フェイル6 警告と取引

「龍神会?」

「なんで、あんたのような幹部が来てるのよ? それに、荒らしたこの部屋。責任取ってもらうわよ?」

「そんな、睨むなや。レベッカはん。それに、待たせるお前らが悪いんやで? 待たせんかったら、こんな風にならへんかった」

「このやろうぉぉぉぉ!」


 激怒したレベッカの表情にが起きそうになるが、イクスに止められる。セレス、ミクリオ、レベッカは、そのままの位置で。イクス達は、子供の世話と掃除を騎士団員達としながら、偉そうに座っている香川の話を聞くことに。


「レベッカ様、お止めください」

「ちっ!」

「すまんな、イクスはん。助かるわ」

「どうやら、自己中心的な思考の持ち主みたいだね? 香川君」

「あんたも言えることやろ? シェリー」

「それで、話とは?」

「実はな、あんたらに警告と取引をしに来たんや。フェイル薔薇騎士団」


 すると、セレス達は、その言葉を聞いて驚いた。


「何故、分かったのですか!? お前! 抗争の知らせですか?」

「話聞けや! この事知っているのは、俺の組だけや。どうやって知ったかは、教えられへんけどな、昨日の幹部会であんたらが、その海外組織という疑いが出たんや」

「疑いですか!? どうしてですか?」

「あんたら、スター通りや北斗通りなどで、事業拡大してるうえに、住人らの店との契約を結んだうえに、部下どもを歩かせておるやろ? それで、ドでかい海外組織じゃないかという話や」


 シングは、その疑いの根源になった人物を香川に尋ねる。


「で? 誰が、その疑いを出したの?」

「本部長の長谷川や。あいつ、なんやら調べて、その疑いが出て緊急幹部会を開いたんや」

「長谷川という人は、頭の良いの?」

「頭良いというよりの持ち主や。龍神会の障害になる奴は、たとえカタギの企業だろうが、害が無いと確認するまで調べるんや。それは、守るためなら良いことだけど、よそ者は帰れの思考が無ければ、文句無いけどな」

「で? なんで、敵である俺たちに情報を流すんだ?」


 ミクリオのセレス達に情報を流す理由を香川に尋ねる。


「千楽町の支配を揺るがす為とある人物への復讐の為や」

「支配の揺るぎとある人物への復讐?」

「今、この千楽町を支配してるのは、龍神会会長の瀬山正雄。この町は、この町にしか生きられない人々が仰山おる。でも、こうして生きられるのは、その会長の手腕のおかげ。だがな、今の時代は、分かるやろ?」

「えぇ」

「今の時代、根性や気合で生きられる社会ではない。何かのスキルが無ければ、社会で生きていけない。テクノロジー、価値観が進歩している時代で、それを受け入れる考えでは無ければ、今の社会では生きていけへん。なのに、会長は、それを分かっておらへん。その為には、あんたらという脅威をさらす必要があるんや」

「つまり、退か?」

「そうや。そして、この町の支配にするふさわしい支配者は、あんたらということや」

「理由は、分かりましたわ。で、ある人物の復讐と言ってましたが、誰です?」


 すると、香川は、スマホを取り出し、何か写真の中から、その人物の写真を探し出す。その写真を見つけると、セレス達に見せた。そこには、紺色のスーツを着た男性と顔は見えないが、青を基調とした青年の姿が映っていた。


「このスーツの男ですか?」

「そうや、ルカはん。名前は、赤坂哲司。現東京都都知事や」


 イクスは、その名前を聞いて思い出す。


「赤坂!」

「イクス、あんた知ってるの?」

「はい、レベッカ様。東京銀行の頭取、日本銀行の総裁の経歴を持ち、今では支持率90越えの今や飛ぶ鳥を落とす勢いを持つ実力者ですよ。でも、なんで彼を復讐するのですか?」

