第3話


自宅に着いて、晩御飯を済ませ、花憐は例のサイトを開いてみた。


「へぇ、自殺願望がある人たちの間だと有名なサイトなんだ。まぁそう言ってたしね、あの人たち」


 サイトは過疎化もしていないし、ちょこちょことサイト管理人ともやりとりして、その後に思い直した人のコメントもあった。

 サイトで挨拶をしてからでもいいし、貼られているURLに直接移動して話してもいいらしい。

 ほとんどの人は直接話しているようだ。花憐は挨拶をしてから話し始めることにした。

 挨拶を掲示板で済ませてから、貼ってあるURLに移動した。


 それからしばらくして、返信が来た。思ったより返信が早かったことと、丁寧だったことに少し意外さを感じながらも話を始めることにした。


『こんばんは、karenです。』

『初めして、こんばんは。死神さんです。』


 自分で死神さんっていうんだな………と思いながら、話チャットを続けた。


『あの。私、死のうかと思ってて』

『そうですか。どうしてですか?』


 いきなりこんなことを言ったらさすがに困らせるかな、と不安だったのだが、対して動揺していないような文が返ってきた。


『つまらないから』

『つまらない?何がつまらないか教えてもらっていいですか?大丈夫、拒絶したりしませんから。』


死神さんの聞き方が、優しすぎたからかもしれない。


『自慢じゃないけど、私って、何でも出来るんです』

『だから、つまらなくて』


ずっと、死神さんが、黙って話し終わるのを待っているせいかもしれない。


『ただ、それを友達に言ったら次の日から嫌われて』

『共感はしてくれなくてもいい』

『ただ、話を聞いて欲しかった』

『なのに突き放されて、拒絶されて』

『……悲し、かった。』


 何のせいかはよく分からなかったが、初めて人に本音を話せた気がした。


 すごく短い文章を繋げて話した、心の底にしまっておいた感情。

 いくら花憐が客観的に物事を考えているとしても、少し冷めていたとしても、やはり悲しかったのだ。


 死神さんは、全て話終わるまで待ってくれていた。その優しさに、改めて感謝した。


『そうですか……』

『だから、もう死にたいの。このつまらなくて退屈な、共感者だけじゃなくて話を聞いてくれる人もいないこの世界から出たいの』

『そうですか……今はそう考えているんですね』

『はい』


 今は、という表現が少し引っかかったが、とりあえずそう思っていることを伝えた。


『ちなみに、ですが』


 向こうから話すのは初めてだな、と場違いな感想を抱きながら花憐は話の続きを聞いた。


『何ですか?』

『自分が今こうして話を聞いているのですが、話を聞いてくれる人の中には入らないんですか?』

『いや、人かどうかも分からないので……死神さんって言ってるし………』

『そうですよね、わかりました』


花憐……karenとして死神さんとの話がひと段落ついた後、ふぁーとあくびをした。


一方の死神さんは、クスクスと笑っていた。

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