第拾壱話―ガロンは見えない過去に弐―

(さて、将をんと欲すればずは馬をよ。)


毒矢を仕込ませた右の篭手こて

構え・・・放つ。

先頭に走る2頭のうち一頭の馬に矢が当たり転倒。先頭の馬車は左へ擦りながら転倒した。結果、乗っていた者は負傷か最悪、死亡しただろう。前の馬車が転倒した事に停車して

駆け下りて救助にいく

後方の馬車に乗っていた護衛。


(狙うは筆頭格)


白銀の鎧を装備した屈強そうな男がいる。降りた護衛3人を何かを指示している。

あれが指揮しているのは一目瞭然。


「2発目」


標的の鉄に守られていない首後ろを定めて放つ。標的は動くことほとんど無かったため的と変わらなかった。毒により身体を麻痺させた護衛長はうつ伏せで倒れる。

案の定、周囲は動揺する。そして一人が俺を指を向けて何かを

声高に言っている。


「見つけるのが遅かった。

しかし指揮官が倒れても動揺は一瞬で立ち直る、その速さは見るべきものはある」


山肌の斜面に滑らないよう立射するガロンを下方にいる護衛の一人が後ろの弓と矢を取りすぐに矢をつがえる。そして、射る。弓を張るまでの動作も射るまでの弓を張る動きも電撃ごとく速く狙いも正確的だった。


「ぐっ!」


ガロンが呻いたのは痛み。矢に当たったわけでもかすめたわけでもなく、身体と知覚を不完全なアンノーンオーブにより速めた痛みだった。疾風迅雷を使用して矢を避け、篭手の先端を標的に向けて放つ。


「はぁ・・・はぁ・・・・・」


ここで使うとは。放った矢もアンノーンオーブに付加。1.2倍を加速した矢が弓使いの首に命中し、

仰向けで倒れる。残りの二人は馬車の後ろへと退く。二人は剣や槍を扱い攻撃が届く前に仲間と同じ倒れると判断しての行動だった。


(ここまで状況判断が出来るとは・・・甘くみていた・・・どうする)


出てくるまで、待つ手もあるが毒の効果は長くはない。なら――


余裕綽々よゆうしゃくしゃくだな。スパイパーさんよ」


「俺達だけなら警戒するべきも無いてぇか?あぁ!」


自ら前へ出て接近戦で倒すことにした。傾斜をくだる前にガロンは馬車を引かせる馬を毒矢でしばらく横へさせる。馬車にはそれぞれ片方だけは眠っていない。これで一人は逃走するかもしれないが、そもそもの目的は奴隷。馬車を動けなくさせればよかった。

身を隠した護衛の二人はガロンが堂々と出てきた事に怒っていた。


「奴隷をすべてもらう。抵抗するなら闇にちてもらうことになる」


「何が堕ちるだ!」


年季を感じる白の重装する剣士の言葉には怒気を含んだ声。


「テメェが闇に落ちやがれぇぇ!」


黒い軽装した若い槍使いは、槍を高く掲げて走る。叩き潰さんと血気盛んだとガロンは思い不敵に笑う。


「本当に堂々と戦うと思ったか」


ガロンは吶喊とっかんする槍使いに

毒矢を放つ。


「なっ!?・・・・がぁ!!・・・ひ、ひき・・・ょうだ・・ぞ」


卑怯だぞと非難された事にガロンは。


「戦いに暗黙ルールはある。

だけど遵守しない者もいる」


最後の一人にガロンはレバーを引いて装填そうてん。そして放つ。


「ちいっ!」


毒矢を剣で弾く戦士。淡々とするガロンの行動に戦士はハビングは激怒した。


「よくも、アーチ、カリウス、ライダーを!!」


護衛長アーチ、弓使いカリウス、槍使いライダーを戦死したんだと思ったハビングは叫びながら地面を蹴りはしる。


「強い!」


弾数もわずかとなったガロンは毒矢の迎撃を諦め二槍で戦おうと決意。


「槍が2つだと!?」


ハビングは戦ってきた中で二槍を扱う者と戦っていなかった。そのため攻撃を秘技ソードアクセルを使用と思ったが、ソニックブレイドにした。飛ぶ斬撃にガロンは二槍で打ち払う。


