ふつおたコーナー・9

 美樹ミキさん、森の熊さん、素敵な怪談を聴かせてくれてありがとう。

 夕霞セッカさんとココンさんのお便りとはまた違って、二人とも怪奇現象を体験して、そのまま向こう側の住人になっちゃった感じだね。

 二人を引きずり込んだ樹は妖怪なのか悪魔なのか、気になるなぁ。後者なら、樹の扉を叩く、返事をすることが悪魔との契約条件になってたのかもしれないし。

 オカルトっていうのは、何も幽霊に限ったことじゃないからね。リスナーさんたちの身近にあるものにも、怪異は潜んでるものさ。

『器物百年経れば魂宿る』って言葉もあるし、付喪神ツクモガミにまつわる怪談も大歓迎だよ。


 さて、ふつおたを読もうか。

 ラヂヲネーム『マガリ』さんからのお便り。


小布施オブセさん、お疲れっす。

 俺は来年大学生になるんですけど、一人暮らししようと思って、受験勉強の合間にネットでアパートの物件をエゴサしてます。

 アパートっつっても、家賃とか間取りとか色々あるんだなーって、見るうちにだんだん面白くなってきたんですけどね。

 この前、たまたま見つけちまったんですよ。

 部屋のサンプル写真の一枚、押し入れの中に、どう見ても小さい女の子が写ってるのを。

 空き部屋なら、人が写り込んでる写真をわざわざ選んで載せるのはおかしいし、そこはSNSでもちょっと騒がれてました。

 やっぱ、こういうなとこに住むのは、やめたほうがいいんですかね……?】


 ――っていう相談なんだけど。ごめん、序盤で吹き出しちゃって。

 まず、突っ込んでいいかな? エゴサの使い方が間違ってる。この場合は、エゴサーチじゃなくてただのサーチだよ。エゴサーチっていうのは、たとえばマガリさんが自分の本名を入力して検索することだからね。

 エゴサーチ以外の検索は、最近は『パブリックサーチ』、略してパブサって呼び方もされるみたいだ。

 リスナーさんたちは、正しく使えてるかな?

 で、本題の賃貸物件写真に女の子が写り込んでるって話だけど。確かに興味深いね。

 考えられる可能性も、いくつかある。

 その一。写真には元々人物は写ってなかったけど、大家さんが物件紹介サイトに提出して掲載された途端になぜか出てきた。

 その二。写真には元々人物が写ってて、大家さんが気味悪く感じながらも物件紹介サイトに提出して、サイト担当者が面白がってそのまま載せた。

 その三。物件紹介サイトの担当者が、茶目っ気を出して写真を合成加工して『いわくつき』風演出をした。

 どれだろうね。心霊スポット探検みたいに、興味本位で下見に行く人も出てきそうだけど。

 ぼく個人の意見としては、マガリさんもわざわざこういう物件を選ぶ必要はないと思うよ。さっき読んだお便りのサボリンみたいに、住んでからポルターガイストに悩まされちゃったりするかもしれないし。

 まあ、最近のスマートフォンやデジカメは高性能だから、例の写真がコラージュ画像ならそれはそれでいいんだけどね。

 マガリさんの大学受験や物件探しがうまくいくように祈ってるよ。今夜も早めに寝てね。


 さて、十二通目からは、また単発の怪談を読んでいくね。

 ラヂヲネーム『イヴ』さんからのお便り。

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