第7話 現場の気配

 規制線に張られた黄色いバリケードテープで囲まれた田所ハイツの周囲は近隣からの野次馬でざわついている。

 何台もの警察車両に加え、早々に駆けつけたとおぼしきマスコミも放送準備に追われている。


「大家さんが殺されたんだって」

「あのお婆さん?!」

「あの年で元気に働いてたのに」

「何でまたそんなことに」

「犯人は? 捕まってないの?」

「逃げてるみたいだよ」

「怖い」


 静かな住宅街で起きた殺人事件──


 人々は口々に驚きや不安を語り合っている。

 その集団の後方、少し離れた場所から真了と可留は現場の様子を見ていた。


「どう感じる?」

「匂う・・・・かなり」

「やっぱり、か」

「うん・・・・」

 

 真了の能力と可留の能力。

 生来備わっている超常的なその能力には二卵性ゆえの外見の相違と同じく明らかな違いがある。

 それはまさに陰と陽。


 可留は、透視、波動感知、残留思念リーディングなどの世間的にはいわゆる超能力もしくは霊能力と呼ばれるくくりの力を有している。

 それに対し真了は、敵──殺業鬼──を消滅させる技とエネルギーを有し、人の目には見えざるそれら異形の輩への攻撃かつ破壊的能力を備えている。


「被害者の思念、読めるか?」

 真了が言う。

「やってみる。殺されたばかりだからまだそこにいるはず」

 うなずきながらそう言うと、可留は軽く目を閉じ、前方の田所ハイツへと意識を集中させた。



  




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