第17話 「…告白した後、どんな顔で会ったらいいか?」

「…告白した後、どんな顔で会ったらいいか?」


 その問いにコクコクと頷く俺を見て。

 ナッキーは心底呆れた顔をした。


 南国風の飯屋の近くの茶店。

 そこの隅っこで、ナッキーは足を組み直して背もたれに右肘を乗せた。


「…まさかこんな事で早退とか…」


 深い深い溜息。


 ナッキーって、ホンマ…愁いを帯びた顔したら芸術品みたいやな。

 長い髪の毛を後ろでまとめて、少しだけ落ちてきとる横の髪の毛が顔にかかって…男やけど『美人やな』て思う。


 陽世里とは腹違いの兄弟。

 で…俺の親代わり…て、二こしか違わへんけど。



「…別に普通の顔して会えばいいだろ。」


「そんなん無理そうやから聞いてんねん。」


「……」


 うなだれるナッキー。


 …スタジオでは極力普通に接してたけど…こうして二人で話すんは久しぶり。

 るーの事でケンカして以来、ナッキーはマンションに戻って来る事なかったし…

 まあ…ぶっちゃけ気まずいまんまやったけど…


「…るーちゃんとくっついたんだろうなとは思ってたけど。」


「そ…そやねん。めでたく。」


「…ふっ。」


「ふっ?」


 鼻で笑ったナッキーに目を細める。

 それに、今ナッキー…『るーちゃん』言うたか…?


「ま、共通の話題でも持ち出せばいいんじゃないか?」


「きょ…共通…」


 眉間にしわが寄る。

 俺とるーの間に共通の話題て…


「あ。」


 そう言えば…


「電車ん中でナッキーを引っ張ってった女、陽世里の婚約者ってホンマ?」


 俺がそう問いかけると、ナッキーは運ばれて来たコーヒーを一口飲んで。


「ああ。頼子ちゃんな。」


 やっと…普通の顔してくれた。


「婚約者って…金持ちによくある政略結婚的な?」


 俺も目の前のグラスにストロー入れて、コーラをずずっと飲んだ。


 はー…

 ナッキーと普通に話したかったし…ぶっちゃけ、るーと付き合う事んなったの、ちゃんと言いたかったし…ホッとした。



「何だそれ。ドラマの見すぎだろおまえ。」


「そうなんかな。」


「ああ…来月結婚式があるから、予定空けといてくれ。」


「ん?誰の?」


「陽世里だよ。」


「……え?」


「パーティーで歌頼まれててさ。」


「…ん?えーと…陽世里、結婚…?」


「ああ。来月結婚して、ロンドンに行くんだ。」


「……」


 来月結婚…結婚式…


「は?ガッコは?」


 だんだんテーブルに前のめりになる俺を見て、ナッキーは小さく笑うた。


「まあ…その辺は俺も、卒業してからでいいんじゃないかって意見したんだけどな…」


「……」


 俺がキョトンとして無言になると、ナッキーはツンと俺の額を押した。


「それより…おまえ。」


「あ?」


 ナッキーは組んでた足を下ろしてちゃんと座ると、腕を組んで者に構えて。


「るーちゃんと付き合う事になったなら、マリと寝るのはやめろよ。」


 低い声でそう言うた。


 …そんなん…て、言い返そう思うたけど。


 唇を尖らせて、頷くだけにした。



 そんなん…

 もう絶対ないし。

 それに…



 ナッキーが帰ってくればええ話やん…!!


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