第4話 戦闘

「ハァ・・・・・・・」


・・・・どうしてこうなった。


電波塔スカイツリー』の頂上。もうあからさまに嫌な予感しかしない。


「・・・・・早めに終わらすか。」


特別指令ミッション。オレへの依頼内容は、組織内に異能犯罪者モンスターの内通者がいるらしい。オレはスカイツリーの深夜警備員として潜入し検挙。

詳しいことによると、どうやらここが奴らの取引現場らしい。

取引場所はスカイツリーの頂上。何を考えてるやら。



「・・・・・誰もいないな。」


周りを確認し。オレは能力スキルを使った。


―ドロドロドロ・・・・ベシャ。


「これでよし・・・っと」


 ―液状人間リキッド・ヒューマン。オレの異形能力エネミースキル


身体を液状化させる能力。それをゼラチン質にすることで、ゲル―謂わばスライムのような状態にし、人間体じゃ出来ない動きが出来る。


他にも、ゾル状になることも出来るが、ゲルのほうが使い勝手がいい。いや、ゾルも使いやすいんだが・・・・


まあ気分だ、気分。


「さて・・・隠密形態ステルス・モード、オン。」


潜入、逃亡用の風景同化によって、カメレオンもびっくりな擬態っぷりだ。

オレはそのまま見張りと思わしき男の目をかいくぐり、その現場に居合わせた。


「ぐあぁ!」


「逮捕な、お前。事情聴取は、検察庁・司法警察署アッチの仕事だしな。」


―ついでにそいつには眠ってもらうことにした。さりげなく手錠もかけた。


ゾル状態とゲル状態の使い分けによる高速手刀。オレでなきゃ出来ない所業だね。


そいつを吊らし、オレは先に進んだ。



「ホ、ホントにやるんですか?」


「ああ、当然さ。俺たちの計画には必要なステップだしな。」


ーそこにいたのは、警官服を着た小太りの中年男性と、フードを被った男だった。


「で、でも、そんなことしたら、バレやぁしませんかねェ?」


「大丈夫だって。その場合はアイツが通しゃしないだろ。」


「そ、そうなんですかい?・・・・・!?」


―必殺のズームアタック。先に小太り男には気絶してもらおう。


「あぁ、あいつはコウモリ男。超音波センサーで索敵はおろか、妨害まで出来るからな。」


「へぇーそいつは凄い。でもそいつ眠ってましたぜ?」


「チッ、アイツ居眠りなんかしやがって。暇を持て余しすぎだろ」


「いいや、そいつはバッチリ起きてましたよ。ここに転がっているブ男みたいに、すぐ眠っちまったけどね。」


「ふん、どいつもこいつも。だらしないったらありゃ・・・・・・・・ッ!?」


ー扉なんて意味ないんだよな。オレは液状だから。


そして、オレはすごいことをしたらしい。


なんせ相手のレーダーを潰した。そして気絶させた。一瞬で。


そして今その主犯格と相まみえた。ならば言うことは1つだ。




「―こんばんは、異能犯罪者モンスター。警察・・・・いや。―特異班ギルドの者です。大人しく投降しなさい。」





特異班ギルド


世界各地で、異能犯罪者モンスターを検挙する組織。


警察の中でも、特別な枠組みのエリート集団。


―正直、オレには荷が重い。なんせ始めてだからな。だけど・・・・・




「待て、リュウ!」


「なんだよ!姉ちゃん!」


「・・・・・いつも通り、やってこい。」


「・・・・・わかった。」


覚吏さとりの言う通り、いつものオレで、仕事を果たそう。

大胆に、そして敬意と少しの皮肉を交えて。












「なんだァ~てめえ・・・・邪魔すんじゃねぇ!!!!」


相手は腕を鎌のような、それでいて、のこぎりみたいな棘を生やしたものに変えた。


「ヒュ~。カマキリ男か。イカすねぇ。」


―ザシュ!


その腕は肉を捉えた。相手の肉を引き裂くかのようにそのまま彼の腕を斬り飛ばした。

ーしかし。


「―ありゃりゃ。どうすんだこれ。再生まで時間掛かるんだぞ?」


彼はケロッとしている。

まるで動じておらず、機械の不調で愚直を言うプログラマーのように顔をしかめた。


「・・・・ッ!!ふざけてんじゃねえぞテメエエエエエエエエエエ!!!!!」


男は激怒した。まるで遊ばれていることに怒り狂った。


―ザシュ!ズバッ!


男は両腕の鎌で彼の身体をバラバラにした。


―ベシャ!


肉が、血が、当たり一面を赤く染めた。


「はぁっ、はあっ、はあっ・・・・」


―しかし。


「!?」


切断した肉片が蠢きだす。

それは自我を持って、重なるように這い始めて、やがてそれは人型を取る。


「よいしょっと・・・・」


―歪な姿で。


「あ~あ~あ~。どうすんのコレ?無抵抗の人間を一方的に殺して、挙句血まみれじゃない。罪状重くなるよ、コレ。」


「!?」


「あっ、今驚いたでしょ?そうだねー。切断口をゲル化させて再生し易くしたの。便利でしょ?」


―彼は、いとも簡単に蘇った。

肉片から再生し、腕は再生の代償に無くなっているが、まるで何事もなかったかのように会話し始めた。

衣服も、傷も、全部。


「ハァ・・・ハァ・・・バケモノめ・・・!」


「そりゃあ異能者エネミーだからバケモノでしょ。オレも、君も。」


―男が疲れ気味なのに対し、彼は平然としている。

圧倒的な差が、そこにはあった。


「無理やり再生すんのは結構疲れるんだけど、ま、仕方ないか。・・・腕なしで行くけど、構わないね?」


「ナ・・・ナメてんじゃあねぇぞ・・・・クソ野郎・・・・!」


「クソ野郎ねぇ~・・・・」


そして、彼は一瞬で距離を詰め。


「!?」


「―クソ野郎はどっちだよ。犯罪者。」


ガシィ!


「アガァ!!」


―滑らかな動きから一瞬で背後を取り、そのまま男の肩に踵をたたきつけた。

降ろされる脚は、男の身体を沈めた。


「ん・・・おおおお!!!・・・ふぅ。」


ジュルリ!ジュルジュル!


ー彼、壱原琉輝いちはらりゅうきはそのまま腕を再生した。





「えー、1時11分37秒、小場トオル、久井原オウ。それから森田イチキ。えーっと・・・・めんどいからいいや。そんじゃ、もろ込みの容疑で逮捕する、っと。」


こうして、初任務ながら、大きな被害が出ることなく。壱原琉輝は、異能犯罪者モンスター達の検挙に成功した。


「やれやれだ・・・・。こんなとこ、さっさと出ようぜ。」

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