上でブリッジをしながら小刻みに痙攣している・・・。

病院のお世話確定。


「今すぐにでも代に会いたい!!そして誤解しているならその誤解を解きたい!!・・・けど今俺は・・・」


そう、謹慎中である。

今日まで1歩も外には出ていない。


「・・・・・・ちょっとだけ出ちゃおうかな」


どうせ誰も見てないし、告げ口される事も無いし・・・。

なんて事を考えもしたが・・・


「いややっぱり止そう。そんな事をして代に会いに行っても迷惑だろうし。・・・それに今家には・・・」


そこまで独り言を喋った時、誰かが階段を駆け上がってくる足音が聞こえてくる。

その足音は俺の自室の前で止まったかと思うと、ドアが勢いよく開けられる。

そして中に入ってきたのは・・・、


「けーくん!」


俺の事をこの呼び方をするのは世界でただ一人。

ロングストレートの黒髪を可愛らしいポニーテールにして、ツリ目もチャーミーなこの子。

紹介しよう、俺の義弟である新聖好(あらひじりこう)君です。

俺の母親が再婚してできた相手の連れ子だ。

また可愛いんだなぁこれが!!

滅茶苦茶甘えてきてくれるし、もう自分で言っちゃうけどブラコンだね!!

えぇそうとしか言いようが無いですねぇ。

ちなみに両親は滅多に家には帰らない。

世界中を転々としているらしい。

・・・まぁ長い長い夫婦のラブラブ旅行みたいなもんでしょ。

という事でこの家には俺と好君の二人で住んでいる。

えっ?何もして無いだろうなって?

おバカさんよ。

俺はこれでも紳士だぜ?

・・・まぁされる分には文句は無いけどね。


「何やってるのけーくん?ブリッジして」

「えっ?あぁいやぁ・・・まぁ、運動?」


そういえば体制キープしたままだったの忘れてた。

いかんいかん、大事な義弟に恥ずかしい所を見られてしまったぜ。


「そっか!あっそうだけーくん。テレビでけーくんの学校が出てたよ!」

「え?うちの高校?」


好君に手を引っ張られて居間へと連れられる。

その際、好君の柔らかな手の感触をこれでもかと繋がれている俺の手に刻む。

いや俺は何もしてないよ?

好君が握って来たんだから。

居間に入ってテレビに映し出されたテロップを目にする。


『下着泥棒逮捕!!1年間で盗んだ下着約1000着!!』


「ぶふぅぅぅぅぅっ!!?」

「けーくん!?」


やっぱり部外犯じゃねぇかぁ!!

吹くわそりゃあよぉ!!

くそ~今すぐこいつをぶん殴ってやりたい!!

元はと言えばこいつが全ての元凶だぁぁ!!!


「大丈夫けーくん?テレビ見るなり盛大に吹いてたけど」

「あ、あぁ大丈夫だよ好君。ごめんね」


心配してくれている優しい優しい好君に最大限の感謝をして、今一度テレビに向き直る。

どうやらこの犯人、またうちの学校に侵入している所を偶然見回りをしていた警備員に見つかり、さらには偶々通りがかった巡回中の警官に現行犯で捕まったらしい。

なんておバカだと言うか、間抜けだと言うか・・・。

テレビではアナウンサーが犯人について説明している。


『犯人は調べに対し、匂いを堪能したり、着替えているのを想像したりしたくてやったと供述しているようです』


「おぉぉい!?それ俺が言ったやつじゃねぇぇか!!やめろお前!!お前なんかと同じ思考回路とか嫌だぞ俺は!!!」


少なくとも俺とこの犯人の違いは、ホモかホモでないかで分別される。

良かったホモで。


「でも良かったねけーくん!これで学校行けるね!」

「あ、そっか!やったぁ!」


無邪気な幼い子供の用に大はしゃぎする俺。

それを母親のように温かい目で見つめる好君。

けれど恥ずかしいとかそんな感情湧いてこない。

何故ならこれで代に会えるから!!


「・・・でもちょっと寂しいな」

「え?」

「だって、いつもよりけーくんと一緒にいる時間が多かったのに、それが前に戻っちゃんだよ?それがちょっと寂しいかなって」


ぐぶぉっぉぉ!!?

好君!!

そこまで俺の事を!?

あぁぁ~~可愛いんじゃ~~。


「でもけーくんが喜んでいるんなら、ボクも嬉しい!良かったねけーくん!」

「あぁ!ありがとう好君!」



校長にお願いして後2日ぐらい謹慎してようかな?

いやしかし代に会いたい!!

でも好君も・・・。

何て考えをかれこれ数時間、自室でする俺だった・・・。

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