第13話 スキルの可能性は無限大
「おおぉ、終わっとるな。荷馬車を買ってきたから、フィナンシェこれ直してくれやー」
解体&再構成と魔結晶による経験値取得を終えると、ちょうどラビィさんが幌のない荷馬車に乗って戻ってきた。
荷馬車はボロボロで今にも壊れそうでガタン、ガタンと大きな音を立てている。
「ふぇー。こんなオンボロよく見つけましたね」
「馬付き一万ガルドまでまけさせたんや。お買い得やで。普通に買えば二〇万ガルドは簡単にするからなー」
馬も結構な年寄りでだいぶ痩せているけど、大丈夫かな……。
荷馬車の方は俺の力で新しくできるけど、馬は無理だよなー。
「フィナンシェ、お前たちの力、動物はイケると思うか?」
「え? 動物ですか?」
「パーティーを組むに当たって、お前らに何ができて、何ができないかを把握する必要はあるんやー。一回だけ試してみい。失敗だったら二度とは頼まん」
ラディナさんの力は、人を解体できるって聞いているから、そっちはできるはずだけど。
俺の方の力が、動物まで再構成できる力だったら、相当スゴすぎるスキルだと思う。
「どうする? フィナンシェ君がやりたいなら、あたしはいいけど」
ちょっとだけ浮かない顔しているな……。
やっぱり、父親の件があるからやりたくないんだろうか……。
でも、自分の能力が知りたいという欲求もあるし……。
ごめん、一回だけ、一回だけ試してみたい。
俺のわがままを受け止めてくれるはずだよね。
「ラディナさん、一回だけ試してみていいですか?」
俺は心中で、ラディナの優しさに甘えることに謝罪を重ねた。
「分かったわ。フィナンシェ君の頼みならやってみるわね」
そう言うと、ラディナがヨボヨボの老馬に手を触れる。
老馬は光に包まれると、皮と骨と肉となって中空に浮かんでいた。
「父の手を間違って解体した時もこういう風だったわね……。あの時は、光が収まると父の手が無くなってたけど」
ラディナさんのお父さんは、こうやって手を失ったのか……。
でも、この状態で俺が触れたら――
光っている老馬だった物に触れる。
ー――――――――――
リサイクルスキル
LV:4
経験値:28/30
対象物:☆馬(分解品)
>馬(普通):93%
>馬(中品質):73%
>馬(高品質):53%
>馬(最高品質):23%
>馬(伝説品質):13%
―――――――――――
リサイクルスキルは、生物に対しても発動していた。
「ラディナさん、俺のスキルが発動するみたいです」
「え? この状態でも発動するの? 生物にも適応するとかってすごくない!?」
「なんか、時間制限ありそうな気がするんですぐに再構成します!」
俺は老馬だったのを普通品質の馬として再構成した。
>馬(普通品質)に再構成に成功しました。
>馬(普通品質)
資産価値:一万五千ガルド
「ぶるうひひーーーんっ!!」
光が消えると、そこにはよぼよぼの老馬ではなく、筋肉が張った働き盛りの馬が現れていた。
「おぉ! 馬が若返ったやんけー。やっぱフィナンシェの力は改めて見るとすげえぞ」
「うちの父にフィナンシェ君の力を使えてたら良かったなぁ……。でも、さすが、あたしの運命の人ね。すごいスキルだわ! こ、これなら間違ってあたしが触れた人もフィナンシェ君が助けてくれるのね」
ラディナさんは馬が再構成されて若返ったことを見て、涙を流して喜んでいた。
彼女のトラウマは多少なりとも改善されたようだ。
「でも、生物はあまり再構成しない方がいいかもしれませんね。魔物とかも再構成できるってことだろうし、伝説級の魔物を作り出せるってことにも……なりますよね?」
俺の言葉を聞いたラビィさんの目がキラリと光る。
「伝説級の魔物か……お宝の魔結晶の匂いがビンビンするやんけ」
「そう言えば、フィナンシェ君のスキルを成長させるのに必要な経験値が、魔結晶を解体すると手に入るみたいなのよね」
「マジかっ! 伝説級の魔物の魔結晶だとガッポリ経験値が入るんやないか?」
「そうかもね。ゴブリンでも1ポイント入ったからきっと……」
「おい、フィナンシェ! お前の力で伝説級装備を整えたら、伝説ゴブリンの退治でもしてみるか?」
ラビィさんが無茶な要求をしてくる。
伝説級の魔物強さはトップランクのパーティーですら、複数でないと倒せないのだ。
いくら装備が強いとはいえ、俺には厳しいのではと思ってしまう。
「ダ、ダメですよ。伝説級の装備をした俺の手におえない相手だったら大惨事ですよ! 危ないからダメですって」
ラビィさんが顎に手を当て少し考え込んだ。
そして、ふぅとため息を吐く。
どうやら危険性を考慮してくれたようだ。
「まぁ、そっちはおいおい考えるとして……」
ってー諦めてなかった。
あの目は絶対に一回は挑戦させられる気がする。
「ラビィさん、危ないのはダメですよ。危ないのは」
「わぁっとるわい。今はやめといたる。それに生物系も再構成できることが判明したのは、大きな進歩や販売できそうな物も増えたしな。あとは荷馬車直して廃品回収しようかー」
そんなラビィさんと、俺とのやり取りを見ていたラディナさんが耳打ちをしてきた。
「フィナンシェ君、危なそうなことしようとしたら、あたしがラビィを解体するから安心して。再構成したら少しはマシになるでしょ」
い、いやそれ安心できないですからっ!
俺がラビィさんを再構成しないといけないハメになるじゃないですか。
ちょっと、魔が差して伝説級のラビィさんの再構成選んで失敗してロストさせる可能性もあるかもしれないし。
できれば、そういった事態は避けたいところ。
「ラディナさん、ラビィさん解体したらダメですからね」
「なんやねん、ワイを解体とか物騒なこと言うんやないっ!」
そんな俺たちの戸惑いを余所に、ラディナさんは荷馬車を解体し終えた。
「フィナンシェ君、解体終わったわよ。荷馬車の方もよろしくー」
「すぐに直すよ。くれぐれもラビィさん解体したらダメですからね」
「はーい、フィナンシェ君のお願いなら聞くわよ」
「おう、狂暴女! ワイを解体しようなんざ百年早いんや」
「うるさいわよ。フィナンシェ君がいいって言ったら速攻で皮と骨と肉にしてあげるわ!」
バトルを繰り広げ始めた二人の仲裁は一旦諦めた。
そして、ばらばらの部品になった荷馬車を再構成した。
新品同然になった荷馬車にピチピチになった馬を繋ぐと、二人に声をかけた。
「さぁ、荷馬車も直りましたから、すぐに乗っけて街に行きましょうか」
「とりあえず、休戦や狂暴女」
「そうね。フィナンシェ君に嫌われたくないし。休戦しましょう」
口喧嘩していた二人も喧嘩をやめ、みんなで手分けして再構成した品を積み込んでいく。
とはいえ、日用品と若干の武具だけなので、売ってもそうたいした金額にはならないと思われた。
「おっしゃー、じゃあ気合入れて廃品回収してくでぇー」
御者席に座ったラビィさんが運転をして、俺たちは一路、街中へ繰り出すことにした。
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