「ふん!」


ハビングは地面を力いっぱい入れてジャンプした。


「うおおぉぉぉーー!」


空中からの大上段切りにガロンは横へ避ける。


「ハッ!」


避けた方へ斬撃して直進するソニックブレイドを片方の槍で防ぐ。

そして相手の距離は一気に詰め寄る。


「なっ!?」


「ストライクソード・・・全速力の倍で突撃する秘技だ」


そして、ハビングは剣を右から袈裟斬りをする。ガロンは右を斬られて・・・いない。


「消えただと!?」


「2度目も使うとは思わなかった。・・・はぁ、はぁ。誇っていいぞ」


ガロンは槍の秘技スイングドローを使用した。初級レベルの秘技、素早く回転した力を加えた槍で叩く3連撃の打撃。そして二槍で2倍の6連撃とアンノーンオーブの疾風迅雷でスピードを上げて威力を増していく。


「がっ・・・があぁぁっーー!!」


理不尽な速度に戦士は避けることも攻撃も防御も出来ずに背後を取ったガロンの攻撃に鎧は悲鳴を上げる。3撃目でぐしゃとなる鎧。

6連撃に戦士はバタッと倒れる。


「胸骨など大変な事になっているから後で治癒ちゆの魔法使いにでも看てもらえ。・・・ぐぅっ!?」


1.5倍にした疾風迅雷の反動にガロンは身体に悲鳴を上げていた。


(激しく痛むが、まだ持つだろう)


ガロンは、槍を背中に戻して奴隷商らしき人は御者台に頭を押さえて丸めていた方へ足を進める。


「奴隷を奪っていく」


「も、もちろん。だから命だけは」


「奪わん。もちろん怪しい動きをしなければ話だがなぁ」


「ええ。もちろんです」


灰色のパーマをした身なりのいい中年男性は機嫌を損ねないように迷わずに答えるのをガロンは、

侮蔑な眼差しを向けたまま。

正直、怒りをぶつけたいところだが堪えることにした。ガロンは馬車の後ろに回り荷台へ入る。


「・・・・・かなりの数だな」


奴隷の安い服を着ていないがかせはつけられている。


「ひっ!?」


「っ――!!?」


「安心しろ。今から出してやるから、絶対に勝手な動きはするなぁ。俺は・・・味方だ!」


小さく悲鳴をもらす捕らえられの身である人に安心させようと言葉を選んで言う。勝手に逃げればどうなるか分からないのでガロンは

最後のセリフに逡巡して味方だと言い放つことにした。


「みかた?」


「そうだ。だから枷もはずしてやる」


ガロンはおりを槍で叩き壊した。短くした槍だから狭い場所でも振るえる。奥の方へ進むとガロンは見知り顔が入っていることに驚愕きょうがくした。


「な、なぜおまえが!?」


「ガ、ガロンさん!?」


檻に入っていたのは

内ケ島椛葉うちがしまなぎはだった。


「・・・とりあえず壊すから離れろ」


「あっ、は、はい!」


後ろへ少し下がるとガロンは素早く槍を振るい鉄が変形する轟音ごうおんに内ケ島椛葉は耳を閉じる。そして檻に通れる隙間すきまが出来てくぐる内ケ島椛葉に枷を土魔法で作った偽のかぎ

ガチャッと開錠。


「ガロンさん助けてくれて、ありがとうございます」


「別に構わん。それよりもだ、どうして捕まっている」


「あっはは、それは・・・」


「おねえちゃん、こわかったよ!」


猫の耳と尻尾の幼い女の子が内ケ島椛葉の胸に飛びつく。


「うん。怖かったねえらいよエレ。この鬼さんが助けてくれるから」


「そうなの?」


「・・・ああ、そうだ」


否定したいガロンだったが、その通りなので頭を

乱暴に掻きながら返答する。


「エレはしるとあぶないだろ。おねえちゃんその・・・」


「おいでライト」


「うぅ、うわあぁーー!!」


ライトと呼ばれる猫耳と尻尾の以外は人と同じ姿をした少年にガロンはどこで出会ったんだと嘆息する。その間に檻にいた奴隷を全員を解放する。


「ガロンさんに心の中で助けを求めたら本当に来て、わたしおどろきました」


「こっちは別の意味で驚いたがなあ」


大金を渡したはずなのに、奴隷商に目をつけられた経緯が知りたいガロンはまずはここを離れるのが最優先ことで外に出る。


「えへへ」


明るく笑う内ケ島椛葉の声がガロンの後ろから耳にしてため息。


(よく笑う奴だ)


馬車の後ろから左へ曲がると――


「があっ!?」


「えっ?」


ガロンは胸に短剣を刺された。


「へへ、ナメたことしやがって」


薄汚れたローブを身に包んだ男は不気味な笑みを浮かべるのだった。

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