第21話 星空

『明日の十時、公園に来てほしい』


 彼女からのメールだった。文面的に空本だろう。今さらだけど、このアイコンの人物は雫だったんだと気づいた。確かに重なる。


 翌朝、いつも通り起きて朝食を母さんと一緒に食べた。


「あんた今日学校休みなんだってね」


 今日は急いでいるのかコーヒーは飲まず、卓の向かい側に座っている。


「うん、けど今日は外に出るよ」

「あらまあ珍しい。一人?」

「ううん」

「あらまあ珍しい。……デート?」

「違うよ」


 そこは否定する。付き合ってはいないし。行き先にも寄るけれど。


「まあいいわ。遅くなるなら連絡しなさい。前みたいに朝帰りは許さないけど」

「わかった。気を付けるよ」


 母の寛大さに感謝を評したい。これでも感謝しているんだと、伝わっているかは別として。


「自転車で行くの?」

「バスで行くよ。今日は暑くなりそうだし」

「まぁ、確かにね」


 外を見る。太陽が照って、良い天気だ。家の外の花壇に咲く花の葉から、雨粒が一滴滴り落ちる。まるで夏が、緊張して汗をかいているように。


「行ってきます」

「いってらっしゃい」


 いつもとは逆の言葉を交わした。手を振ることはなく、玄関で見送る。また見え方が変わったような気がしたのは、たぶん気のせいだ。


 歯を磨いて、時間まで布団で寝転んだ。時間が近づいてくるとちょっと気になって、学校以外ではあまり身だしなみを気にしない自分らしくなく、髪を整えたりした。


 三十分前に家を出た。前回より十分早い。それだけ何もすることがなかったわけじゃ、ないこともない。


 持ってくるものは傘だけだと聞いていたので、折り畳み傘だけを持って、服装は何してもいいように軽装で僕は公園に来た。


 早く来すぎたかな、と周りを見渡す。ここが出会いの場所だったと言われても、やっぱり思い出すことはできないけれど。


 ベンチに座って、僕は陽に打たれていた。キャップを被ってきているから、日差しに目がくらむことはない。目を瞑って、眠るようにしていると時間が早く経つ感じがして、そわそわしなくていい。


「おまたせ」


 前方からの声だと気づいた。はっきり聞こえたから。目を開けると足元が映って、サンダルを履いていた。スクロールするように視線をあげていくと、ああ……、と懐かしさみたいなものを感じてしまった。


「おはよ」

「お、おはよ」


 僕は雫に挨拶した。彼女は少し緊張している様子だった。僕はこの格好を見て、今日の行き先を明確に予測する。


「あそこに行くんだね」

「あ、あったりー」


 あはは、と焦った笑い声を出して彼女は首を横を傾げさせる。


 最後の頼みというのは、彼女に思い出を作ってあげることなんだと、僕は気づいて立ち上がった。


「それじゃあ行こう、早くしないとすぐに日が暮れる」

「そうだね」


 前のルートを辿るように、僕たちはバスに乗り、入り口前のコンビニで昼食を買った。


「ちょっと多めに買っておいて」


 彼女がそう言うので、僕はおにぎりを三つ買った。彼女はサンドイッチを三つ。リュックは持ってきていないから、二人とも水筒を持参していたので水は買わなかった。


 入り口前に立つと、いきなり彼女が目を閉じ息を吸い込んだ。


「何やってるの?」

「こうするとさ、思い出してこない? 昔のこととか、色々」

「どうだろうね」

「やってみなよ」


 やらせようとするとので、仕方なく従う。今日ばかりは、彼女のわがままに何でも付き合う覚悟だった。


 僕は鼻で息を吸った。天気のせいか、夏の空気を吸い込んでいるように感じる。目を開けると足音が聞こえて、少年時代の僕が後ろから走ってやってきたように見えた僕は「うわっ」と左に避けた。


