人間と精霊の争いの痕が残る世界で、虐げられ、孤独に生きる主人公ディル。
物語の始まりは二つあるように思えました。アルヴィードという青年がディルにとって初めての救いの手を差し伸べたこと。そしてその数年後、ロイという薬師のおっさんが危なっかしいディルを気にかけたこと。
運命が大きく動いていきます。
ディルに訪れるのは呪い、別れ、命の危機……となんとも不穏な出来事ばかり。
そんなふうにがんじがらめにされながらも、それぞれの想いが少しずつ過去を明らかにしていき、また、未来を作り上げていきます。
この過酷と言わざるを得ない運命を背負うなかで、ディルの天然っぷりが良い味を出しています。ほわんとした言動に思わず「そういうとこだぞ!」とツッコミをいれてしまうこと間違いなしです!
どこまでも翻弄してくる運命と、それを切り開こうとする主人公たち。運命や愛といった壮大なテーマが細い糸で緻密に織られているようで、素晴らしい物語でした。
おすすめです。
かつて、精霊たちと人間たちが争い、三つにわかたれた世界ーー
その『狭間』で、孤児のディルは虐げられて生きてきた。自分の生命の価値をみいだせず、「ここではない、どこかへ」行きたいと願ってきた少年は、ある日、彼を守ってくれる青年に出会ったが、「絶対に迎えに行く。生き延びろ」という言葉を残して彼は消えてしまった。
美しい銀の髪、天を映す瞳をもつ青年に成長したディルは、酒場で薬師ロイと出会う。ディルの傍には、彼に寄り添う巨大な黒い獣がいた。
精霊の魔法と人間の悪意が交錯する世界で、懸命に生きる二人と一匹の物語。
◇
どこか北欧神話のような、残酷な神々と精霊たちが支配する世界です。美しいけれども力のないディルは、人間たちにも虐げられています。人間の悪意と欲望に翻弄される彼を見ていると、ディルに恋する二人の気持ちが、とても純粋に思えてきます。
ディルにかけられた呪いの正体とは? 精霊たちの真の意図とは?
神話と精霊と、もふもふ好きな方にオススメの、ハイファンタジーです。
暗き大戦を終え、魔法を使える者と使えない者そして狭間に世界は分かたれた。
狭間の世界に捨て置かれたディルは運命的な出会いを果たすも、「必ず迎えに行く」と言い残した彼は姿を消す。
それから月日が流れ、運命は激流に飲み込まれていく。
壮絶だった、壮絶だったんです。途中、美人な精霊が出てきたなぁ。くらーい過去を持つ薬師さん不憫だなぁ。ヒーロー余裕ないなぁとかとかとか。呑気に構えてたら、ドラマチックな展開に覆されていきました。
想いと想いが絡まって、空回って、全ての情につき動かされたような物語。どっぷりと幻想的な世界を楽しんでほしいです。
精霊と人間の戦争の爪痕が残る世界。その世界で孤独に生きてきたディルは、十五歳の時にとある男の人と出会います。自分の素性もわからず、人の温もりに飢えていたディルは、その青年アルヴィードの救いの手を取り、暫しの安寧を得ます。しかし運命は彼女を平和の道へ導いてはくれませんでした。
彼を救うために禁忌を犯し、呪いを背負ったディルは、諸事情により姿を消したアルヴィードの言葉を信じて待つことになります。たった一言「俺が必ずお前を迎えに行くから、何があっても生き延びろ」という言葉を信じて──。
舞台はそこから三年後。ディルは大きな黒狼と、旅の道中で出会った薬師のロイと共に、自分の運命に決着をつけることとなります。
この物語の魅力は、様々な運命や因果が複雑に絡み合い、そして登場人物を取り巻いているところにあります。物語を読み勧めていくに連れて明らかになる「運命」。その美しくも残酷な現実に翻弄されながらも、アルヴィードとロイの二人の愛に支えられ、ディルは前へと進んでいきます。
美しい外見と珍しい天の瞳を持つディル。どこか危なっかしい彼女に振り回される男二人も見所の一つです。特に薬師のロイはあまりの報われなさに(?)一部熱烈なファンがいるほど(笑)
かつて「ここではないどこかへ」行きたいと願った彼女が、「共に幸せに生きたい」と願うようになるまでの結末を、ぜひ見届けていただきたいと思います。
