第弐拾漆話―うつけの三人―

「ふわぁー、眠たい」


野宿したガロン達は、朝食を済ませ再び歩き始める。鬼人は野宿やサバイバル生活を慣れるため

小さい頃から学ぶ。

あくびを大きくこぼす長身で眉目秀麗びもくしゅうれいのタクト。


「だらしないわよタクト。起きたばかりなのに気が抜け過ぎなのよ」


「わぁーてるよ。でも、ただの旅行みたいなものなんだから、ゆっくりしようぜ」


「ごめん、タクト。俺は少し急ぎたいんだ」


タクトのいつものぼやきに、マヤが怒鳴るよりも早くガロンが苦笑して早く歩きたいと言葉をした。

タクトとマヤはガロンの発言にどうしたのか首を傾げるがなんて事ない。ガロンのわずかな焦燥感しょうそうかんはアナベルが寂しそうに待っていることだと

答えに至る。


「そうだな、少し早く行くか。

身体が動かしたくてうずうずしてるぜ」


「ボクは、隣のうつけと早く解散したいから目的地につきたいわね」


「はっはは。なんたか気をつかせてごめんよ。タクト、マヤ」


「何のことだ?」


「ボクが気を使うように見えるの?」


「うん」


「見えない」


「よし、タクト。ボクは今から斬る。斬りたくないなら全力で逃げることだよ」


そう言うとマヤは抜刀。二刀を閃きタクトは直感で避ける。少し間違えると斬られる。素直に見えないと答えを返したら、斬撃を持って返答となった。


「うおぁーー!?この

サディスティックがあぁ!!」


「待ってぇぇーーー!!」


「あ、あはは仲がいいよね二人は。でも、マヤ危ないからやめた方がいいと思うよ」


ガロンが困惑しながら苦笑する。

マヤは剣を振り回すがタクトなら避けるだろうと根拠のない信頼で遠慮なく振り抜いている。

オーガの領土を避けて亜人の領土に経由して自由貿易都市ノルンへと入国した。


「うわぁー、里から出ると実感するなぁ店の数が」


タクトは娯楽施設や商業施設などの多さに圧巻する。


「そうよね。武器屋によれば業物わざものなんてゴロゴロ売っているわけだし」


年頃の女の子であるマヤは、武器屋に飾られている剣などに目を輝かせている。ガロンは目的の品物を購入したらすぐに里に帰るつもりだったが、物見遊山する機会もなかなか無いのも事実なので、

