第12話 「存在」を作る

 小説を書くにあたって、まず最初に悩むことの一つに名前があります。


 いま書いている「私が知るあなたの知らない私」で主人公の名前を考えた時、主人公がブログをやるということで、そこで使うハンドルネームをまず考え、そこから名前を当てた感があります。


 それは、もう一人の主人公の真崎直人も同じで、名前のようなハンドルネームから名前を連想できるような、そんな名前を考えました。真崎直人に関しては、ブログの中で「自分が誰なのか」知っている人が読んでも構わないというスタンスでやっているという設定だったので、こういう名前の考え方になりました。


 寺井愛美はその逆で、いずれMASATOである真崎直人に自分の名を明かす、それも本当の名前だと嘘をついて名乗ることを考え、そして自分を知る人にブログの存在がバレることがないようにというつもりで、文中にも書いたように、あいうえおの「あい」で、AI《エーアイ》の「あい」で、愛するという意味の「あい」ありきの名前を考え、愛美という名前にしました。そして話の設定上、「同じ名前」を使う人が途中から現れるという部分にも対処しなければならないので、こうなりました。


 今まで書いたお話の中で、ここまで付ける名前に拘ったのはこの2人だけで、それ以外は、例えばテレビを観ていてちょうど目に留まった人の名前を一文字いただいたり、今まで知り合った人たちの中から名前を考えたりと、自分と接点があった人と全く同じの名前を使ったことはないのだけれど、それぞれの一文字を組み合わせてなんてことはあります。


 登場人物の名前を考えるって、本当に難しいなと思っています。


 経緯はどうであれ、そうして「名前」をつけ、それぞれの人物像を考えながら書いていると、その人が自分の中でまるでそこに本当に存在するかのような錯覚に陥ることがあるから不思議です。


 自分の中で、一人の人間が出来上がる。


 大袈裟な感じで言うと、そんな感じです。


 生きた存在のようになるという意味では、自分が書いたものだけでなく、今まで読んできたお話の中でも同じで、その人がどんな人なのかを読み解きながら読んでいくことで、そこに本当に存在しているかのように読んでしまいます。


 と、なにが言いたいのか混乱してきましたが、小説を書くことって、そこに「存在」を作ることなのかなって、そう思ったということでした。



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