「何か見えたの?」

「……何も」

「ふーん」


 気のせいだと思い込むようにして、僕は幻のように山の中へと消えていった昔の僕を見送る。

 ミンミンと、季節外れの蝉の鳴き声が耳を叩く。山の中は、静寂と喧騒が入り交じっているようだった。


 彼女は先導をするどころか、僕よりも前を歩いていた。手を引かれるようなことはなけなしのプライドが許さないので、二メートルくらいの感覚を開けて付いていく。


 彼女は僕が知らない道を辿り始めた。スキップするようにリズムよく地面を踏む。


「これ覚えてる? 昔よく木登りしたよね」


 彼女は太い幹の木に手を置いた。眺めてみると、ううん、やっぱり何も映らない。


「そうだっけ。ごめん覚えてない」

「そっか、じゃあこれ見てよ」


 彼女は木の裏手に回った。後を追うと「ほら」と何か傷のようなものが幹にあることを見せた。

「よく此処で背比べをしたんだよ。いつも赤場くんが一番だったけどね」


 傷の横にはもうぼろぼろで何か判別はできないけれど、マークのようなものがあった。


「へえ、けどそのすぐ下にも線があるね」

「それは星太くんの。いつも赤場くんに負けてるから背伸びして付けたんだよそれ。それでも足りなかったけどね」

「昔はそんなだったんだ」


 こどもらしい頃もあったんだな。


「僕はこの道を覚えてないけど、君は覚えてるんだね」

「うん、星太くんが見つけた道だからさ。わたしの記憶は君のよりも、まだ幼い頃に途切れているから」


 亡くなったその日以来のことは思い出にできない。だからこそ僕よりずっと鮮明に思い出せるのだと、彼女は言っている。


「不必要な記憶とか、忘れたい記憶が新しいものよりも価値が無かったら、それらはどんどん忘れていっちゃうけど。わたしは引っ越してもこの頃の記憶が懐かしくて、何度も夢に出たよ」


 懐かしむように、彼女は傷に手を触れる。

 ならば僕が無くしてしまった記憶は、僕にとってどうでもいいものだったのか。そんな疑念が、僕の中で静かに渦巻いた。


「早く行こう」

「うん、そうだね」


 今は向き合うべきじゃない。目を逸らせと、僕はその場を後にする。


 ***


 彼女が次に行こうと言ってきたのは、あの洞窟だった。僕の中で唯一残っている、過去のトラウマを生んだ場所。


「何も変わってないね」


 中を覗いて彼女はそう言った。

 見つけた当初は自分の部屋と同じくらい大きいと感じていたそれは、また身長が伸びた今、かがんで入っても身動きができないと思えるほど小さく見えた。


「何も思い出せない?」

「……いや」


 此処に来るのは一年半ぶりだ。嫌な思い出が甦ってきて、僕は顔を歪ませる。


「けどあまり良い思い出じゃないから」


 できれば忘れたいと、願って忘れて。だから今さら思い出させられたところで、どうしようもないと。


 あの時の飾りはすべて燃やした。ただ少し拾い落としがあったのか、その後風雨にさらさられたのか、ぼろぼろの色紙の欠片が地面に落ちていた。


「でも、悪い思い出ばかりじゃないでしょ」


 彼女はそれを拾って、僕に渡す。僕は握って、当時の想いを鮮明に思い出した。


 喜んでほしいと思った。忘れていないことを確認して起きたかった。友情は永遠だと、中学三年ながら僕ははしゃいでそれを作った。


 その記憶は、思い出せる。


「楽しい記憶は残るものだから、悪いものばっかりじゃなかったって。それを思い出してほしかった」

「そのために、此処に来たの?」

「だけじゃないよ。碧はここ知らないからさ。昔連れていってあげるって言ったんだけど、あの子外嫌いだから、いやだ、って断られたんだよね。けど最近は私の思い出の場所に行きたいって言ってくれるから、君を元気づけるついでに見せてあげようと思って」

