第2話 出会いは召喚、運命のカード

 僕はベッドに寝転がって、手にした金のカードを眺める。カードは運命を示す道しるべ。古くからカードは占いによく使われている。僕はカードによって運命の出会いをした。


 半年前、トレーディングカードの新作を買うつもりで放課後に寄ったカードショップ。そこで、僕は古びたカードを見つけた。カードが醸し出す不思議なオーラに僕は妙に惹かれる。僕がカードを手にすると、


『汝、我が求めに応じ現れたまえ… …』


 突然女性の声が聞こえてきた。


『あれ? またダメなの? もう、ムカつく!』


 女性の声や口調に幼さを感じる。


『もう一回。汝、我が求めに応じ現れたまえ… …』


 カードが光を放ち始めた。光はどんどん強くなる。僕は光の強さのあまり目をつむった。


『出でよ!』


 少女の声が強く頭に響く。


 目を開けると、草原で大きな目を輝かせる少女がいた。


「やった、やった! やっと召喚成功だ!」


 少女が飛び跳ねて喜んでいる。彼女の笑顔を見た僕の胸はなぜか高鳴っていた。


「おやおや、さぞかし立派な召喚獣じゃな」


 少女の横に老婆が立っていた。召喚獣? 召喚ってなんだ? ていうかここどこ?

 俺は深々とお辞儀をする。


「ども、はじめまして」

「随分礼儀の良い鬼じゃな」

「ははは、見た目は強そうなのに。使役しやすい鬼のようね」


 老婆と少女は笑みを浮かべている。鬼? 強そう? 僕は状況が飲み込めず、辺りをキョロキョロ見回した。大きな水たまりを見つける。水たまりに映っている僕の姿は、


『え? これが僕?』


 背が高くなった僕は青白い鎧を身にまとっていた。兜は被っていないが、頭からツノのようなものが生えている。


「お師匠様、名前どうしようかな? ゼンキとかカリバーとか、うーん悩むな」


 少女は腕組みをしている。何もわからない状況で僕はボーッと立っていた。僕は意を決して口を開く。


「すみません、ここはどこですか? そして僕の姿は……」

「あなたは私のカードによってこの世界に召喚された鬼よ」

「召喚? 」

「そう、異世界から召喚されたのよ、あなた」


 僕が頬をつねってみた。痛い。こんなファンタジーな展開が現実なのか。少女が僕に近づき下から僕を見上げる。大きな瞳に僕は吸い込まれそうになった。


「で、私はあなたのマスター、チヒロよ。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」


 僕の胸はキュンと締め付けられる。チヒロさんは首をかしげる。


「なんか、頼りなさそうね。大丈夫かな?」


 僕の右側から急に黒い光が広がっていく。光の中から大きな牙が現れた。


「危ない!」


 僕はとっさにチヒロさんを抱えて跳んだ。光の方向から空気が大きく震える。僕は背中に振動を感じる。なぜか唇に柔らかい感触が。至近距離にチヒロさんが見える。僕はハッとなってチヒロさんから離れた。


「ご、ごめんなさい!」


 僕は深々と頭を下げる。チヒロさんを見ると顔が赤い。


「ふ、不可抗力だからね……」


 チヒロさんの声が震えている。


「フォフォフォ、危機到来じゃよ」


 老女の声で我に帰る僕とチヒロさん。黒い光の方を見ると巨大な虎が現れていた。


 ウガォー!


 虎の唸りで僕の膝はガクガクと震え始めた。僕は無事に帰れるのか……






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