第3話 行動

「さて・・・これからどうするか・・・」


自由になった。といってもまだまだ新米ひよっこだが、そこは―


「わたしが何とかする。だろ?リュウ。」


「社長。リュウって呼ばないで下さい。」


こんなくだらないやりとりだが、実際そうするしかない。

オレはここの社長である覚吏さとりに頼るしかないのだから。


「えぇー、いいじゃないか。減るもんじゃないし。」


「・・・・・もう好きにしてください。」


ーオレはもうヤバいと思う。まともに関わるだけ時間の無駄だ。


「じゃあリュウ。早速だが、君に特別指令ミッションだ。」


「・・・ミッション?」


今まで聞いたことない。ここまで半年間、無能力者プレーンとして勤めていたが。


特別指令ミッションなんてワードは聞いたこともない。


「それもそう。これは特に優秀な人材じゃなきゃ出来ない仕事シロモノさ。しかもトップシークレットのね。」





「・・・・大丈夫か?頭おかしい奴の心読んだか?」


「ちっがーう!わたしは至って普通シンプル正常ノーマルサニティ!決して非常識アブノーマルではなーい!!あとさっき、まともに関わるだけ時間の無駄ってどういうことだー!!」


覚吏さとりがおかしいのはいつも通りだが、今日は飛びぬけておかしい。

何なんだ?特別指令ミッションって。

半年間隠れて特訓して、準備万端なオレだが、ほぼほぼ新米ひよっこだぞ?

いきなり召喚よびだしておいて能力解禁日に上級者専用の依頼クエストとか・・・・・・







「ハァ!?オレに死ねってかぁ!?色んな意味で死ねってか!?これのどこが正常ノーマルサニティなんだよ!十分非常識アブノーマルだわ、マヌケ!!!」


―我慢の限界だった。

ヤバいと思ったが、憤りを抑えきれなかった。


「とうとうとち狂ったかお前!?何があった!?変なもん喰ったか!?」


「だーかーらー!!わたしはどこもおかしくないって言ってるでしょうが!これは上からの正式な依頼なの!」


「あぁ~そうかい!上からの指令かい!言い訳ご苦労s・・・・・・え?」


「そう!上から。ちゃんとここに書いてあるでしょう?『葛飾警察署かつしかけいさつしょ』って。」


「・・・・え?マジで?」


「マジもマジで大マジよ。ほら。これ見て。」


ーそうして覚吏さとりは、ある書類・・・というか、書き置きをオレの前に出した。


雛沢覚吏ひなざわさとり警部補。ここ最近、異能犯罪者モンスターによる犯罪行為が横行している。奴らを一人でも多く検挙しなければならない。そこでだが、君が経営している総警会社から、一人だけ派遣として特別指令ミッションを依頼してくれ。―もしも断られそうになった場合、こう言うがいい。

『―拒否権はない』と。

君には期待しているよ。

                        葛飾警察署長 大葉 啓二」


そして、お互いに理解したであろうその時。


「「 あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ! ! ! ! !  」」


「何なの、パワハラ!?パワハラなの!?これ!?」

「何で警察署長が処刑宣告してくるかなァ~ッ!?」

「断れる訳ないじゃん!?上司だよ!?こんなの絶対適当じゃん!」

「なんなの!?自由になったと思ったら今度は鬼畜難易度のクソゲー!?」

「こんなの実質、『やらないと減給だからね。』って言われてるのと同じじゃん!」

「いっぱいいるじゃん!?100人以上いるよね!?何でその中でオレなの!?」

「いやー。正直信頼してるから。やってくれるって信じてるから。」

「ねぇ馬鹿なの!?ふざけるミ!絶対めんどいからオレを選んだよね!?」

「!?!?・・・何でバレた!?さてはお前もエスパーだなぁ~?このこの~。」

「ねぇいい加減にしろよ!ふざけんのも大概にしろよ!そういうとこだよ!覚吏さとり姉ちゃんの悪いところ!!!」

「ね・・・姉ちゃんって、呼んだ・・・ッ!?あぁ~やっぱしそうなんだよなぁ~。これだからリュウは優しい子なんだよ~。さっきも心配してくれたし。」

「-ッ!!!!もういい!やりゃあいいんでしょ!?やりゃあ!」


ークッソ馬鹿馬鹿しい会話から、オレは人生最初にして、最大の試練に向かおうとしていた。

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