(ⅴ)

「えっ?」

 俺達がレナ達の後を追い掛けていると、横を3台のトラックが通り過ぎた。

「い……今のトラック……運転席に人居たか?」

「えっと……魔力は感じなかったので……魔法によるものじゃないと思います……」

 メガネっ娘による的外れな補足。

「にゃあ……」

 その時、足下で鳴声がした。

「あ……大丈夫でしたか?」

 メガネっ娘は座って鳴声の主に声をかける。

「そいつは……?」

「あたしの『使い魔』を憑依させてた猫さんです」

 鳴声の主は虎縞の猫だった。一応、首輪が有るので、野良猫では無いらしい。

「じゃあ、今は向こうの様子は『使い魔』を通して見てる訳じゃないのか?」

「え……ええ、結構な精神集中が必要なので……歩きながらは無理です」

「そ……それじゃ向こうの様子は……」

「判りません」

「どうせ、あと1分かそこらの距離……嘘だろ……マズい」

「えっ? そ……そんな……馬鹿な」

 2台の戦闘用パワーローダーは地面に膝を付いていた。

 子供達は助け出され……そして、さっき横を通った無人トラックに乗っている最中だった。

「あ……遅かったね……。仁愛にあちゃんと正義君は無事だよ」

 レナの冷たい声。

「いいか……良く考えろ……。このままじゃ……『英雄』になるのは、あいつらだ。だけど、あいつらは、所詮は他所者よそものだ……。ずっと、この『島』やお前の町を護ってくれる訳じゃない。いいか、お前の町には、他所者よそものじゃない『英雄』が必要だ。……いいか……

 「ニワトリ」男は俺の目を見ながら、そう言った。

「あ……駄目ですっ‼」

 すぐそばに居る筈のメガネっ娘の叫びが、何故か、何百mも離れた所に居るみたいに、か細く響く。

 そして……「ニワトリ」男の目が光ったような気がして……。

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