第弐拾伍話―凍結の世界―

窮地に落ちた。

ガロンはそう思ったのは氷のアンノーンオーブを使うとしか情報のみしか知らないアレンが訪れたのだ。


不敵に笑い、好戦的で有効的な対話など望めないだろうと一目で分かる。情報収集してから奇襲など仕掛けようと策を巡らしていた相手だ。


(まさか、逆に俺を奇襲を・・・

いや、なら冷気なんかを出してまで察知する必要性はない。なら、何が狙いだ)


わざわざ探して見つけてくれと言わんばかりな能力の使い方にガロンは訝しむ。アレンの背後に二人の男女がいるのはバサラとサラシャ。


「あれがソウガをやった鬼よね。

気をつけてよアレン」


「心配はいらないよサラシャ。

オレはやられないさぁ」


サラシャの忠告をアレンは杞憂きゆうだと自信にあふれた発言をして笑顔を見せる。振り返ったアレンの根拠のない言葉にサラシャは形容し難い安心感になる。


「あぁー、熱いことで。

だけど、続きだぞ。相手はソウガを倒した奴なんなら警戒をしろよ」


バサラはアレンとサラシャの派手な二人よりも地道に見えるが、纏め役で作戦など考えるのは彼である。実質的の筆頭格の彼は剣を抜き中段で構える。


「ああ、分かっている。

油断なんてしていない」


「それ本当に」


「サラシャが疑うのも仕方ない」


散々な言われよう出会った。一触即発な重たい空気が漂っていたのが一気に霧散した。


「・・・・・いったいなんだアイツら?」


「ガロンさん・・・わたし、あの人を見たことかあります」


ガロンの隣に駆け寄った内ケ島椛葉はそう言った。誰のことかなど確認しなくとも誰を指すのか一人しかいない。氷柱つららを剣の大きさで浮遊させている黒人の少年しかいない。内ケ島の言った言葉は垂涎すいぜんだ。


「それは、本当か?」


視線をアレンらに向けたまま小さく事実か問いに内ケ島は頷く。


「はい。わたしが転生してから少ししか会っていませんが・・・あの人はアレンさんだったと思います。チート能力は氷を自由に生成させる力です!」


「氷を自由に・・・か。それで、氷の剣か氷柱があるわけなのか」


数は少ないが浮遊させて維持させている。それだけで魔力の消費量は少なくない魔力を使用しなければならないが、アンノーンオーブにより常軌を逸した現象を起こしているとガロンは曖昧ながらも核心に近い推測していた。


実際は有馬颯牙のアンノーンオーブである煉獄の焔である自由に扱え魔力消費は無し。


アレンのアンノーンオーブも同じく魔力消費が皆無である。

似た二人の差異と言えば属性が焔と氷の対極であることと、有馬颯牙は大火力と広範囲を放つこと。

アレン・アルバートは氷を集結させ攻撃として用いる。


「情報が少ないが戦うしかない!アンノーンオーブは使えるか」


ガロンは背中に背負った二槍を掴み出して構える。


「はい!ガロンさん行きます」


内ケ島椛葉は念じる。アンノーンオーブの絶対なる聖域を2度目を展開させる。状態異常を回復と無効の魔法陣。その光の下にいる間は。そしてガロンは疾風迅雷を発動させアレンに接近しようと――


「なっ、これは先程の!?」


「これがオレのチート能力だ。

好きな場所を凍らせることができ回避は絶対不可能だ」


ガロンの足元から凍りついていく。まるで、呪いにかけられ凍結していくように。


アレンはうそぶいた。


原理は無詠唱で発生させるミリメートルより小さいマイクロメートルよりもさらに小さい1ymヨクトメートルほどの吹雪をガロンの足元に放った。使った本人さえ見えないレペルの吹雪を起こしガロンの足は突然、凍ったように見えた異能の正体。それを正直に語らずあらゆる物体を凍らせると真実を伝えず偽りの語りで相手の戦意を失わせる狙いがあった。


