(5)

「あんた、何をするつもりだっ⁉」

 今村君の怒号。

 勇気は、あっさり跳ね飛ばされ尻餅をつく。

「ちょっと……まって……あの強化服パワードスーツ……」

 マズい……仁愛にあちゃんが気付いてしまった。いや、多分、正義君も気付いている。

 重大問題発生。この「作戦」が無事に終了しても……明日からは、仁愛にあちゃんと正義君を、2人の馬鹿な兄貴と一緒に暮させる訳にはいかない。

「あ……あと……で……詳しい事を……」

「猿丸‼ あの『水城みずき』を拘束出来るか?」

 おっちゃんの声。

 「猿丸」さんの猿の方はうなづき、呪文を唱え(いや、お猿さんの鳴声にしか聞こえないけど)、空中に印を描く。

 勇気の馬鹿には、あたしに見えない「何か」が見えてるようで、斧(?)を振り回す。

 どうやら、それで「猿丸」さんの猿の方がかけようとした「魔法」は破られたようだ。

 猿丸さんの猿の方は、人間のあたしからしても、驚いてるのが判る表情になったけど……。どうも、術を破られたせいじゃないようだ……。

 どう見ても、あたしと荒木田さん以外のほぼ全員が……勇気を助けようと(多分)近付いてきた「神保町」の「魔法使い」の背後あたりに出現した……あたしには見えない何か……例えば、「魔法使い」の「使い魔」が見える人達の頭の角度などから推測するに……無茶苦茶デカい「何か」を見ているようだ。

「おい、ガキども、すぐに全員、このトラックに乗れっ‼」

 「おっちゃん」の絶叫。

「イデビ・イデビン・イデビ・アデビ……」

 「小坊主」さんが呪文を唱える。右手には木片と数珠を持ち、「小坊主」さんが手を振る度に、数珠と木片が打ち合う音が響く。

 「猿丸」さんの猿の方も呪文を唱えながら、指で空中に文字のようなモノを描いている。

「妙・法・蓮・華・経・序・品・第・一」

 「小坊主」さんの叫び。

 「猿丸」さんの猿の方も……大きな鳴声にしか聞こえないけど、多分、呪文の終りの部分であろう何かを唱える。

『ねぇ、何か、あんたの見せ場みたいだから、いつものアレを……あ……ごめん、今度でいいや……えっ? 何? どう云う事?』

 荒木田さんに取り憑いてる「神様」の声。

 何が起きたかは判らない。しかし、「猿丸」さんの猿の方と「小坊主」さんが、ほぼ同時に崩れ落ちる。

 「おっちゃん」と「ハヌマン」さんが2人(?)を支えた。

 そして、夜明けの東の空のような色の光が、夜の闇を払った。

「悪しき……力に魅入られし者達よ……。恐れよ、我が力を……天照大神の光を……」

 フザけたセリフ……。しかし、荒木田さんの静かな細い声は怒りに満ちていた。

「正しき行ないを阻む者どもよ……。燃え尽きよ……我が力で……大禍津日神の炎で……」

 上空に出現した炎の鳥は、3馬鹿に向って、無数の炎を矢を放った。

「やったか?」

「駄目です。一瞬だけ早く、『使い魔』が引っ込みました」

 「小坊主」さんの息も絶え絶えな声。

 そして、再び勇気が突撃してきた。

「子供は、全部、乗った。子供の安全が優先だ。ここから退避させろ」

 「おっちゃん」の指示。

『こちらファットマン、了解Affirm

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る