第17話 挑発
「
腕組みをしながら
「ああ・・・・
父から初めて聞かされた
今まで相手にして来た
「人間以外の何にでも化けるのか・・・・」
「人の体内に巣喰い意識を操るタイプとは根本的に違うわけだな」
「う~ん・・・・ん?」
「どうした? 可留、何か感じるのか?」
「いや・・・・ちょっと待って」
ふいに辺りを見回し始めた可留が真了を制した。
「あ」
「え?」
「あそこ、あのお婆さん!」
「お婆・・・・あっ、何だ?!」
二車線道路の向こう側、可留が指差す方に目を向けた真了が思わず声を上げた。
歩道に小さな老婆が立っている。
かなりの高齢だ。
その老婆が肩の辺りに上げた右手で手招きをしている。
しかも不自然なまでに口を大きく開け、無言の動きで何かを言っている。
明らかに2人に向けて──
「まさか、あれ・・・・」
「ああ」
2人同時に身構える。
「あれは人間じゃない」
「奴、か」
「たぶん・・・・可留、思念を読めるか?」
「・・・・・・・・・・・・駄目だ、妙なシールドがかかってる。くそっ」
「落ち着け・・・・『来いよ』って言ってるな」
「え?」
「口の動きだよ。挑発してやがる」
「真了、行くぞ!」
「よしっ!」
1台の車が通り過ぎるのを待ち、2人はダッシュで道路を渡ろうとした。
すると老婆は高齢とは思えない早さで駆け出すと素早く路地へと姿を消した。
後を追う2人。
駆け込んだ路地の両側には住宅が数軒並び、真っ直ぐ伸びる道の先にはまばらな木々の雑木林のような風景が見えている。
そして老婆はその中へと駆け
「どこだっ」
「出てこいよ!」
追って林に踏み込んだ2人。
しかし老婆の姿が見当たらない。
ほんの10数メートル四方程度のスカスカな雑木林にも関わらずどこに消えたのか。
その時──
「うわっ」
「ちょっ」
一陣の突風が2人を襲った。
そしてその風は2人をまとめて包み縛るような小さな竜巻と化し、ギリギリと身体の動きを封じにかかってきた。
「ま、真了っ」
「くっ・・・・よしっ」
締め付けられながら可留が何とか向けた左の手のひらに同じく渾身の力で真了が右の手のひらを合わせる。
「行くぞ」
「おうっ」
『浄・滅・業・絶・臨・破──吽っ!!』
2人の声が合わさった瞬間、重ねた手の中から白光がほとばしり出た。
「断てっ!」
真了が腹の底からの声を発すると光は鋭利な
グエッ
一瞬、潰れた声のような呻きが上がる。
そして次の瞬間、風は消え、何事もなかったかのような静寂が林に戻った。
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ。真了は?」
「ああ、何ともない」
「やっぱり今のは──」
「奴だな・・・・間違いない」
「
2人は目を見合せ深く頷いた。
可留が言う。
「俺たちを殺るつもりだな」
真了が言う。
「はっ、そうはさせるかよ」
『覚悟して臨め!』
気合いを入れる2人の脳裏に、力強く重厚な父の言葉がよみがえった。
【ツインズハンター/真了と可留】~殺業鬼討伐伝~ 真観谷百乱 @mamiyan
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