第8話「まさき」という人

お気づきの人はいるだろうか?……って、そんなわけないか(笑)



2作目から、私の書く話の中には、「まさき」という人がどこかで登場している。


なぜだか、どういうわけか、私の人生の所々で、「まさき」という人が現れる。


それを意識し始めたのは、ここ数年のことで、偶然かかわった人が、


「あ、また、まさきだ」……ということだ。



小学生の頃、はじめて男の子に好きだと言われた。


それが「まさき」さんだった。


当然、その頃はその名前に特別な感情はなかった。


中学生になり、はじめて隣の席になった男の子、


それも、「まさき」さんだった。



その頃からやたらとまとわりついてきた男の子がいた。


それも「まさき」さんだった。



そして、それも偶然だろうが、同じ誕生日の男の子がいた。


まさしくそれも、「まさき」さんだった。


中学2年の時、日直だった私はクラスのみんなのノートを抱え、


職員室から教室に戻る渡り廊下で躓いて、


手に抱えたノートを何冊か落としたことがあった。


その瞬間、駆け寄ってきた一つ年上の先輩が、


「大丈夫?」と言いながらノートを拾い、抱えたノートの上に重ねてくれた。


「ありがとうございま……」


顔を上げ、お礼を言いながら目に留まった名札に書かれていた、その名前が


「まさき」さんだった。


小さな恋心が生まれた瞬間だった。



どうやら「まさき」という名の男の子がたくさんいたと思われた。


けれど、それだけ偶然にも「まさき」という名の人が現れると、


「まさき」という名前だけで、なんとなく特別感を感じるものだ。


が、女子高に行った私の周りから、数年間、「まさき」さんが消えた。



大人になり、苦悩を抱え不安な生き苦しい日々の中で出会った人がいた。


その人は、出会ったときにはもちろん「まさき」さんだとは知らず、


名前が「まさき」だと知る頃には、もう心を動かされていた。


私の人生に彩を与えてくれたその人は、今、苦悩の日々を生きている。


私にずいぶんと救いを与えてくれたその「まさき」さんの、


少しでも力になれたら、少しでもその心を癒せたらと思ったのだけれど、


そうしたいときには「まさき」さんは私を必要としない。


いや、少しは必要としてくれた時間も確かにあったと思う。


そして、少しだけ、力に、癒しになれたとも自負している。


けれど、今、「まさき」さんはいない。



いつも人生の所々で現れた「まさき」さんとは、


いつも恋愛対象にはならない。


きっと、「まさき」さんは私の中では指針のような存在かと、


そう思うことがある。


いつも私の心を動かしてくる「まさき」さん。


だから、私の書く話の中でも重要な役どころになってもらっています。


この先の人生で、私はまた「まさき」さんに出会うのだろうか?


その時、苦悩を抱えていないことを、切に願う。


そして、出会った人が「まさき」さんだと知るのは、出会った先でいい。


いつもそうなのだから。


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