友人の興味を向くお店に寄ろうと決めるガロン。


「二人とも折角せっかくの機会だから、のんびりと見て回ろう」


「ガロンよ。その提案は却下だ」


ガロンの提案を一蹴したタクト。

ガロンとマヤは突拍子のないタクトの発言に驚くことなかった。

ガロンは微笑み口を開く。


「その心は?」


「ちげぇーよ。なんだよその急な振りは!いや、そうじゃなくて

別行動した方が早く済むってことだよ」


「へぇー、まともな提案が出来るのね」


「よし、マヤが俺の評価がとんでもなく低いことは分かった。

それで、どうするガロン?」


タクトとマヤはガロンの言葉に決めるつもりだった。よく、迷ったら最終的か判断はガロンと自然となっている。


「そうだね。お互い行きたいところ全部、回るのは厳しいだろうからタクトの提案で」


「だな」


「そうね」


この答えを返すのが解っていたタクト、マヤは首肯する。

ガロンは一刻も早くアナベルに会いたいと自分で考えているよりも想いは募っていて強い。

三人は別々で回る流れになった。


「じゃあ、またここで」


タクトは、さっそく美味しそうな

匂いを漂っている食堂に足を向けようとする。


「ストップだよタクト。夜の八時にここで集合で」


ガロンは合流地点を決めても時刻を伝えないと考えタクトを呼び止めて時刻を伝える。タクトは、早く行きたい言わんばかりに足を動かしている。


「解った」


「合流時間は?」


マヤは聞いていたか疑い訊いてみる。


「えっ?午後八時だったと思う」


「そうよ。でもうろ覚えしていたよね」


「ああ、そうだな。で行っていいかガロン」


「ああ、もういいよ。じゃあ、また後で」


「また後で!」


喜色満面な表情になってタクトは商業施設と娯楽施設がある道へ一直線に向かっていた。ガロン苦笑マヤはため息をする。


「あれじゃあ食べ回るつもりねぇ。それじゃあ、またねガロン」


「ああ、またマヤ」


それぞれ珍しい物を巡ってゆく。

時は流れて夜のとばりが下り集合時刻にガロンとマヤが戻ると一悶着ひともんちゃくが起きたが何とか解決して旅籠はたごに泊まる。日が昇った自由貿易都市ノルンを出て険しい道を徒歩で歩く。


「楽しかったノルン。

また、行きたいものだな」


「いざこざ起こしたあんたとはボクは行きたくないからね」


感慨深くなったタクトが、爽やかにそう呟くとマヤがタクトとは

同行したくないと言葉を返した。


「むぅ、相変わらずの冷酷な奴め。たまにほ野郎どうしでガロンはどうだ?」


「え、えーと・・・」


「ま、まさかガロン。お前もか!」


集合時刻になかなか来なかったタクトを探す羽目になったガロンとマヤはタクトを見つけた時を振り返ると、また行こうなどと軽はずみな約束は出来ない。

談笑をして三人はプナルウ村の門をくぐると見覚えある人物が二人。


「おう、帰ってきたか」


「どうやら無事に帰ってきたみたいね」


「おぉー、父よ母よ。出迎えご苦労」


タクトは、大きな態度で自分の両親に上司のような態度をとる。

ちなみにタクトの奇抜な態度にはガロンとマヤも慣れていて無言。


「お前は相変わらずだな。ともかくタクトの奴が迷惑かけなかったか?」


タクトの父親ガブは笑顔でそう

尋ねる。


「いえ、そんな事はありませんよ」


「遊んで探す羽目になって大変でした」


ガロンはタクトを気を配り何も起きていないと答えるが、マヤは

素直に答える。それでもマイルドな方であった。


「すまねぇなぁ、マヤちゃん。

あまり迷惑を掛けるなよ」


「はい、はい」


ガブの注意に雑に答えるのがタクト。


「ふふ、タクト。後で話があるわ」


「あ、ああ」


タクトの母親であるフェアは笑顔だけど目が笑っていなかった。

飄々ひょうひょうとしたタクトもこれには恐かったようだ。

後でどんな風に怒られるかガロンとマヤは知らないが気の毒そうに息子を見るガブ。

タクトの両親と別れて三人はアナベルの家に上がる。アナベルの部屋は本棚が多く絶版した本なども置かれている。


「おかえりなさい。

ガロン、タクトさん、マヤさん」


上体だけを上げたアナベルは、

微笑を浮かべ歓迎した。


「ただいまアナベル。体調は?」


「心配しなくてもすぐに悪くならないから、平気だよ。

自由貿易都市ノルンに行ったのよね?」


「ああ、あらゆる種族の文化が混ぜって発展したと謳われるだけはあったよ。そのおかげで・・・ほら」


ガロンが買った袋から取り出すのはヴァンパイアが愛用する高級感のあるマグカップと紅茶に髑髏ドクロの水晶の骨董品こっとうひんなどを布団の近くに並べて置く。ガロンが自由貿易都市ノルンに訪れた理由の一つがアナベルが喜びそうな品を上げることだった。


