あとがき

 エリザベートとルイジ=ルキーニの存在を知ったきっかけは、実は宝塚ファンの親戚から送られてきたミュージカル『エリザベート―愛と死の輪舞ロンド―』のビデオだった。主演は一路真輝(現在女優)と花總まり(現在舞台女優)、初演のものである。

 当時まだ幼かった私は、エリザベートはおろかハプスブルク家のことさえ知らなかった。

 だが、この芝居の中で最も印象に残ったのが、ルイジ=ルキーニ役の轟悠(現在宝塚・専科)だった。正直なところ、その辺の男より男らしい……と思う。芝居の中のルキーニの立ち位置は進行役で、独特の語り口調が幼少の私にはとりわけ印象深かった。

 この作品を書く際、宝塚ファンの親戚からエリザベート関連の書籍・資料(ミュージカルをきっかけにエリザベートに興味を持ったらしい)を借りたのだが、ルキーニについて語られているのはほんの一部分。出来るだけ史実に反しないように書いてはみたが、ルキーニの一人称で書いていること、また、一部の文献だけでは判断出来かねるため、エリザベートがルキーニに減刑を申し出た理由については明記しなかった。

 ここからは推測であるが、それはエリザベートが死に場所を探して各地を放浪していた(望んでいたと言っても過言ではないのかもしれない)から、と言えば納得はしやすいのかもしれない(芝居の中では黄泉の帝王であるトート=「死」にエリザベートが恋をしたことになっているが……あくまでフィクションだ)。


「彼女が自由を求めて各地を放浪しているさなか、息子のルドルフ皇太子に先立たれてしまう。息子に寄り添えなかったという後悔の念から生涯喪に服し、以来、黒服を手放すことはなかった」(本作より抜粋)


 これが原因ではないだろうか……少なくとも私はそう考えている。

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ルキーニ~太陽になり損ねた男~ 櫻井 理人 @Licht_S

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