匯畏憚-かいいたん- 実話録

45 愛してる

匿名で友人を作れるというSNSのアプリで

Yさんという男性と知り合いました。

プロフィールに

『ホラーやオカルトが好き』と

書いたのを読んでくださったようで、

会話の内容は最近見た怖い動画などに。

その話の流れで、

何か体験したことありますかと

お伺いしました。

すると、Yさんから

『ひとつあるんです。

　どんな意味があったか

　教えてもらいたくて…。』

と、教えていただけたのが、今回のお話です。

Yさんは子供時代に、B県に住んでいました。

隣の家に住んでいたのは、

未婚の女性、Aさん。

彼女はとても優しい方で

Yさんがまだ幼い頃から

とても親切に接してくれたのだとか。

Yさんは元々持病の喘息があり、

その治療のために母親の実家がある

C県に帰ることになったのですが、

Aさんとの交流は途切れませんでした。

Aさんは、Yさんが誕生日の日に

プレゼントをくれたり、

C県への旅行ついでに会いに来てくれたりと

相変わらず楽しい付き合いが続いていました。

そんな日々が続いていたある日。

Yさんが小学校４年生に上がった年の秋頃

不思議な夢を見るようになりました。

夢の中、Yさんは赤ちゃんになっていて

誰かの腕の中であやされていました。

いつも見る夢とは違う、

妙にリアリティのあるもので、

子供ながら違和感を覚えたそうです。

また、別の日に見た夢には

Aさんが出てきました。

夢の中で、YさんがAさんに会った…

というわけではありません。

YさんがAさんになっていて、

彼女の人生を追体験しているような

そんな内容でした。

あまり内容は覚えていないとの

ことでしたが、

交際している男性がいたけれど

結局結婚できなかった、

という部分だけは印象的で記憶に残っており、

この夢を見たときは、

とても悲しい気持ちになったそうです。

なんでこんな夢を見るのだろう、

答えが分からないまま、

この不思議な体験が数日間続くことになります。

そして、夢を越える体験に、Yさんは遭遇するのでした。

Yさんが友達と下校していた時のことです。

ふと、何気なく見上げた空。

そこに、見慣れぬものが浮遊しています。

よく見ればそれは、

緑色の人魂でありました。

Yさんだけでなく友人の目にも見えたほど

はっきりとした姿だったといいます。

当時怖がりだったYさん。

しかし、異形である人魂を見た時、

不思議と怖いとは感じなかったそうです。

帰宅後、Yさんはお母さんから

悲しい報せを聞きました。

それは、あんなにも優しくしてくれた

Aさんの訃報。

まだ４０代半ばという、若すぎる死でした。

『僕が人魂を見た時間がちょうど、

　Aさんが亡くなった時間に一致するんです。

　朋さん、これってどんな意味が

　あったと思いますか？』

生憎、私には霊感がなく、

それらにどんな意味があったのか

知り得ることはできません。

ただ、この話を妹にした時、

妹が人魂について調べてくれました。

見つかったサイトはオーブ(※1)に関するもので

人魂についてのものではないのですが、

そのサイトにはこうありました。

“緑色の場合、

　愛のエネルギーをまとっている”

重ねて書きますが、

私には霊感がなく、夢や人魂に

どんな意味があったか、

どんな思いがあったかは分かりません。

ただ、Yさんが他県に移り住んでもなお、

一年ごとの成長を祝ってくれたAさんが

Yさんに抱いていた思いは

たった一つ、そして深いものだったのでは

ないのでしょうか。

優しいAさんが、

空の上で穏やかな日々を過ごしていることを

心からお祈り申し上げます。

※１オーブ

心霊写真などにみられる丸い球体のこと。

霊魂が写りこんだものではないかと言われている。

埃や雪に光が反射したものではないかという説もある。