「俺が、偽札の調査しているうちに冤罪を着せられたんや」

「冤罪?」


 香川は、その理由を説明した。


「今から、20年前にさかのぼる。俺は、元々は、東京銀行のとある支店の銀行マンや。汗水垂らして働いている普通の銀行員だった。あれを見るまではな」

「あれを見るまで?」

「せや。赤坂は、その当時は支店長だった。ある日、残業しとった俺は、偶然目を向けると支店長の机の引き出しに少し開いていた。俺は、何を思ったんか分からんけど、開いてみたら龍神会との裏金帳簿があったんや」

「裏金帳簿」

「そや。俺は独自に金の流れや出どころを調べた。しかし、その2年後にその総裁に呼ばれて裏金など受け取った罪で解雇されてしもった。それから、弁護士をつけて裁判で無実を訴えた。せやけど、判決は、懲役10年。それから出所したあとホームレス生活。東京各地を放浪しながら生活しよった。各地放浪しているうちに、この町にたどり着いた」

「それで、龍神会に入り、幹部に上がって赤坂に接触出来ると考えたのね」

「そうや。直系に上がっても、チャンスが回らんかった。せやけど、あんたらがこの町に来てくれたことによって手を組めば、赤坂に復讐出来ると考えたんや」


 しかし、セレスは香川に冷たいことを言った。


「しかし、我々には関係ありません。そんな事を言っても、貴方らでやりなさい」

「セレス様」

「イクス、何が文句があるのですか?」

「文句じゃなくて、手を組んだほうが良いです。それに、彼の若頭は、凄腕のハッカーですよ? 我々の情報も手に入る可能性が」

「……」

「そうやで? セレスはん。ここは、手を組みましょう。断ってもええやんで? もし、拒否したらあんたらの情報をばらす。これは、脅しやない。殺してもばらすからな。まぁ、分かりやすく言うなら、何しても無駄や。その代わり、この千楽町をあんたらに渡す。どうや」

「姉さん」

「……分かりました。手を組みましょう。その代わり、もしでばらしたら、貴方らを。いいですね?」

「もちろんや。あんたらの姿を見たいけど、まぁええわ。その条件、飲みましょう」


 双方の条件を飲み、セレスと香川が握手し、セレスは警戒の表情。香川は、満面の笑みをしていると…


「親父」

「なんや?」

「シェリーさんのシノギにであるスター通りにあるキャバクラで、3次団体の連中が、暴れておるらしいです」

「え? さっそく、喧嘩売りに来たの? そいつら?」

「シングはん、そのキラキラした表情しないでください。寒気がします」

「香川君。手伝ってくれる?」

「それは、出来ひん。行けば、繋がりを持っていることがバレる」

「えぇー!? 残念。で? 君? どこの3次団体?」

「若頭である松岡組系の組織、今村一家です」

「今村一家?」

「和食飲食店をシノギにしている組織です。どうします?」

「もちろんだよ。ちょうど、体を動かしたいなと思ったんだ。ねぇ? シング君」

「はぁい! もちろんでぇす!」


 シングは、狂気に満ちた笑顔で喜んで受け入れたが、香川組組員達は、恐怖でひきつっていた。


「ねぇ、香川君? 最悪、始末していい?」

「もちろんや! あんたの部下達と存分に暴れてこいや!」

「アハハ! では、行くよ!」


 シェリーは、シング達を連れて、そのキャバクラに向かう為、部屋を出た。


「行きましたわ」

「で? この子供たちは、何?」

「俺が、経営している英才スクールの子ども達や。今回は、社会勉強で、部下達が引率して、社会勉強として、最先端のあんたらの会社を学ばせるんや」

「その、社会勉強が部屋を荒らすことか?」

「そうや、ミクリオ。お前らがどんな顔をするか? という勉強や」


 ミクリオは、剣を抜こうとするが、イクスとルカに止められる。香川は、大爆笑した。


 それから、数分後。シェリー達が、そのキャバクラに到着。シェリーとシングの口から僅かに涎が垂れていた。








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