第27話 魔法は魔力が必要なんです

たなびく旗元を見上げて、ディーツはあんぐりと口を開けた。

街に入ってすぐに、大きな赤色の門を構えた建物にぶつかったのだ。


「ハンターギルドだ。でかいだろ」


虎の獣人がにやりと歯をむき出して笑う。人相は悪いが、自慢しているようだ。


「ハンターの上位は、この大陸じゃあ儲かるからな。必然的にギルドもでかくなるんだ」

「へー」

「受付はあっちの建物だな、ついてこい」


しっぽを振りながら、虎が進む後ろをついていくと重厚な扉に出会う。そのまま、中に入ると受付らしきカウンターの奥にいた女がにこりと微笑んだ。


「あら、ハイマン。作戦は終わったの?」

「ああ、無事にな。後ろのやつらが片してくれたから、楽勝だったぜ」

「確かに、凄い格好ね。それで、何の用かしら?」

「コイツら田舎から出てきて身分証を無くしちまったらしいんだ。うちの隊長が身元引き受け人になるから、ギルドで発行してくれねぇか?」

「隊長さんが身元を保証してくれるのなら大丈夫よ。3番にどうぞ」

「サンキュウ、おいお前らついてこい」


女に示された3の文字が書かれたカウンターにいけば、今度は穏やかなそうな男が座っていた。


「話は聞こえていたよ、ここは書類の再発行のための受付カウンターだ。こちらの書類に必要事項を書いてくれ」


差し出された二枚の書類を眺めて、ディーツは虎を振り返った。


「読めねぇんだけど」

「はあ? あんたらこの大陸から来たんじゃないのか。さすがに読めねぇとはな、ほんとどんな田舎から来たんだ…」

「代わりに書いてくれよ」

「わかったよ。じゃあ、名前と年齢と性別は―――」

「女じゃねぇからな、先に念をおしておくけど」

「えええっ、違うんですか?!」


カウンターにいた男が叫んだ。虎は面白そうにクックッと喉の奥で笑っている。


「登録情報はできるだけ正確に書け。偽りがばれるとペナルティがある」

「名前はフルネームじゃなくていいのか?」

「それくらいなら大丈夫だ。あとは出身地とか得意なことだな」


虎に聞かれたことを答えていると書類を眺めながら男がしみじみと呟く。


「本当に男か…何てもったいない」

「早くその身分証とやらをくれないか?」

「はいはい、じゃあ右手をここにおいてくれ」


ディーツが睨めば、カウンターに白い丸が描かれた場所に手をつくように促される。


「ええと、身元保証人はアラウンディ隊長さんか…じゃあいくよ」


男が小声で何かを唱えるとヴィヴィルマの手のこうが淡く光った。


「これが身分証だよ、アルマと唱えれば取り出せるようになるから」

「俺の手は変わらないんだが…」

「え、何で?!」

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子育て勇者の出稼ぎ奮闘記 マルコフ。 @markoh

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