「わぁー、すごい。これなんだろう。水晶のドクロ?」


「うーん、それ俺も分からねぇ」


「ボクも同じく」


「そして、買った俺も魅力的だつたけど何故か買ってしまった」


様々な名産物を見て触れてみて笑顔になっていくアナベルをガロン達は来た甲斐があったと思った。

タクトとマヤは完全に私欲が強かったが。


「アナベル、気に入った物があったら、好きな物を選んでほしい。どれも安かったから」


購入したガロンしか知らない事だがどの品も高い物ばかりだった。

当分の食事を雑草を強いられるほどに使い果たした。


「えぇー、でも悪いよ」


「気にしないでくれ。アナベルが欲しい物があれば俺も嬉しい。

それに、価値もよく分かっていないから博識のアナベルが欲しいのあればいいんたけど」


アナベルは、さりげなく褒められた事に頬が朱色に染まる。

それを見たタクトとマヤは傍観することにした。二人だけの世界を割り入るわけにはいかないと。


「それじゃあ、これと、これが欲しいかな」


「解った。ここに飾るけどいいかな?」


ガロンは珍しい家具をアナベルの部屋に置く。

次に取り出すのは本だった。


「す、すごい。サインされた本や別種族の本が!?」


「へへ、すごいだろ。なかなか苦労したよ。他の種族にも作家がいて本を書いているんだなぁ。

まさしく自由貿易都市ノルンだからこそ出来ることだな」


アナベルは本の数々に目をキラキラと輝かせ近畿雀躍きんきじゃくやく、喜んでいた。

新しい本を本棚に収納し終えると

タクトとマヤが腰を上げて帰宅しようとした。


「ボク達は帰るよ。二人とも楽しんでね。それじゃあ」


「二人とも素直になれよ。じゃあなぁ」


手を振って二人が家を出ようとする。


「んっ?じゃあ」


「お元気でお二人さん」


二人は部屋を出る。しばらくしてドアを開く音がした。玄関ドアを開く音をしたのはタクト、マヤだと分かっていたので、ガロンはこのあとどうしようと考察する。


「ガロン少しいいかな?」


アナベルが手を差し向けられた。その華奢な手を握り立ち上がられる。


「いいけど?」


「よかった」


ガロンはマヤについていき縁側に座る。その後は静かに緑茶や和菓子を持っていきアナベルの隣を座った。


「ガロンありがとうね。色々と気を使わせてしまって。ありがとう」


「いや、好きでやっていることだから。お礼するほどじゃ」


「ガロンって不器用だね。

すごーーく、優しいのに」


「はは、真正面で言われると恥ずかしなぁ」


ガロンは自由貿易都市ノルンに向かった一番の目的はアナベルを治療してくれる人であった

しかし見つからず参考になるよつな意見もなく諦めて途方もなす歩いたのが懐かしくなる。

この平和がずっと続けられると思っていた。しかし、終焉は突然と訪れた。

燃える村。ガロンは走る。


「はぁ、はぁ・・・」


ガロンは逆の道である場所へ向かう。それはアナベルの家に。


「まだいたか」


天に空を飛ぶ男。記憶が曖昧で

上手く説明できなかった。


「早くいけガロン!」


「―わ、わかった」


ガロンは走る。アナベルの元へ。


「まったく、これが最後なら一声をかけるべきだったかしら」


マヤはそう言い放つと相棒のタクトが不敵に笑う。現れる魔物の数々。死屍累々ししるいるいと化したプナルウ村。

知り合いが、地を流れ絶命している。心を痛め二人は猛進する。


「アナベル!」


ガロンはなんとか奇跡的にアナベルの家にたどりつき逃げようとする。


「ガ、ガロン!?」


「村は焼かれている。早く逃げよう」


「う、うん。わかった」


アナベルはガロンに手を惹かれて森に逃げようとする。


「っ――!?ガロン今まで、ありがとう」


そう言うと、アナベルはガロンを押して斜面に転がり落ちる。

そしてアナベルは笑顔と頬から落ちる涙を見た。そして煉獄れんごくの焔が爆発が起きる。

そこにはいるのはアナベルで爆発しめから逃げないと。


「あぁ・・・・・アナベル!?」


その前にガロンは煉獄の焔で吹っ飛ばされるのだった。

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