(ⅱ)

「あんたッ‼ 何してんだッ⁉」

 トラックから出た途端に聞き覚えの有る声。

 こっちに走って来ているのは……。

 いや、バイク用のヘルメットをしてるから、誰か判んない……。

 と思った次の瞬間、そいつは、ヘルメットを脱ぎ捨て。

 今村?

 と思った更に次の瞬間、今村が着ていた服が、大昔のマンガ「北斗の拳」みたいに弾け散り……。

「何だ、ありゃあ?」

「えっと……あの変身は……魔法的なモノじゃないです」

 メガネっ娘が、ビミョ〜に的外れな助言。

 ああ、「早太郎」ってコードネーム。そして、望月の「そのコードネームだと能力がバレるだろ」と云う指摘。

 今村の体は「人間態」の時より一回り大きくなり、そして、白い狼男に変貌していた。

 そうか……「早太郎」って……何かの昔話の……人喰い狒狒を倒した白い犬……。

「うわああああッ」

 俺は、手にしていた武器の「斧」の方を今村の体に叩き込み……。

「えっ?」

 俺の足が地面から浮き上がる。

「おい、これ、魔法の武器だろッ⁉ 何で効かないッ⁉」

「す……すまん……そいつの……物理的な……防御力が……もし仮に……超チート級だったら……普通にこうなる」

「あの……ここまで来ると……超チート級なんて……生易しいモノじゃ……」

 斧は……今村の「毛皮」にあっさり弾き返された。

 あ……そう言や、こいつ「ライフル弾は無理だが、拳銃弾やナイフなら防げる」とか言ってたな……。

 って、斬り裂け無かったとは言え、こんな重いモノを叩き付けられて、ほぼノーダメージなら、ライフル弾が命中しても、こいつを何とか出来るのかッ⁉ こいつ、絶対、自分の能力を過小評価してるだろッ‼

 今村は、俺の「斧」の柄を持って、俺を持ち上げ……。

「こんちくしょうが……」

 その一言は……あの時のライダースーツの男と同じだ……。俺にではなく、自分自身に言い聞かせているようだった。

 まさか、あのチビのメスガキが言ってた「火事場の馬鹿力を引き出す自己暗示」なのか? おい、待て、ただでさえ無茶苦茶なヤツが、更に……。

 そして……今村の目の色が変った……。黒っぽい茶色から、金色に……。

「待ちなよッ‼ 冷静になってッ‼」

 だが、次の瞬間、レナの声が響く。

「う……うわぁッ‼」

 混乱したメガネっ娘の声。その時……。あれが現われた……。

 俺の親父を殺した「使い魔」。

 黄緑色の光に包まれた……雄ライオンの頭、人間の女の胴体、足が有るべき場所には蛇の尻尾……そして天使の翼。全長およそ6m。

 異形の「天使」は、手にした弓矢でレナを狙い……。

「妙・法・蓮・華・経・序・品・第・一」

 若い男の声が響く。

「えっ?」

 空中に突如出現した輝く格子模様は、異形の「天使」が放った矢を防いだ。

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