第2話クレア男爵令嬢視点

 婚約破棄後の学園生活は、苦痛しかありませんでした。

 ルッケーゼ王国は、貴族士族を鍛えるために、王立の学校を創設しています。

 長く激しい悲惨な三百年戦争の経験を生かし、子供の頃から全貴族士族が共に学び、互いの事を知る事で、争いごとを防ごうと言う理念のもとに創設されているのです。


 だから建前的には、学園内に身分差を持ち込んではいけないことになっていますが、そんな理想通りではありません。

 厳然たるスクールカーストが存在します。

 今まではポールと婚約していたので、将来の子爵夫人として、貴族として遇されていました。


 ですがこれからは、男爵令嬢として士族として扱われることになります。

 元々父が嫌われているので、恩を売った貴族家以外からは敵視されていました。

 だから人目のないところに行ったりはしません。

 校舎裏やトイレへに呼びだされても、決して応じたりしません。

 リンチされると分かっていて呼び出しに応じるなど、馬鹿のする事です。


「クレア、化粧直しは大丈夫?」


 従姉のレイラが誘いに来てくれました。

 私がトイレで暴行されないように、護ってくれるのです。

 レイラはヴィト伯父の長女で、双短剣術と武闘術の名手です。

 本家の私を護るために、幼い頃から厳しく鍛えられています。

 学園内で私を護るために、士族令嬢を支配下に置くべく一年先に入学して、厳しい学園競争を勝ち抜いてくれた人です。


「クレア、飯に行こうや」


 従兄のカルロが、一緒に食事をしようと誘いに来てくれました。

 私が安心安全に食事ができるように、毎日誘いに来てくれます。

 カルロはジョゼフ伯父の長男で、槍術と武闘術の名手です、

 カルロも本家の私を護るために、幼い頃から厳しく鍛えられています。

 

 カルロは、私はもちろんレイラも学園内で護るために、士族を支配下に置くべく二年先に入学して、厳しい学園競争を勝ち抜いてくれた人です。

 この二人がいてくれるので、私は安心して学園生活が送れるのです。

 天から授かった才能を隠して暮らす事ができるのです。


 いえ、私だけではありません。

 多くの士族が、貴族の暴力から助けられています。

 カルロが入学するまでは、多くの士族子弟にとって、人格形成前の貴族子弟が支配する学園は、生き地獄だったそうです。


 現に天才的な平民子弟が、成績優秀故に特例で入学していたそうですが、その全員が事故死しているのです。

 士族子弟でさえ、少なくない人数が事故死していました。

 とても哀しく恐ろしい事です。

 それが、カルロが入学して以来、一人の事故死も起きていません。


「クレアという子はいる?

 エミリー王女殿下がお呼びだ。

 着いてきな!」

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