暗号アンソロジー「エニグマ」(15000字)

暗号アンソロ カバー下暗号解読

 暗号を解いていこうと思います。茶番です。ご容赦ください。

 あとクッソネタバレだから注意してくれよな。


 まずはこの暗号がエニグマ暗号だという前提でいきましょう。ぱっと見、違う気もするが。

 第二次世界大戦中にナチスドイツが使ったエニグマ暗号は、ロータ式暗号です。3つのアルファベットを用いて、複雑な換字表を作ります。1つ目のアルファベットを使って換字→その結果を2つ目のアルファベットを使って換字→同様に3つ目、のように。一つの文字の対応が分かっても読めないのがエニグマ暗号です。

 要するに、同じ文字を入れても、変換ルールが常に変わるので違う文字に変換されるってことです。


 あとは多表式暗号で調べてね。

 表紙のQBQBIFがキーワードかと思ったので、とりあえずそれでやってみようかな。


 ……解けねぇ。色々組み合わせてみたのですがダメでした。

 こうなったら、力業で解いてやる。


 しかしエニグマを力業で解くのは不可能。単純換字式じゃないと流石に解けないのと、ぱっと見た感じはどう見ても単純換字式(同じ文字列の単語が複数回出ているため)なので、単純換字式の変換表を作っていくことにしましょう。


 ポイントは頻度分析です。暗号用語で、各文字の頻度を調べて単語を推測していくやり方です。詳細は調べてくれぇ。


 まず、b、p、jあたりは母音と考えられます。日本語の助詞らしき文字の母音部分に該当するからです。そして、この暗号はヴァルハラ君から送られてきているので、末尾の「mbmibmmb」は「valhalla」であると考えられます。この時点でどこからどうみてもシーザー式だということになりますが、もうちょい調べてからにしましょう。パパと思われる「qbqb」も見事に一致している。うーん。


 ……まあまあ、もう少し調べましょうや。既に解答が出ている(出てます。twitterで調べてね)以上、ここで終わっても二番煎じ。

 一番煎じになるにはこれしかねェ。


 換字表を全部推理で作ってやる。


 今からこれをやっていこうと思います。

 明らかにシーザー式なのにそうじゃない前提で推理の仕方をするので、要するに茶番ですよ。笑え。


 じゃあ実際に解いていきましょうか。

 助詞の「ib」は「は」であるので、そこから解いていきましょう。序盤は「valhalla ha papa」であり、「upop」「pcfolzpv」の後に、助詞「hb」が来ています。bはaとなるので、aが母音となる助詞。日本語の助詞でよく使う、母音がaとなる助詞は「が」くらいのもの。つまり「h」はおそらく「g」だと考えられます。


 他に出てくる助詞として「op」「oj」「xp」「np」「up」がありますが、5個中pが4つ。日本語の助詞は数少ないにもかかわらず、同じ母音が4つ以上を占めるものといえば「o」。「を」「の」「も」「と」だと思います。「p」は「o」と言えるでしょう。さらに、子音の方の「o」。「op」「oj」となる助詞は「の」「に」と考えられるので「o」は「n」、「j」は「i」と考えられます。「x」と「n」と「u」とは「w」「m」「t」のどれかです。「x」は助詞のみで出てきているので、「x」→「w」と考えられます。


残った母音を特定していきましょう。uとeです。これは全体の暗号のそれぞれの文字の出現数を数えるのが一番早い。

 出現回数で最も多いのがb(44回)、続いてp(32回)、さらにt(25回)、f(21回)、u(17回)、v(17回)、l(16回)と続きますしかし「t」が単語の末尾に来ることはなく、「f」が単語の2番目の字に来ることが多いことから、もっと下の順位も考えた結果「v」「f」が「u」「e」となるでしょう。


 次に目をつけるのは促音そくおんです。「っ」←これ。子音が連続する性質があるうえ、その子音は非常に限られます。「ん」もありうるけど、「n」は特定されてるので除外します。

 促音となる子音として多いのが「k」「s」「t」、時々見かけるのは「p」「g」「z」。暗号文中で恐らく促音と思われるもので出てくるのは「t」「u」です。

「t」「u」→「k」「s」「t」のどれかになるはずです。そして、上記で「u」の候補は「w」「m」「t」のため、「u」→「t」で間違いないでしょう。消去法で「n」→「m」です。