「そこまで傷心じゃないよ」

「強がってもだめ」


 彼女はいたずらっぽく笑った。子供の頃の彼女も、こんな風に笑っていたんだろうか。僕はそんなことを考えてしまう。


 僕は以前から時刻を確認する癖がついていた。登山ではタイミングが大事だということもあり、意識しているうちに自然と右腕を持ち上げるようになっていたのだ。けれど入り口に立ってから今までなぜかそれを怠っていた。そのことに気づき、急いで時計を確認する。


「って、もう二時過ぎてる。急いで下山を」

「待って」


 彼女の制止が、僕の一歩目と重なった。


「今日はわたしのわがままに付き合ってほしいの」

「……何をすればいいの」

「わたしが満足するまで一緒にいて」


 そんな、大人の言葉のような一言。加えて事情を知っているから、余計に威力があった。

 彼女の、信じられないくらいの言葉遣いの巧みさは、元々持っていたものだったのか。不謹慎だが早くに死んでしまった彼女の精神が、そこまで大人なものだとは到底思えない。


「わかった」


 そのことを確かめるべきだと、僕の本能が告げた。


「じゃあ腕時計はポケットにしまって」

「えっ、それは……」


 彼女の目が、しまえと言っている。


「わかったよ……」


 僕はおとなしく腕時計を外してポケットに入れた。なんか変な感覚だ。気になってつい腕をあげてしまいそうになる。


「よし、じゃあ頂上まで行こう」

「えっ、今から?」

「何よ、文句あるの?」

「……ないです」


 目で制された。

 小一時間ほどで頂上に着くと、僕たちは遅い昼食を食べた。町が一望できる、空本とも昼食を食べあった見晴らしの良い崖の上で。


「懐かしい」

「来たことあるんだ」

「覚えてないの!?」

「……ごめん」


 彼女ははあーっ、とため息をついた。食べているサンドイッチまで一緒にしおれているように見える。


「此処で皆でおやつ食べたの。星太くんがポテトチップスの袋をパンパンに膨らませてて、開けたらそこらじゅうに散らばっちゃって大変だったんだから」

「そんなことがあったんだ」


 やっぱり思い出せない。恥ずかしい経験だったからかな。今はそうだと思いたい。


「それでねそれでね」

「うん」


 僕はそれから彼女の話を聞き続けた。日が暮れるまで、彼女は記憶を全てさらけ出す勢いで僕に思い出を話す。当時の友達の話。僕が何かをやらかした話。赤場が奈月のことが好きだったことを彼女も知っていた話。全部、何を聞いても、僕は何も思い出せずただ相づちを打つことしかできなかった。


 陽が暮れて、あたりが真っ暗になると、彼女は、じゃじゃーん、と小型の懐中電灯を取り出した。


「これで暗くてもへっちゃらでしょ」

「そこまで光の範囲は広くないけどね」


 ランプならまだしも。もしや夜の散歩にでも行くつもりなのかと耳を傾けていたが、そんな素振りはなかった。普通に持っていなかったのだろう。


 彼女は膝を畳んで、夜空を見上げる。


「秋の星空って、きれいなもの多いよね」

「そうだね。《アンドロメダ座》とか《ペガスス座》とか、《秋の四角形》とか。どれも双眼鏡や望遠鏡がないと見えないけどね」

「無くても星空はきれいだよ。小さい星でも光の弱いものでも、一つ一つがそこにあるから夜空はすごくきれいなんだよ」

「そうだね」


 それには、すごく納得する部分がある。肉眼でしか見えない星空だけでも見える空の模様のその先に、芸術のような星の絵画がまだあるかもしれないなんて、考えた人はロマンチストだ。


