第16話 伝承
『大変な騒ぎになっているな』
電話の向こうの父、慈一郎の声がいつにも増して重々しい。
同日の内に同市内で立て続いた凶悪かつ異様な事件にマスコミは浮き足立ち、それぞれの現場を中継で繋いでの報道合戦が繰り広げられている。
『本格的に
スマホのスピーカーから流れる父の言葉を真了も可留も厳しい表情で聞き入っている。
「奴の姿がどうしても見えない。乱心する者の中に居ると掴めても姿が・・・・こんなことは今までなかったのですが」
『さもありなん』
「え?」
本音を漏らした可留に父は、当然そうだろうという含みの言葉を返した。
『
「幻影変化術?」
初めて聞く術の名に真了と可留は瞬時、目を見合わせた。
『伝承によれば、殺業鬼の中でも黒惨鬼だけが駆使すると伝えられている術だ。むろん私も先代も未だ遭遇したことはないが先々代の残した
先々代、
行木家代々の歴史の中でも屈指とされる強靭強力な
父、慈一郎にとって祖父にあたるその人物が遺した、自らの殺業鬼討伐の数々の顛末を記したその文書は一族内では【
『文書によれば、黒惨鬼は自らの真の姿を決して
「・・・・はい」
慰めともとれる父の言葉に、可留はいくぶん力ない返事をした。
『ともかく、我らの住むこの地より始まった暴挙混乱が全国へと広がりを見せる前に何としても黒惨鬼を仕留めなければならない。真了、可留、ともに覚悟を決めて臨め!』
「はい」
「はい」
厳格な父の、魂の奥にまで
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