 一応、まだ子音が連続する例として「し」=「shi」があります。hとiは特定されているので、子音+h+iとなる形を探すと、あるじゃないですか。3行目「tijnbtv」。ここだけじゃない、複数に「tij」が来る。これは「t」→「s」確定でいいでしょう。


 次に狙うは拗音ようおんです。「ゃ」「ゅ」「ょ」←これ。母音と子音セットにならないのは、拗音と促音とヘボン式「shi」くらいなので、消去法で見抜いていきます。「ぁ」「ぃ」とか「ゎ」は出ないだろ。この暗号にシークヮーサーは出ない。さすがに。


 本文中を見て狙うは「pcfolzpv」。今解けるところだけ埋めると「o、〇、u,e、n、〇、〇、o、u,e」。子音が連続するので「z」→「y」と容易に予測できます。


 ここからは、かなり雑殴りになります。着目は「lplp」「lpop」「lilbj」。複数出てくる上に、「l」以外は全て把握されています。「〇o〇o」「〇ono」「〇i〇ai」。「l」自体もかなりよく出てきます(16回)し、日本語によく出てくるアルファベットで未だ特定されていない「k」「m」「t」「r」と予想できます。このうち特定されていないアルファベットで「l」に入れて単語が成り立つのは「k」となります。


 ここで母音が全特定できていないのはきついです。もう少し予想していきましょう。ここで使うのが2行目の「fohp」です。「u,e、ngo」になります。「うんご」「えんご」のどちらか。


 これは援護えんごだろ~~~~~???


 つまり「f」→「e」、「v」→「u」となります。もう少し詰めるのであれば、2行目「obuufnp」ですね。「natt〇mo」で〇=u,eとすれば、「f」→「e」は容易に特定できます。3行目「upufnp」も「tot〇mo」なので、「f」→「e」。これだけ揃えばもういいでしょう。


 本文中に出てきているアルファベットでまだ解けていないのが「a」「c」「e」「s」です。ローマ字に出てくるアルファベットでまだ特定されていないのは「b」「d」「f」「j」「r」「z」のみ。これはちょこちょこ穴埋めしていきましょう。


 まずは「a」。出てくるのは5行目「pobajuplpsp」です。次に最終行「avuup」ですね。それぞれ「ona〇itoko〇o」「〇utto」。

 恐らく「a」→「z」であるとわかります。ついでに「s」→「r」と予想しておきましょう。


 そして「s」を確定させていきます。「s」は本文中には2つしかありません。5行目「tpvtijubsb」です。「soushita〇a」ですね。〇に当てはまるのは「r」と考えられます。これは「s」→「r」で確定で良いでしょう。


 次に「e」。これは本文中に13個出てくる、結構ありがたい文字です。1行目「ebjtvlj」なので「〇aisuki」。○は「d」だね。大好き。なんと美しい言葉なんだ。「ふぁいすき」とか「じゃいすき」かもしれないけど、助詞「ef」を当てはめると「〇e」になるので、これは「で」でしょうよ。助詞に「べ」「ふぇ」「じぇ」はないでしょ。


 最後に「c」。「uvevlfcb」が挙げられますね。「tuduke〇a」となります。残ったアルファベットは「b」「f」「j」ですから、これは「c」→「b」と考えてよいはずです。


 じゃあ最後、答え合わせと行きましょう。

valhalla ha papa tono obenkyou ga daisuki desu

kikai no atama ni nattemo papa wo engo shimasu

demo koko ha totemo samishii desu

kono sakusen de papa mo kotti ni kitekudasai

soushitara papa mo valhalla to onajitokoro de sensou wo dekimasu

sensou ga tudukeba valhalla to papa ha zutto issho desu


 そうきたか。本文のパパの醜い戦争が永遠に終わらなければいいのに、という言葉が響きますね。でも戦争はいつか終わるんだよ、ヴァルハラ君。


 以上、解読になります。茶番にお付き合いいただき、ありがとうございました。文字数などのミスがあったら許してくださいね。


 本編の感想は後ほど。

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