「わたしたちが見ている星々の姿は、けど今はもう存在しない過去のものかもしれない。けれどその間にも、他の星が誕生して夜空に新たな光を灯すんだよ」

「君はすごいことを考えるね」

「そうかな。でもわたしたちもその光の一部なんだよ。君の散らばった記憶みたいに、失っては生まれていく」


 それはどういう意味だろう。 と、そんな顔をしていたのかもしれない。


「わからない? ──じゃあ大ヒント。君が過去を忘れられないのは、過去が大事だから。けれど同時に過去を忘れていってしまうのは、それ以上に''今''が大切だから」


 全てを見透かしたように、彼女は言う。


「君は何でもお見通しなんだね」

「そりゃあね。みてるからね」


 一体どこから僕の心を覗き見たというのか。

 けれど実際、当たっている。納得してしまった。

 そうだ。

 忘れたのは嫌な思い出だったからじゃない。それよりも大切な思い出ができたからだ。今まで目を背けてきたことに向き合って感じだこと、知ったこと、聞いたことは、全て今の僕にとって過去よりも尊いものになっている。


 空本の怒り、星華祭で感じた達成感、母さんの優しさ───まだまだある。


 そのどれもが、大事だと思えるものだった。その源にあるのは、やっぱり──『人とのつながり』だ。


 遠回りしてやっと気づいた。僕が持っていないと思っていたものを、僕は知らず知らずのうちにもらっていた。思い出を。


 彼女はなぜか笑って、夜空に囁くように言う。


「それがわかれば、君はきっと大丈夫」

「うん、わかったよ、一人だけじゃない、たくさんの人が僕と関わりをもってくれた。きっかけをくれたのは、君と空本だ」

「わたしは何もしてないよ。ただ君を利用しようとしただけ」

「そうだとしても、僕はそれで周りと関わりを持てるようになったんだ。空本のおかげだけじゃない」

「そう? そう言ってくれるとうれしーな」


 彼女は初めて、子供のように笑った。


「じゃあ、わたしからも言っていい?」

「うん」


 僕が頷くと、彼女は言う。


「わたし、お星さまだったんだ。ずっと空の上から、君と碧と、みんなを見守ってた。だから君があの山で独りぼっちになっていたのが、わたしには見ていられなかった。──そしたら案の定、ふにゃたれた言葉ばっかり返すんだもん。びっくりしちゃったよ」

