キャラクターメイキング ――クラス
アバターには不満足ではあるが納得することにして、キャラクターメイキングを続ける。
珍しいことに『できるVRMMO』はクラス制システムをベースに、少しスキル選択を追加したものだった。
最近ではスキル制システムが主流だから、やや古臭いとも言える。
クラスと言うのは言わば職業とでも言うべきもので、戦士だとか魔法使い、僧侶などの用意されたものを選ぶ方法だ。選ぶだけでそのクラスに最低限必要なことは、全部できるようになる。
スキルと言うのはプレイヤーが行動可能な技術とでも言うべきもので、剣術や魔法、体術などと個別に分かれている。
スキル制システムではプレイヤーの任意にスキルを選択、獲得するのが普通だ。制限の許す範囲でプレイヤーは自由に、自分が思うままにキャラクターを作れるので人気がある。自由度が高い分、ゲームについての全般的な知識が必要なのがネックとなるが。
クラス制システムは自由度が低めになるが……プレイヤーは最初にクラスを選択して、ボーナスポイントを能力値に割り振ればキャラメイクが終了なので簡単だ。
この運営は解かってる。参加するプレイヤーは誰一人として真剣なゲーム攻略を考えてなど
用意されていたクラスは『戦士』『魔法使い』『僧侶』『盗賊』の全部で四種類だった。
『戦士』は武器を使った接近戦が得意なクラスだろう。
『魔法使い』は魔法を使えるはずだ。反面、接近戦などは苦手なことが多い。ただ、VRMMOでの魔法はリアルで派手なものになる。現実では絶対に使えないこともあり、人気が高くなりそうなクラスだ。
『僧侶』も魔法を使えるが、主に回復魔法なことが多い。接近戦も得意ではないだろうが、『魔法使い』ほど苦手ではないだろう。
『盗賊』は接近戦は苦手ではない程度か、『戦士』より軽い武器や技に頼るスタイルであることが多い。魔法は使えないパターンの方が多く見受けられる。『戦士』より不利な分、戦闘能力に直結しない特技か何かがあるはずだ。
事前情報が無いのでイメージや一般的なパターンによる想像になるが、これで判断するしかない。
先ほどの説明の時に出てきたが、能力値というのはキャラクターの特徴とか個性とでも言うべきものだ。
『できるVRMMO』で用意されている能力値は『腕力』『器用度』『体力』『知力』『魔力』『魅力』の六つ。
この六種類の能力値は非常に一般的と言える。そして、一般的な種類に絞ったのは評価したいところだ。オリジナリティのある能力値を導入して、ゲーム性や世界観を高めることなど誰も
各能力値は数値化して表現されるのが一般的だ。
『腕力』を例にとれば、数値が高ければ重たい物でも軽々と持ち運べ、低ければちょっとした軽い物を持ち上げることすら出来ないなどとなる。
注意しておきたいのが擬似能力値についてだ。
『腕力』などはゲーム内で実際に動作をするときに反映されるので、擬似的ではない。
しかし、『知力』などは擬似能力値に分類される。
仮に『知力』を限界ぎりぎりまで低くしても、プレイヤーは馬鹿になるわけではない。脳に馬鹿になる刺激を与えることは不可能ではないだろうが、危険すぎる。
逆に最高値にしたとしても、プレイヤーは賢くなれない。人を賢くする刺激なんて、発見されたらノーベル賞ものだ。
つまり『知力』が高くても、ゲーム内で『知力』が関係すると設定されている動作の結果が、変化するだけでしかない。
『知力』が高いキャラクターがゲーム内で調べる動作をしたから、結果として情報を得られるなどと処理される。
ようするに権利とでも言うべきもので、能力と言っても擬似的だ。
さらに『魔力』や『魅力』なども擬似能力値で、精神系能力値・スキルとも分類される。
精神系スキルだと『威圧』などが定番だ。これは文字通り相手を威圧するスキルだが、実際に相手を威圧するわけではない。
プレイヤーは『威圧』スキルの使用を宣言するだけだし、相手も威圧されたかどうかをゲーム的に判定されるだけ。実際に威圧的な態度や行動をとる必要は無いし、相手が実際に怯えるかどうかも関係ない。
VRマシーンといえども知能や精神の動きまでは弄くれない以上、結果の変化で再現するしかないからだ。
ここまで説明すればピンとくる方も居るだろうが、『魅力』を高く設定してもイケメ
一見、『できるVRMMO』において最も重要な能力値に思えるが、実際は無益な能力になるだろう。
キャラクターが魅力的だから発生する結果はプレイヤー相手では再現しづらいし、NPC相手に有利になってもなんの意味もない。
クラス選択は『戦士』と『魔法使い』で悩んだが、『戦士』にすることにした。
MMOで遊んだこと無い人には解からないだろうが、戦闘能力の高さは他のプレイヤーとの交渉に大きく影響する。
なぜなら、ほとんどのMMOでプレイヤーに対する戦闘行為が認められているからだ。
そして、単純な戦闘能力で言えば、『戦士』か『魔法使い』が強いのが一般的である。
相手との交渉で有利に立ちやすく、最後の手段として無理や
『魔法使い』はかなり魅力的ではあった。
攻撃魔法という武力もさることながら、搦め手の魔法も存在するはずだ。特に定番の魔法である『魅了』『催眠』『麻痺』などは絶対にあるだろう!
この魔法があれば煩わしい交渉を吹っ飛ばしてセクロ
しかし、これらは精神系スキル(魔法)であるから、字面ほどの結果にはならない予想ができるし……俺の目的に合うものが無かったり、習得が難しい可能性もある。
さらに『知力』に『魔力』という擬似能力値を高くしなければならないのもネックだ。
仮想空間でも疲れを再現することは可能だ。
聞いた話なのだが、一戦々々でかなり体力を使うらしい。連戦ともなれば高い体力が無ければ挑むことすら適わないそうだ。どれくらい『体力』を高くすれば良いのか解からないが、可能な限り高くしておきたい。
……もちろん、戦闘行為の話だ。
そして『器用度』も高くしておきたい。
この能力値は文字通り器用さを表すものだが、身体を動かす動作全般にかかわることが多い。解かり易い言葉で言い換えると、運動神経が一番しっくり来ると思う。
そして、高い場合にはシステムアシストがつく。
システムアシストと言うのは、運動音痴な奴でも華麗な動きを可能にしてくれるものだ。しかし、プレイヤー自身に明確なイメージがないと上手く機能しないことがある。
それでもゲーム内で反復練習すればいつかはイメージできるから問題は少ないし、俺はイメージトレーニングは毎日練習しているから自信がある。
……もちろん、戦闘のイメージトレーニングのことだ。
『器用度』『体力』『知力』『魔力』の四つ全てを高くすることはできなかった。
しかし、戦士であれば高いことが望ましい能力は『腕力』『器用度』『体力』の三つだろう。
三つ全てを高くすることはできないが……『知力』『魔力』『魅力』を最低値にすれば、『腕力』『器用度』『体力』から二つを初期最高値にして残り一つを及第点とできる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます