すまん、ラブレター貰ったんだが

更衣室を荒らした犯人が逮捕されたというテレビを見た昨日の夕方。

学校から連絡があり滅茶苦茶謝罪された。

でも元々は俺が勝手に濡れ衣を被っただけだと説明はしたが、それでは納得してくれず、日を跨いだ今日、改めて家に謝罪しに来るらしい。

・・・ていうかもう来てます。

玄関先で数人の教員や役員が頭を下げている。

しかもそれぞれが菓子やら何やらを手にもって・・・。


「ごめんなさい新聖君!先生失格だわ!」

「いやあの、だからあれは俺が勝手に・・・」


中でも滅茶苦茶この教師、あの日代の話をろくに聞かず、俺を職員室へと連行した教師が一番低姿勢である。

あの時は憎たらしかったが、ここまでされるととても可哀そうに思えてくる。

俺にもまだ女性を可愛そうに思う心が残っていたんだな・・・。

ていうか別にホモだからって女性を嫌悪しているなんて誰も言ってないけどさ。


「先生、俺の謹慎は・・・」

「勿論取り消しよ!何なら今からでも登校する?」

「今から」


今の時間で言うと、2限目が始まったくらいか。

一刻も早く代に会いたいなぁ。

だがその前に・・・、


「あの好君?」

「何?けーくん」

「いつまで背中に抱き着いてるの?」


先生方が来てから好君が俺の背中から離れないでいた。

しかも心なしか、怒っているようにも見える。


「あの~好君・・・もしかして怒ってる?」

「別に怒ってないよ?けーくんが更衣室荒らしたりする訳ないのに、それをけーくんだって決めつけたりした人達がのこのこ目の前にいる事なんて全然怒ってないよ?」

(怒ってらっしゃる~~!!!丁寧に説明まで添えてお怒りでらっしゃるぅぅ~~!!!)


俺のために怒ってくれているのがすごい嬉しい!!

後なんかめっちゃ温かい!!

それにいい匂い・・・じゃ無かった、好君を堪能しているのもいいが先に・・・。


「うっうん!先生!今日までは家に居ます!明日から登校させて下さい!」

「けーくん?させてじゃなくてするんでしょ?」

「登校します!」


操り人形か俺は。

でも好君にならいいかな・・・ふへへ。


「わ、分かりました。それでは明日、待っていますね。」

「はい」


もう一度深々とみんなして頭を下げ先生方は帰っていった・・・と思ったら例の教師がくるりとこちらに向き直ったと思ったら俺へと近づいてき、俺の手を両手で取り胸付近へと寄せる。


「本当にごめんね新聖君!先生これからは生徒を一番に信じていくわ!!」

「が、頑張ってください・・・」


先生はありがとうと言うと、今度こそ帰っていった・・・。

何で手を取る必要があったんだ?

先生には悪いが今ので好君との触れ合いで出来た感触が無くなるでしょうがまったく・・・。

なんて思っているといつの間にか好君が俺の前に来ていた。


「うおぉビックリした!!好君いつの間に・・・えっ、好君?」


好君は今先生に握られた俺の手を取ると・・・


「こっち」


その俺の手を自分のズボンのポケットへと突っ込んだ。

何を言っているのか分らんと思うが俺も分からん。

取り合えず脳がスパークしそう・・・。


「こここ好君!?なにななにやってるの!?」

「けーくんの手にボクを上書きしてるの!」


エンダァァァァァァァ~~~!!イヤ~~~!!!

成仏・・・。

じゃ無い戻ってこい魂!!

あぶねぇ、あまりの破壊力に魂2,3個持ってかれたわ。

何?上書き?かっっっっわいいなおい!!


「好君もしかして・・・さっきの嫉妬してる・・とか?」

「してるよ!」


いやん正直!!

好君もう中学3年だよね?

反抗期無くて嬉しいなぁ兄ちゃん。

そっかぁ~~嫉妬してるのかぁ~~ならしょうがないよね~~。

玄関先で繰り広げられたこのアバンチュールを、俺は一生忘れない。

後たまにこれ・・・やってもらおう。



翌日、俺は1週間ぶりに学校へとやって来た。

廊下ですれ違う生徒が俺を微笑ましく見ている。

教室に入るとみんなが一斉に駆け寄ってきて、お帰りやらごめんねやらと口々に浴びせてくる。


「いや良いってもう」


そう言うとみんなは更にヒートアップして俺を称賛する。

だが代を犯人呼ばわりした女、てめぇはダメだ。

後1週間はゆるさん!!

と思ったところで


(あれ?代はどこだ?)


周りを見渡して代を探すが見当たらない。

お手洗いにでも言っているんだろうか?

そう思い、久々に自分の席へと座る。


「ん?なんだ?」


座ると同時に机の中から手紙のようなものの端が見えているのに気づく。

それを手に取ってみると・・・


「新聖啓君へ?」


俺宛の名前が入った手紙。

ここまでくれば嫌でも頭が理解する。

これは・・・


(ラブレターかよ!?)


まさか俺がこんな代物を貰うなんて!

しかも謹慎が明けた直後だぞ!

モノ好きがいたもんだな・・・。

けど悪いが丁重にお断りさせていただこう。

俺には・・・


「代という親友がいるからな」


もちろんそんな事をそのまま伝えることは出来ないので他に好きな人でもいるとでもいっておこう。


「にしても代の奴どこ行ったんだ?」



この日結局、代は授業に姿を現す事もなく、俺はただただ心配で仕方が無かった。

後なんかみんながニヤニヤしていたのが気持ち悪かった・・・。

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