警官の声2

 説教という名の飲みはよく飲み会がある店の対面席で行われた。

平日の定時上がりから20分後ということもあってそれほど混んでいない。

いつものビールとつまみを注文すると

徳さんの顔つきが厳しくしながら

「高田はここの署に来て3年目だったか。採用されたのが今から5年前だっけか。

 そうか、それでも知らなかったか。そうか。じゃあ、説教からするか

 自分が不謹慎な事を言ったのは分かるな。

 聞いているのが身内だけでも言ったら駄目なこともある。

 それに、そう言う緩みは癖になる。

 大事な部分を見落としたり、警察のスキャンダルになり得る。

 だから、今後は現場では一切そうゆうことは喋るな。」


ビールを口に注ぎ口を潤すと続けて。

「それに、身内でもいろんな奴がいる。

 その社会常識をお前は軽率に乱すから余計に駄目だ。

 当たり前に誰もが同調してくれるわけじゃないし、黙っているからって意見が無い

 わけじゃない。


 やり返せとか弱いって言ったんだよな。

 それがお前の子でも子が死んだときにやり返せや弱いってお前は伝えるのか。」


説教という名の情報伝達と言われたから来たが目つきが剣呑な上司に言われると説教であると感じながら、

「自分は子供が居ないのでわからないですね。その感覚は。もしかしたら言ってしまうかもしれないです。」

徳さんの目が明らかに剣呑な目が憐れむ目に変わると

「そうか。そう感じるのも仕方ない。

 これだけ繰り返してるのに何も手も打たなきゃ   なあ。

 じゃあ、これからの話を黙って聞いてろ。そして明日円堂に形だけでもいい。頭を下げろ。」


ビールと枝豆を追加注文すると一人語りが始まった。


「自殺はそこらで起こっている。寧ろ、子供より大人の方が多い。

自業自得や巻き込まれてで借金・病気・理解なき苦しみ、原因はいろいろある。

けれど、子供の自殺の問題が取り上げられるのはな。極力防げるんだよ。

子供は貧困層に生まれたからと自殺することは基本ないし、

親から我慢を強要されても我慢できる。環境に抗いながらなんとか生きてる。

そりゃ反発ぐらいはするだろうけどよ。


会社だと今はいじめが減りつつあるんじゃないか。

ほら、パワハラとかああゆうのが規制されてきたろ。

社会人は、いや大人はだんだんとその規制が必要だから、

作ったわけだが子供らにはその規制はない。


子供らはみんなで仲良くと強制されて教師に言えば解決する時もあるが

なんだかんだで悪化する場合が多いしな。

幼稚園や小学生中学年くらいならまだいい。

何が駄目で何が駄目じゃないかわからないやつも多いからな。

ほにゃらら君がおもちゃ取った~とかな。



ただ、小学校高学年となりゃ、下の学年の世話をする機械が増えっから、

事の善悪の判断がが分からない奴はいない。

いたら、仲間外れにするだろう。

誰彼構わず暴力・暴言の奴なんて近寄りたくない。

そりゃあ、いじめでもなく分別がつかないってことだからこの際置いとく。


今じゃ、SNSの規制も始まった。俺はやってないから分からないけど。

それにパワハラの法律もできて、俺ら中間管理職は上にも下にも気を使って生きてる。とても大変だぜ。

でないと、訴えられるからな。



今の子は弱いんじゃない。

その規制が無い中耐え抜いてきた。

彼らはボロボロで擦り切れそうになりよくやってるよ。

人に頼らず、頼っても解決せず、それでもどうにかしょうと考えて過ごしてる。


大人は法律作ってるのに子供の世界はむしろ無法地帯だ。


お前、刑法の傷害罪・暴行罪、どんな内容か知ってるだろう。

ぶっちゃければ、

殴った結果、蹴った結果、相手を怪我をしただろ。

まあ、もっと広義だけと分かりやすく言えばな。


だけど、子供の世界じゃ子供がした事で済む。

幼稚園児じゃないんだぜ。

蹴れば、殴れば、相手が傷つく。それが分からないわけじゃない。

特に学校ないならな。

学校内は教師が解決しようとして俺らの手が出ない。

呼ばれないからな。

だから、分からない。

子供だからって万引きは犯罪だ。でも、学校内なら犯罪にならない。

そうなってしまっている。



いじめはな、犯罪なんだよ。


その顔は酒が進んでいるが、酒の赤ではなく。怒気の赤だった。





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