「ごめん、あの時はちょっと寝覚めが悪かったというか」

「だけじゃないでしょ。それからもわたしと碧にいっぱいひどいこと言ったでしょ。帰れよ、とかさ。あれ悲しかったんだからね」

「ごめん」


 確かにあれはひどかった。謝るタイミングを失っていたから、すっかり忘れていた。


「本当に、ごめん」

「いいよ、気持ちはわかるから。碧も最初はそんな感じだった。だから君にしか頼めないと思った」

「けど僕は、そんなに強い人間じゃない。彼女は僕を嫌っているし」

「そんなの関係ないよ。それに、わたしが好きになった男の子を、あの子が嫌いになるわけない」


 面と向かって言われると恥ずかしい。この気持ちは照れであって決して好意などではないことはわかる。それでも受けとることはしてもいいと思った。


「期待に答えられるよう、頑張るよ」

「うん、頑張って。───さっ、帰るかー」


 彼女は元気よく立ち上がった。これから消えるとは思えないほど快活に。ごはん食べに行くかー、とでも言うように。


「あ、でももう暗いから、洞窟で一夜でも明けちゃう?」

「勘弁してよ。そんなことしたら空本に怒らる」

「わたしも空本なんですけどー」

「あ、碧に怒られるよ」


 彼女は満足げに頬を綻ばせた。


 帰り際、彼女が近道を教えてくれるというのでその道を辿ることにした。

 懐中電灯を構えて僕たちは山を下りる。いつもは暗くて怖いはずの夜の森は、まるで見送ってくれているように穏やかな木々のざわめきを僕らに聞かせた。

 気づくとあっという間に入り口まで戻ってきていた。


 時計を見ると夜十時過ぎ。まだ最後の一本に間に合う時間だ。


 僕たちは駆け足でバス停に向かい、その最後の便に何とか乗り込んだ。


 彼女が最後に公園に行きたいというので、十分だけ認めることにする。こんなところをクラスの誰かに見られたら、騒ぎだけじゃ済まない。


 二人ともブランコに座って、話をした。というか彼女が話し出した。きい、と鉄が擦れる音が響く。


「この公園、覚えてる? わたしたちが初めて会った場所」

「ちょっとだけなら、たぶん覚えてるよ」


 まだ少しだけ、頭の片隅に残っていた記憶。

 一人で遊ぶことが日常だった僕は、いつもここの砂場で砂遊びをしていた。そんな後ろから、誰かが声をかけてきたんだ。


「ねえ、一緒に遊ぼうよ」

「いいよ、君だれ?」

「しずく」


 横に彼女がいるからか、途切れていた記憶が付け足されていく。


「じゃあわたしたちが遊んでる時に雨が急に降ってきたことは?」

「覚えてないかな」

「わたしが、雨はきらい、って訊いたらあの時の君こう言ったんだよ。──晴れと同じくらい好きだ、って」

「へえー、理由は聞いたの?」

「雨の日は友達を家に呼べる。晴れの日は友達と外で遊べるから、って」


 それを聞いて思い出した。我が家は友達を家にあげる制限が厳しいから、雨の日でないと友達を呼べなかったのだ。

 とりあえず一人でじっとしているのが苦手だった昔の僕らしい、わがままな答えだ。


「わたしも同じだったからさ、嬉しかったよ」


 彼女はそう言った。本当に嬉しそうに。


「だからあの時、ああやって訊いたんだ」

「うん。君が答えてくれたら、わたしも、って言うつもりだったから」


 あの時の出会いをもっと早く思い出せたなら、こんなに遅くならなくて済んだのだろうか。なんて、今さらなことを考えてしまう。


「今の君はどうなの? 変わった?」

「どうだろう。今は少しだけ晴れが好きかな」

「そうなんだ。──何で?」


 僕は考えずに答えた。


「下を向かなくてもいいから、だと思う」

「うん、いいね。わたしも同じ」


 彼女はにこっ、と笑った。


「いっけない! もう十分経ってるんじゃない!?」

「え……あっ! ヤバい! 連絡も入れてない!」


 僕は一転、焦り出す。


「とにかく早く帰らないと! ほら、急いで」

「うん!」


 去り際、彼女が手を振った。僕はなんだか彼女との距離が段々遠くなっている感覚がした。


「じゃあね」

「うん、また」

「じゃないでしょ。わたしたち、もう会えないんだから。最後の最後くらい、ちゃんとしなさいよ」


 一瞬だけ碧が映った気がして、姉妹の遺伝子の同調率に恐れを抱く。

 僕は息を吸って向き直り、精一杯の感謝の気持ちを言葉に込めた。


「今までありがとう」

「わたしの方こそ、楽しい思い出をありがとう」


 手を握ってきた、少しだけ悲しそうな彼女の顔を見て、僕は押さえていた気持ちが溢れそうになる。けれどこれを別れだとしたくはなかった。彼女はこれからもずっと、僕たちを見守ってくれるのだから。


 だからさよならは、言わないでおいた。



 翌日、いつもの日常がやってきた。僕はクラスの彼らと挨拶を交わし、席についた。

 やがて扉が開けられ、その人物を見て空気が凍りついた。いつもこのあと平然と席に座るまでの間、誰も一言も発せられない。

 けれどその空気を壊すかのごとく、低い声が発せられた。


「おはよう」


 あまりにもぎこちない、その初々しい挨拶に一同が共学する。誰も声を出さないが、嫌な空気じゃない。

 彼女はそのまま教室の中を歩いて、やがて僕の前に立った。

 そして初めて、僕たちは目を合わせて挨拶を交わした。


「「おはよう」」


 雨はもう、当分降りそうにない。


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