第弐拾陸話―復讐の鬼になる前の記憶―

ガロンがまだ復讐に取り憑かれる2年前、辺境の地にブナルウ村があった。そこにガロンダーラは住んでいた。


「コホッ、コホッ」


「大丈夫かいアナベル?」


「ええ、ありがとうガロン」


苦しそうに咳をするのは、アナベルという女の子。年齢はガロンより一つ下の16歳。容姿は、白磁な肌と透き通った黒曜の瞳は、見とれてしまうほど美しいさの印象。

つややかな長い黒髪も相まって幻想的なほど容姿だった。そしてアナベルは病でとこに伏している。


「いいよ、どうせひまだったから俺でよければいつでも話し相手になるからさぁ」


「フッフフ、本当にありがとうガロン。こんな、わたしなんか気にしてくれて」


「違うよ、アナベル。俺は君を大事な人だって思っているんだ。

そんな自分を低く見るのは良くないよ」


「うん、そうだね。えっへへ、ガロンって少し元気になれた気がする」


「そうなの?それは良かった。

アナベル体調はどうなんだい?」


「・・・うん、平気だよ・・・・・それよりも今日も聞かせて、ガロンあなたの過去を」


「・・・ああ、解ったよアナベル。

そうだな、俺が料理を作った話しなんだけど」


ガロンは知っていた。アナベルは長くない命だと。だからこそ、彼女を最後を訪れる前にたくさんの事を話をして思い出を作ろうと決めていた。毎日こうして話すだけでも楽しくて仕方なかった。


他愛のない話でも軽いケンカでもいい思い出と二人は感じていた。

ガロンはアナベルに懸想けそうを抱いていた。そしてアナベルもガロンを好意を抱いていた。

しかし、二人は想いを伝えるのが恐くこの関係が壊れそうで前に行けなかった。


「フフ、本当に料理が好きなんだねガロンは」


「そうかな?俺だって面倒くさくなったら作らない多いけど」


「それじゃあガロンってガサツなのかな?」


「うっ、否定はしないけど・・・

けど安心してくれアナベルの部屋はいつも綺麗にしているから!」


「もう、そんな事までしなくてもいいのに。外に出るのままならない、わたしでも掃除ぐらいはできますよぉーだ」


「はは」


「フフ」


このひとときをずっと続けてほしいと二人は切実に思うのだった。


「ねぇ、ガロンそろそろ約束の時間じゃないかな?」


「えっ?もうそんな時間なのか!?ごめんアナベル、また会いに行くから」


「うん、待ってるよ。

行ってらっしゃいガロン」


優しい笑みを向けるアナベルは手を振って見送る。歩くだけでも、やっとの彼女は布団から動けずに

ガロンが見えなくなるまで微笑み続ける。


「・・・わたしもあと長く生きればなぁ」


ガロンがいなくなるとアナベルは弱音をいつも呟く。もし、身体が強ければガロンの隣で歩いてみたい。そんな些細な夢も叶えてくれないのが現実だった。


「うっううっ」


アナベルは一人嗚咽をする。

ガロンの方は後ろ髪を引かれる気持ちで後にした。少し振り返ると

少し大きい家がアナベル。両親はガロンと同じく幼い頃に亡くなっているから、悲しみはなかった。

物心をついて亡くなっていたら、悲しみはあったとガロンは考え想像して鬼がまだらな道を歩く。


(いつも引き返したくなるのは、たとえじゃなく儚くて消えてしまいそうだ)


アナベルが、霧の中に消えていくのをいつも悪夢を見てしまう。

だから、こうして朝早くから会いに行っている。


「ガロンじゃねぇか」


「おい、ガロン!」


ガロンの名を呼ぶのは、派手めな格好した鬼が二人。一人は筋肉隆々の白い髪のいかにも乱暴そんな鬼と、もう一人は水色の髪をした鬼。どちら角の色は黒、鬼族で最も多い色が黒色。


「ダイ・・・マックス・・・俺に何か用かい?」


「今から剣の鍛錬から付き合えよ」


巨体のダイは、横暴な態度でガロンに命令するように言葉を発する。


「ありがたく思え!」


水色の髪をした中宅中背のマックスも偉そうに言葉を発する。


「その、タクト達と約束しているから今日はごめん」


「鬼は戦いの中で喜ぶものだ。

これはお前のために言っているんだぞ!断るなんて偉そうだぞ」


「ガロンのくせに偉そうだぞ!」


「そ、そうは言われても・・・

せめて明日なら付き合うよ」


短気な二人を怒らせてなんとか鎮めようとするガロンだが、おとなしくしてくれる雰囲気でさなかった。木刀をガロンの鼻の前に付き出す。


「いいから、鍛錬にきやがれ」


「きやがれ!」


「おいおい、ダイよ。いくらなんでも横暴すぎるじゃないか?」


「そ、その声は!」


「声は!」


ダイとマックスが振り返ると、長身の青年が長い槍を肩に乗せていた。長い黒髪を後ろに束ねた凛々しい美少年。年齢はガロンと同じ17最で村一番の槍の使い手。

珍しい赤い角を生えている。


「俺と約束しているんだ。

鍛錬なら相手になるぜ。

まぁ、すぐに終わるだろうけど」


「タクトじゃねえか!クソッ、」


「クソッ」


苦々しい表情で二人は、去っていく。颯爽さっそうと現れ助けたのはタクトは、ガロンの幼い頃の友人であった。


「大丈夫かガロン」


「助かったよタクト。迷惑をかけてごめんよ」


「別に構わないよ。今日もアナベルを会いに?」


「そうだよ。でも、よく朝早く起きれたね」


「・・・あのなぁ、俺が朝が遅いのは否定しないけどよ。もう昼だぜ!」


「はは、朝が弱いのは否定しないんだね」


「はは、今さらだからなぁ。

ほら、早く行かないと俺がガロンを遅らせたってマヤに怒鳴られる」


「そうだね。早く行こうか」


待ち合わせ場所の入口に駆け足で行く。タクトはガロンの走る速度を合わせて走っている。

指摘すれば、なんの事だ?ととぼけるだろう。


「あっ、やっと来たわね二人とも」


太陽の光でいつもよりも黒髪は光沢感を出すボブヘアーのした美少女。瞳の色は琥珀色こはくいろ、角の色は青色。活発なこの美少女が、マヤである。ガロンとタクトの幼馴染である。


