第11話 魔物にやられると教会で全裸復活する世界らしい

 サンテ達一行が、カナイ町よりも大きな町を目指して旅を続けていると。

 人の悲鳴と、旅を始めてから聞き慣れたゴブリンの鳴き声が、ほぼ重なって聞こえてきた。


「大変、誰かがゴブリンに襲われてる、助けなくっちゃ! ガイさん、ラムちゃん、コスモスちゃん、急いで行こう!」


 ラムはガイの胴体内部に侵入し、サンテはガイに小脇に抱えられる。

 林に沿って外の道を曲がると、そこにはゴブリンの集団に襲われている馬車があった。


 ラムとコスモスはガイの外へ出ると、ガイからサンテを預かった。

 サンテ達を残し、ガイは戦闘している場所へと突入する。

 ゴブリンは弱い魔物だが、いかんせん今回は数が多すぎた。


 馬車の護衛は既に何人か消えていて、今頃は裸になって近くの教会で復活しているだろう。

 人々はそれが嫌で恥ずかしくて、死なないけど別の意味で死ぬと言って魔物から身を守る。

 それに復活するのは体だけで、服や道具や所持金等はその場に残されるので、資産的にも大打撃だ。




 ガイは走りながら大振りで、背中の盾をゴブリンの集団目掛けて投げつける。

 右手に持った剣は柄を中心に双頭剣になり、放たれたロケットパンチの攻撃範囲を広げている。


「護衛の皆さん、鎧の騎士が援護に駆けつけてくださいました。もう一踏ん張りお願いします!!」

『おおっ!!』


 馬車の屋根に乗るふくよかな男性の声に、残っている護衛の戦士達が士気を取り戻す。

 その間にもガイは最前線で、ゴブリンのHPバーをなくし続けている。


 晴天なのにガイに雷が降り注ぎ、一度鎧にチャージしてから前方へと広範囲に放ったり。

 戻ってきた盾とロケットパンチから外した剣を組み合わせ、背中にドッキングすると。双頭剣が左右に伸びた状態で、ゴブリンの集団の中心目掛けて飛翔した。


 ゴブリンを混乱させると再び最前線に舞い戻り、兜の目の部分から光線を出して右から左へと蹂躙。

 最後出てきた大型のゴブリンには、両の掌から熱線として放出して倒した。


 ガイのあまりの破天荒な戦い方と強さに、唖然とする護衛と馬車の上のふくよかな男性だったが。

 ガイの参戦以降の完全勝利に雄叫びを上げた。


『うぉぉぉーーー!!』

「う、うおー!」


 サンテも釣られて可愛く声を上げた。




「いやー、助かりました。ありがとうございます。わたくし商人のクヨフと申します」


 そのままでは危ないので剣を初期状態に戻したガイに、馬車から降りたふくよかな男性が声をかける。

 クヨフの言葉にガイは返事が出来ないので頷き、手招きでサンテ達を呼び寄せる。


「ガイさん、すっごーい! とっても強いんだね!!」


 サンテに褒められて腕を組んでドヤって返すガイ。

 兜なので顔はなく、雰囲気だけが伝わっている。

 既にコスモスは兜の中に戻り、ラムはドロップアイテムの回収をしている護衛を手伝っている。


「えっと、ガイさんでよろしいのでしょうか? こちらのお嬢さんは一体……?」


「こんにちは、私はサンテです。この三人のお友達で、テイマーをしています!」


「なんとっ! それはそれは。サンテさん、わたくし達を助けていただいて、ありがとうございました」


「??? ……おっちゃん、言葉が難しい。もっと分かりやすく言って」


「おっちゃん達を助けてくれたサンテちゃんは、とっても偉いって事だよ」


「おおーっ! そうよね私はビッグになる女だからね。ムフー!」


 大きな夢と希望に満ちた小さな胸を張り、サンテはやり遂げ自信満々の表情で喜ぶ。



 そんなサンテを遠くの物陰から、一体のゴブリンが見つめていた。

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