最終話 お父さんは反対です!

休暇をとって外国のフェンリル族コミュニティに遊びに来た。当たり前のようにロボも一緒に来た。


「ハヤト! ビアンカのパートナーが迎えに来てくれたぞ」

「久しぶりだね、ロボ。そちらがハヤトさん? こちらのレディがザザさんで小さなレディがララちゃんだね? 僕は孔明こうめいだよ。よろしくね」


ビアンカさんの旦那さんは人間だった。知的なタイプでカッコいい。


「初めまして孔明さん、ハヤトです。こちらがザザとララです」

ザザがパタパタと尻尾を振るが、ララはザザの後ろに隠れて出てこない。

「ララ?…すみません、最近ひとみしりするようになって…」

「いえいえ。うちも子供がいるので分かりますよ」

孔明さんは優しかった。


そして孔明さんに似た子供達も良い子たちだった。

「ザザちゃん、ララちゃん、僕はかく

「僕はきん

「僕はけい

すっごく可愛い! 美少年に耳と尻尾!

ララが人型をとれるようになるのが楽しみだ。


「ララ、ちゃんとご挨拶しなさい」

「…きゅう」

ザザがララのうなじを咥えて差し出した。


「うわあ可愛い」

「うん、とっても可愛いね」

「ふわふわで綺麗だね」


ララのことを、茶色くてムチムチなポテ腹で、丸々とした二頭身ボディ、太くて短いドスコイ脚と表現したロボとは大違いだ。


 ザザとララは3兄弟とすぐに仲良くなった。

ヤキモチを焼いたロボが子供達の和を乱す心配をしていたが、菩薩の表情で見守っていた。

 意外過ぎて拍子抜けだが、ビアンカさんによると発情期もきていない子供に変な気を起こすなどあり得ないらしい。


「ララに初めて会った時のロボの異常な行動は?」

「………ハヤトには言いにくいのだが、ララちゃんはロボと相性抜群のツガイかもしれな…ちょ! ハヤト! 顔! 顔!」


……ゴルゴ顔になっていたらしい。


「ビアンカさんは人間の孔明さんとご結婚されていますよね?」

「お互いに好意を持って、お付き合いして、伴侶であると理解した。我々は同族にこだわるわけじゃないよ。だからこそ数が少ないのかもしれないね」

ビアンカさんと孔明さんの間に生まれた子供達は3人ともフェンリル族らしい。


「ララちゃんには種族にこだわらず、たくさんの人と交流させてあげると良いんじゃないかな。可能性を広げてあげるのも保護者の勤めだよ」

孔明さんは考え方までイケメンだ。種族にこだわらず年齢の釣り合うロボ以外の異性とジャンジャン引き合わせよう。


「ハヤト…もし…もしもララちゃんが将来、自分の意思でロボと結婚したいと言い出したら…その時は祝福してやって欲しい」

「それは…」

ビアンカさんの言葉に素直にうなずけなかった。


「まだまだ先の話だよ。ハヤトさんたちには初対面の印象は最悪だったと思うけど、ロボは悪い男じゃないよ。少しずつロボのいいところも認める努力をしてやってくれないか?」


孔明さんの言うことは正しい。ものすごく嫌だけど。

ふとララを見ると、…ララがロボフェンリルの頬をペロリと舐めていた。


── 俺は倒れた。ショックで。


「ハヤト! しっかり! ビアンカ!」

「大丈夫だ! 脈はある、生きている!」


医師のビアンカがいてくれて助かった。


焦ったザザとララが、倒れた俺の顔を舐めまくっていたらしい。かわいいぞ!


そして…ララがロボの頬を舐めていたのも、一緒に暮らし、世話を焼いてくれるロボのことを、俺と同じく家族と認識しているせいだとかなんとか…。



 帰国後もロボとの快適な同居は続き、ララとロボの距離がますます近づいていった。

そのたびにハヤトとマルセルが青くなり、ハヤトが転職を検討したが、小さなララの面倒を見るロボは優しく、ザザもララもロボとの同居継続を望んだ。


 小さなララがロボと一緒に買い物に行ったり狩りを教えてもらったりする姿はイズの街の名物になり、心配症のハヤトがSNSで発信するロボとララの話題は、いつものこととスルーされるようになった。


 イズの街の住民はララの成長を暖かく見守った。

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