「わりぃ、わりぃ。早く行こうぜ急かしてもガロンが、準備に手間掛かってよ。なので全面的に悪いのはガロンだ」


「えええぇっーー!?で、でも

そうなるのかな?」


「嘘はいいわよタクト。優しいガロンが受け入れようとしなくてもいいのよ。このバカ脳筋!

つまらない嘘なんかつくんじゃないわよ」


「えぇーー!何この扱いの差は!?」


「日頃の行いでしょうね。

ボクを騙すのは無理なんだから!」


「マヤ落ち着いて」


ガロンに穏やかに済むようにとりなす。マヤは、タクトに辛辣しんらつな言葉をまだまだいい足りないほどだったがガロンが止められると嘆息する。ブレーキのガロンの言葉に従うことした。


「ガロンに感謝しなさいよ」


「はっはは、ガロン様の慈悲深さに感謝いたします」


大袈裟おおげさだよタクト」


三人は独特な諧謔かいぎゃくを交えるほどに仲がいい。


「あはは」


変わった挨拶と話題にマヤは笑う


「はっはは」


マヤに釣られてタクトも笑う。


「ははは」


二人が笑うと、突然おかしくなって笑い釣られるガロン。


「それじゃあガロンが来たことだしノルンに行こうぜ」


「そうね。遅れたタクトが言う資格はないけど」


「はは、辛辣だよマヤ。本当に遅れた原因は俺なんだよ」


「えっえぇぇ!?め、珍しいわねガロンが約束の20分前に来るのに」


ガロンの言葉にひどく驚くマヤ。

その過剰な反応にガロンは苦笑をこぼす。


「ちょっと待て!本当になんなの、この雲泥うんでいの差は!!」


改革は今日も叶わず三人は村を出て自由貿易都市ノルンを目指して歩き進む。辺境な地のプナルウ村は簡単に迷ってしまう森。土地勘がある地元の鬼である三人は

迷いなく進んでいくけど、魔物の接敵は避けられない。


「赤いスライムと黄色スライムねぇ。どうガロン戦えそう?」


4体のスライム出現にマヤはガロンに怖じ気ついていないか心配して問う。ガロンは最弱クラスのスライムにおののくが、マヤから借りた二刀を構える。


「ああ、戦えるよ」


「スライムは弱いと言っても、

攻撃はしてくるから危なくなればすぐに援護するから安心して戦うといいぜ」


タクトはガロンの強張った顔立ちを見てあまり力まないよう諧謔を入れた激励をする。当時のガロンは二槍ではなかった。


「よし!これぐらい倒せるようになってみせる。はああぁーー!」


「!!」


赤スライムはガロンに気づき攻撃しようとする。視界はなく戦闘の際には物音で判断して攻撃してくる。ガロンは、突進の秘技ストライクソードを放つ。真っ直ぐ猛進して二刀での袈裟斬けさぎり。


「!?」


ゼリー状が粉砕。赤スライムはられると緩い爆発みたいな起きる。


「や、やった!」


「やったわね、ガロン」


「おぉー、ようやく倒せるようになったか」


二人は勇気を振り絞ったガロンに拍手して祝福する。

鬼人なら闘争本能が強弱とあるが時代が経つに連れ必要性も機会も減って高くない。

鬼人なら子供でもスライムを倒せるのが当然、されどガロンのように闘争本能が皆無に等しく生まれる例もある。


「よし、次もこの調子で!」


それからガロンは、スライムを倒す。二人は手助けなくガロンがスライム倒せたことに喜ぶのだった。そして、代わり映えの無い木々と高く密集したこずえの隙間から陽光の下を歩く三人の鬼人。


「ねぇ、やっぱりガロンってアナベルのためにさっきのスライムを倒せるようになったと思いますかな?」


「いやぁー、そうに違いないなぁ。これが愛の力か・・・若いって

素晴らしいですなぁ」


「いや、二人とも俺と同い年だろ。それに、愛の力じゃないから!」


ガロンの戦いに背後を歩いていた二人はアナベルのために頑張ったと思って憶測を並べて盛り上がっていた。聞いていたガロンは叫んで突っ込むが二人は爽やかに笑っている。頬を赤くなったガロンは足を早める。実際にその通りなので強く否定はできない。


ガロンは少しでもアナベルを心配させないために色々と陰で努力していた。今までは戦うなんて努力もしていない魔物を倒すのも。


「ごめんねガロン。ボク達、少しからかってしまったよ」


「そう怒るなよガロン。

怒ってばかりだと、マヤみたいに口がわるくなるじゃないか」


「あんたは永遠に黙ってなさいよ」


右の失礼な発言者に鉄槌とマヤは得物の二刀を抜刀して、斬ろうとする。


「ちょっ!あぶないだろ!!」


後ろにジャンプして避けるタクトは冷や汗を流す。マヤは二刀流の達人でもしかすると村一番の実力者とも呼ばれる。


(早く帰ってアナベルに会いにいかないとなぁ)


騒がしくなる二人は、いつもの光景なのでガロンはとくにツッコミもしなかった。

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