第16話 13日目続き

 たぶんはじめてのまっとうな夜。

 火をまともに起こすこともできず、頑丈そうな大木に登り、しっかりとした枝の上に寄りかかる。もちろんメルスがだ。

 なかなかワイルドな登りっぷりでした。

 獣…ネコの血が騒いだのだろう。

 あるいはなかなか活動的なお子様だったのか。

 持たれると疲れていたのだろう、メルスはすやすやと寝息をたて始める。

 ソムはそれを確認すると、ホッとし、それから。

 感覚野を広げる。

 これくらいはお手の物だ。

 諸感覚から統合された視覚イメージが意識に上ってくる。

 ひとつ試したいことがあったのだ。

 空を見やる。

 豪勢に散りばめられた輝きが唯一無二に誇っていた。

 うん、美しい。

 それだけではない。

 ソムはそこにパターンを見出していた。

 じっと意識を集中して。

 太古の人を石にする邪眼の魔物のように。

 凝視を続ける。

 月があった。

 龍虎座があった。

 聖クリアの御使座を発見した。

 間違いない。

 ここは…

 見知った世界。

 自分の世界の、どこかにいる。

 光を、得た。

 希望の光だ。

 それとともに、安堵感と、懐かしさを感じていた。

 どこかに、俺の残した痕跡がある。

 探してみようとまでは思わなかったが、それでも。

 俺は、ここにいる。

 メルスには悪い気もした。

 彼女はもう持てない感情だから。

 言ってはいけない秘密になってしまった。

 その違いに、どの時点かで気づくかもしれない。

 薄々すくい取っているのかもしれない。

 それでもいい。

 俺とメルスは、非るのは同じなのだから。

 しばらくそのままとりとめもない、どうでもいい思索に耽った。


 13日目終わり。

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