「くっ、そんなデタラメな力が!」


「存在する。それがチート能力って奴だろ。諦めて、おとなしく捕まれ鬼人」


「断る。俺は必ずおまえを倒す」


「そうかよ。なら、全身を凍らせてもらうぞ!」


目視不可能の吹雪が舞いガロンを凍結させんと猛進する。


「ガロンさん!」


ガロンの仲間である内ケ島は内に秘められし力を再び解き放つ。

絶望なる聖域が出現させガロンの足元をパキンと氷だけが壊れていく。ヨクトメートルレベルの吹雪を受けても凍結はしなかった。


「勝負だアンノーンオーブの使い手!!」


ガロンは駆ける。


「クソッ!どうなっているんだ。効かないって!?」


掌を向けて凍結させるとするが、

何故か一切、凍らないことにアレンは内心、焦っていた。今まで、そんな相手がいなかったのと、ガロンの疾風迅雷が早く対処も遅れる。


「はあぁぁぁーーー!」


襲撃に備えた浮遊させている氷の剣も移動してガードするには間に合わない。


「くっ、間に合わない!?」


攻撃をする瞬間に疾風迅雷を高めて加速させる。ガロンのニ槍が上からナナメにX状に叩きつける。

赤い甲冑は悲鳴を上げ、形は変形してひしげる。鎧ごしからもダメージはあった、内蔵と骨にまでダメージがあった。


「がっ!」


「ガトリングランサー」


槍術の秘技、ガトリングランサー。18連撃の遮二無二と素早く突き技。通常は18回、しかしニ槍の使い手であるガロンは胆汁計算の2倍にした36連撃となる。


「はあああああぁぁ」


「ぐっ、があっ!?」


高速の突き攻撃にアレンは防御を出来ずに受け続けられる。

凍結が出来なかった動揺を隙をついて怒涛どとうの攻撃。

すべて命中させると、秘技を使用後の停滞が訪れるが、疾風迅雷を発動したガロンの身体は世界の速度を別の時間にいる。時間を早めた思考と身体。秘技を使用した

停滞は終了してアレンの鳩尾に右足をつけてジャンプの要領で蹴り後ろへ距離を取った。


「ガロンさんすごいです!あの人は?」


「安心しろ。まだ生きている」


一瞬の出来事に対応が遅れたバサラとサラシャの二人は膝をつくアレンに寄る。


「だ、大丈夫アレン?」


「おい!傷は?」


「がはっ!さ、さすがに攻撃を受けすぎたかな。痛くて仕方ねぇよ」


血反吐を吐きよろめきながらも立ち上がるアレンは、ガロンを睨みつける。


(なんて、奴だ。オレの攻撃を聞いていないだと。こんな敵は今までいなかった)


「やばいなぁ。オレらだけで勝てるか分からなくなってきたぜ。

はっはは」


想像よりも強い相手にアレンは笑みをこぼした。強敵と交えた喜びと勝ってない絶望感を同時に味わった笑みでのやけ。


「けど、私達がいる。だから頼って」


「そうだぜ」


「・・・ああ、そうだな。二人とも任せたぜ。氷結の武器テンペストを使う」


アレンは両手を青空の天に向けて

異能を解き放つ。激しく舞う吹雪。吹き荒れる雪は頭上に氷の武器を生成していく。剣、槍、ハンマーなど多種多様。


「次はこれを受けろーー!」


「なっ!?」


ガロンは息を呑むのは複数の武器が生命のように動き始めガロンと内ケ島を貫こうと数多の武器が動き始めた。


「くっ!これを一人で止めろというのか」


(もし、避けたりすればアイツに当たる。対処をすれば呆気なく討たれる)


「ふんっ!」


森の奥から矢を放ち氷の剣を矢で破壊する。高い威力と命中制度であった。


「手助けするぞガロン!」


ガロンを援護したのは青い角した偉丈夫の鬼人イーブルであった。

彼は屋根の上に立ち氷の武器を次々と破壊していく。


「助かる。はああぁぁーー!!」


ガロンは狙ってくる武器を粉砕する。薙ぎ剣、槍、矢と破壊する。

反対の槍で地面に叩き落とし鉄槌を粉砕させる、。疾風迅雷を最大にして武器の嵐を最後となると。


「今です。やあぁー」


気が抜ける声で放ったのは内ケ島がガロンに借りた改造の篭手で毒矢を放ち矢を破壊する。


「これで最後か?」


イーブルはガロンの近くに着地ちゃくちしてそう問う。


「ああ。だがまたすぐに来るだろう」


「はは。それは恐ろしい事だ。

それで勝算はあるのか?」


「正直に答えると分からない」


「あははそうだよなぁ」


「それよりも、イーブル。俺達に手を貸して良かったのか?

