悪夢は、拡散する――

黒森 映は、美大生でした。子どもの頃から絵を描くことをよりどころにしていた彼女は美大へ進学しますが、そこは優れた才能の集まるところ……。彼女は、自分の才能の限界に気づき、打ちのめされてしまいます。大学で天才的な才能の持ち主・中島 幸に惹かれ、つき合い始めたものの、就職先では人間関係に躓き、やがて悪夢にうなされるようになります。

幸は、恋人の映を救おうと努力しますが、どうしてもそれは医療の方向へ向かいます。二人は、優秀な精神科医・清川 傑と出会います。清川は、映と同様に悪夢に苦しんでいる患者たちを救おうと行動しますが、それは、とある人物によって別の方向に捻じ曲げられてしまいます。

登場人物たちの、もつれ、絡んだ思惑が行き着く先は――


一人ひとりの境遇と心理状態が丁寧に描かれていて、そのリアリティが読み手に迫ります。特に、映の葛藤やコンプレックスは、身近に感じる方が多いのではないでしょうか。
珠玉の心理サスペンスです。

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