第58話 引退傘クラブ
捨ててほしいと思ったから私、扉が開いた瞬間、外に飛び出したの。扉にひっかかったフリで、思い切り飛んだ。
そうしたら、ママは、
「ああびっくりした」と言って、私をまた、何年来の棚にひっかけた。
私は絶望的な気分だった。せっかく、外に出られたと思ったのに。どうして私をまた、閉じ込めようとするの、ママ。
私、ミータンと出かけられなくなってから、どれほどのさみしさを味わっているか、わかる。ミータンと、初めて会ったときからのことなんか、行った場所のことなんか、いろいろ考えていたわ。
ミータンは、あんな変な柄の傘を持つようになってしまった。
ミータンは、中学一年生になって、ママよりも大きくなってしまったんだものね。仕方がないってあきらめるほかないと思う。
だけど、この引退傘クラブは、本当につらいわよ。ママできたら私を殺してくれない?頼むから。私はママが物置を開けるたびに、飛び出すことにしたの。
そうしたら、ママったら、私たちを紐で縛って棚にくくりつけたのよ。
「思い出」とかいって。
「捨てられないわ。これは、私の棺桶に入れてほしい」
冗談じゃないわよ。
ママと棺桶に入って、燃やされるくらいなら、今すぐに自由にしてちょうだい。
ここは引退傘クラブ。
おばあさんばっかり。
誰か私を殺して。
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