異世界に召喚されたらモテるのに

ドゥギー

第1話 僕は召喚獣になってモンスターと戦う

 僕の目の前に化け物がいる。ライオンの体にワシの頭と翼をもつグリフォンだ。普通なら高校生の僕がこんな化け物にかなうわけ……それどころか遭遇するわけがない。しかし、ここは化け物はびこる異世界、珍しい光景ではない。


「クキャー!」


 グリフォンがけたたましい鳴き声で威嚇する。普段の僕なら急いで逃げるであろう。しかし、青白い鎧を着た僕は黒い刀を構えて、大きな化け物に斬りつけに行く。僕は召喚獣だからだ。


「行けー、ハルアキ!」


 僕の後ろを少女が応援してくれる。僕の名前は『安部 ハルアキ』、少女は僕を異世界に召喚した張本人だ。


「ハーッ!」


 僕は勢いよく化け物グリフォンに斬りつける。しかし、グリフォンは間一髪斬撃をかわし、空へ飛んで逃げていこうとする。


「チヒロさん!」


 僕は少女の名前を呼んだ。


「わかった!」


 応えたチヒロさんの体が赤く光る。そして、チヒロさんは銀のカードを取り出した。


『汝、我が求めに応じ現れたまえ… … 出でよ、ブーメラン!』


 呪文を唱えたチヒロさんがカードを投げる。カードは一瞬光った後、ブーメランに変化した。僕はブーメランをキャッチして、空中にいるグリフォンに向けてブーメランを投げる。ブーメランは勢いよく弧を描き、目標に命中した。


「クキャー!」


 グリフォンが悲鳴とともに落ちていく。僕は落下点に向かって走る。そして、走る勢いを使って飛び上がり、刀でグリフォンを上から斬りつけた。


「クキャキャー!」


 グリフォンは断末魔の叫びをあげると、光のチリになって消えた。戦いが終わった僕は肩で息をする。


「やったね、ハルアキ!」


 僕より頭一つ低いチヒロさんが僕に近づく。チヒロさんの姿を見た僕は呼吸を整えた。


「やっぱりハルアキは頼りになるわ」

「あ、ありがとう」


 僕は頭をかいた。


「今日はお疲れさま。またお願いね」


 チヒロさんは黒いカードを取り出し、僕の胸にかざした。


「おやすみ、ハルアキ」

「おやすみ、チヒロさん」


 僕は青白い光に包まれる。次の瞬間、僕は元の世界の自分の部屋にいた。


「ハルアキ、お風呂湧いたわよ」

「わかったよ、母さん」


 僕は部屋を出て、浴室へ向かった。


風呂を終えて部屋に戻ると、僕は机の中から黄金のカードを取り出し眺めた。僕とチヒロさんの出会いはこのカードがきっかけだった。

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