相手はアンノーンオーブだぞ」


「なるほど、あれが。それと手を貸すのは俺の勝手だ」


一騎当千の戦果を上げ、単独で大軍を殲滅させる世界最強の存在と誰もが知る知識。そんな神に等しい存在に近い認識されている相手にイーブルは武者震むしゃぶるいする。


「そうか。危なくなれば逃げろ」


ガロンは素っ気なく言葉を返す。

途中からの参加となったが、人数は同じ三人。負傷したアレンと、戦えば勝機は十分ある。ガロンは

疾風迅雷を駆使して突撃しようと

地面を蹴る――転倒した。


「ガ、ガロンさん!?」


「背後か、誰だ!」


「ようやく、復讐が果たせることができる」


ガロンの背に矢がさされていた。

射抜いた狙撃手はエレナであった。内ケ島は銀髪のエルフと騎士達を見ておののく。挟撃きょうげきされた。


「あ、あなたは!」


「何を脅されたか分からないけど、今なら安全だわ。こっちに来なさい!」


エレナは、鬼人と同行している内ケ島を脅迫されていると決めつけていた。


「出来ません!ガロンさん大丈夫ですか」


「はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・

ああ。それよりも、この数は厳しい過ぎる。敵はおまえを被害者か何かと勘違いしている」


ガロンは刺された背中の矢を抜き投げ捨て立ち上がる。


「そのようですね。でも、わたしも戦います」


「いや、おまえはすぐに武器を捨て保護をしてもらえ。そうすればおまえは助かる」


「ガロンさん?なにをいって―」


「この戦力差じゃ、勝ち目はない。俺の事は諦めろ」


ガロンは負傷して、立つのがやっとだった。疾風迅雷を使っても傷が原因で素早さを活かすことは

難しいだろう。仮に出来ても前はアレン一行が、背後に有馬颯牙のパーティであったエレナ一行。

絶体絶命の戦況。せめてガロンは

内ケ島椛葉だけを救おうと考える。


「い、イヤです!わたしは、ガロンさんといると言いましたよ。

絶対に!」


「何を勘違いをしている。俺はおまえを仲間だと一度も思ってなどいない。使い勝手のあるこまだと思っている」


「ガロンさん」


内ケ島の心が悲痛と動揺によりアンノーンオーブ絶対なる聖域が解除した。


「もしかして・・・」


アレンは、地面の魔法陣が霧散した事に凍結が出来ないからくりがあると考えに至った。そして、アレンは両手を前に突き出して

大吹雪おおふぶきを放つ。

今回は極小サイズではなく目視できるサイズで、威力を重視して。


「しま――」


ガロンは大吹雪に巻き込まれる。


「きやぁぁぁーー!!」


「ぐおぉぉ!?」


その余波により内ケ島とイーブルは後方へ身体を宙に放り出されるように飛ばされ地面に落ちる。

彼女は、落下のダメージに痛む身体をなんとか杖を使って立ち上がりガロンが無事か見てみると

氷像と化していた。


「ガロンさん・・・・・ガ、ガロンさん!!」


内ケ島は、解いてしまったアンノーンオーブの[絶対なる聖域]を発動する。氷像となっていたガロンはすぐに氷が砕きちり地面に落ちる。傷はない。安堵した内ケ島はガロンに寄る。


「ガロンさん。すみません、わたしが戸惑ってしまってこんな事に。反省は後にします、ガロンさん一緒に戦いますよ」


杖を持ち、内ケ島は敵を見据える。しかし、ガロンが動く気配がなく振り返る。


「ガロンさん?」


内ケ島椛葉は、しゃがみ込む。


「返事して下さい」


動かない。寸とも動いてはいなかった。彼女は思った、2度と動けないのではないか?もうあの攻撃を受けて終わってしまったと。


「そんな!ガロンさん・・・・・ガロンさん・・・ガロンさんーー!!」


いくら叫んでもガロンの返事は無く、まるでそれはしかばねだった。

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