常に孤独が付き纏い、美しい容姿と非力なせいで酷な目に遭ってきた主人公、ディル。
そんなディルに唯一救いの手を差し伸べてくれた男がいました。
しかし、ディルはある出来事がきっかけで呪いを受け、再び独りになってしまいます。
ディルを取り巻くふたりの男、ロイとアルヴィートとの恋模様も去ることながら、物語が進むにつれて明らかになっていくのは、世界にかけられた呪いと運命。それは、誰かの〝願い〟が生んだ切実なもので——。
最後に誰かが祈ったものとは、果たしてその願いは届くのか。
切ないながらも緻密に練られたストーリー、物語の結末は是非ご自身の目で確かめてみてください。
精霊と人間との間で熾烈な戦争が繰り広げられた後の世界という、どこか物悲しく憂いを感じる世界を舞台にした異世界ファンタジー作品です。
主人公のディルは驚くほど無防備で無垢で、一方で自分の意思もしっかりとあるという、どこか掴みきれない不思議な魅力があります。
その生い立ち、背負った運命、容姿と喋り方一つ一つに目を離せないような引力があって、それがお話全体の独特の静謐さを形作っていると思います。
このお話は、舞台となる世界を取り巻く謎を紐解いて行くと同時にまた、ディルを取り巻く恋愛のお話でもあります。
ディル、アルヴィード、ロイとの一筋縄では行かない不思議な三角関係の描き方が絶妙です。
こういう、何とも言い難い曖昧な良さを描けるところや、緻密な設定の世界観を無理なく生き生きと読ませるところに作者の方の筆力があると思います。
「ここではない、どこかへ」と願ったある人の想いを、最後まで見届けて欲しいです。
もっとたくさんの人に届いて欲しい魅力に溢れた作品です。
自分が何者かも知らず、孤独で辛い人生を歩んできた主人公ディル。そんな中で初めて手を差し伸べてくれた青年との出会いと、別れから物語は始まります。
青年と再会できず生きることをついに諦めたときに現れた一匹の黒狼と、命を救ってくれた薬師との出会い。ここからディルにかけられた呪いと、出自を巡る『運命』に翻弄されていくことになります。
『運命』というキーワードを軸に、迷いながら、だけどまっすぐに突き進んでいく登場人物たちがとても魅力的。
特にディルはどこか掴みどころがないようで、だけど自分の大切なものは何度でも守ろうとする芯の強さを持っています。そんなディルに惹かれるアルヴィードとロイ。彼ら自身もそれぞれが抱えるしがらみと向き合う姿や、ディルとの恋の行方に目が離せない!
アルとロイの過去に関わる精霊や妖艶で優しい魔女など、個性的なサブキャラも素敵です。
こちらはリメイク作品のため、よりわかりやすく描かれていてとてもおすすめです。
オリジナルと内容も結構変わっているので、読み比べる楽しみ方もできますよ。
どちらもすごく大好きな作品です。ぜひ!
人間と精霊、それ以外の種族が住まう世界で、特殊な事情と呪いを身に負う主人公ディルが孤独に生きぬき、やがて恋に出逢う物語。
銀の髪、空の色を映す不思議な瞳、中性的な美貌を持つ若者ディル。実の親を知らず自身の種族さえも不明な彼女(?)は、その美しさと非力さゆえに虐待され、誰にも顧みられず孤独に生きていました。酒場で知り合い、ディルに惹かれた薬師のロイは、去ってゆく彼女を放っておけずに後を追い、凄惨な現場を目にすることになります。
一度は去ろうと思いつつも、結局ロイはディルと、彼女の側にいた黒狼を家に連れて帰ることに。
そうして明かされた彼女の過去は、凄絶なものでした――。
虐げられることに慣れすぎて、自分を顧みるすべを知らなかったディルが、黒い狼青年と、お人好しな(でも手が早い)薬師によって、少しずつ孤独を癒やされていく、というこの物語。けれど世界はディルを呪い、死のさだめが容赦なく彼女を追い立ててゆきます。
ディルが穏やかに幸せに暮らせるどこか――そんな場所はあるのでしょうか。
やや大人向けの色香が漂う異世界恋愛ファンタジー、完結もしており安心です。ぜひご一読ください。